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Episode2.人間不信のお嬢様が学校に行く話。
「おはようございます。ご機嫌いかがですか?」
専属メイドがベッドのカーテンを開ける。
「おはよう。ええ、大丈夫よ。」
きれいな定型文を返す。彼女はこの屋敷で一番仕事ができる子だ。あれよあれよという間に準備が終わり、車に乗せられた。
「行ってらっしゃいませ。」
「ありがとう。行ってきます。」
学校に着くと、唯一の親友、遥花―宝生 遥花(ほうしょう はるか)が早速話しかけてきた。
「あ、かやちゃん!おはよ〜!!」
「おはよう遥花」
「今日なんか転校生がくるらしいよ〜」
「へぇ」
「あはは、興味なさそう。だからHRは出てねって意味だよぉ」
「ん〜わかった…」
彼女は幼馴染でこんな性格になった理由を知る人なので唯一心をひらいている。しかも、彼女には裏がない。親友に免じてHRは出ることにした。転校生にはまるで興味がない。
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「起立。礼。」
そんな中私はぼんやりと本を読んでいる。前の席の遥花に言われて渋々立つ。
「着席。」
そしてしばらく本を読んでいると転校生たち3人が入ってきた。多くないかと思いながら本を閉じる。
「えーと、影山高校から来ました、大園 彼方です。これからよろしくおねがいします!」
「…京極 伊織だ。」
「同じく影山高校からきましたぁ〜。藤原 文でぇすっ‼」
左からおおぞの かなた、きょうごく いおり、ふじわら あやというらしい。早速私は興味を失い、本を開く。
「んーじゃあ海音寺の隣の3席開いてるからそこ座って。」
思わずはぁ?と言いたくなったが海音寺家の教育でなんとかとどめた。快活そうな彼方が隣に座る。そのとなりが文、更に隣が伊織のようだ。
「えーっと海音寺さんだよね、よろしく。下の名前はなんていうの?」
チャラさで人の心を掌握するタイプだ。苦手な方。
「華夜乃」
「へえ。華夜乃ちゃんって言うんだ。下の名前で呼んでもいい?」
「は?」
睨んでおいた。名前で呼ばれるのは嫌いだ。遥花でも「かやちゃん」と呼ぶ。
「だめだよぅ彼方くん。初めてあった人にいきなり下の名前で読んだら引かれちゃうよ」
「そっかあはは、ごめんね、悪意はないから」
片目をつぶって謝る。ウザい。
「海音寺さん、あたし文っていうんだ。気軽に文って呼んで。よろしくねぇ」
脳内お花畑。気づかずに男に媚びて敵ばっかり作るタイプ。嫌いだ。ほんとに。チャイムが鳴って、私は本を持って教室を出る。こういうときは屋上に行くのがベタだと思うが、うちの学校は屋上が開放されているので昼には人がたくさん来てしまう。非常階段も開放はされているが誰も来ないので好んでいく。実際華夜乃には親衛隊という組織が学園内にあるのでその親衛隊が定めた掟を学園全員に守らせているに過ぎないのだが。掟には非常階段には非常時以外立ち入らないことなどが定められている。なんか先生が校内を案内しろとか行っていた気がする。スマホを出し、遥花に頼む。いや遥花に頼んだわけではない。遥花を通じて遥花の取り巻きに頼んだ。ここで私は午前中は本を読み、お昼ごはんを食べて、午後は寝ている。今日もそんな学校生活を終わらせ、帰って家庭教師達の授業を受け、本を読み、味のしないパスタを食べて、風呂に入って寝た。いつもどおり、過ごしていた。
―ちなみに家庭教師は茶道、剣道、華道、弓道、学習、礼儀作法、ダンス、スケート、バレエ、体操、新体操、水泳、ピアノ、外国語、ヴァイオリン、習字、空手、料理、経営、陸上、球技、アーチェリーなど30人近くいるらしい―