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第一話 絶対なんてないんだ
新シリーズです。
切ない系に挑戦することにしました。
「いつか大人になったら、結婚しようね」
なんて、誓い合った5歳のとき。
ーーーーー小さい頃はよかったよね。
こんなこと、何ともなく言えてさ。
絶対、自分の考えが通って。
絶対、自分と相手は同じ気持ちで。
絶対、ほしいものはほしくて。
絶対、責任なんて考えなくてよくて。
絶妙、大人は守ってくれて。
絶対、約束は守るもので。
絶対、病気は治って。
絶対、大人になれて。
そんなことばっかりで。
ーーー絶対、なんてこの世にはないのにね。
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空は澄んでいて青く、満開目前の桜が舞い降りる春のある日。
俺、いや俺たちは中学の卒業式を迎えた。
俺たち、と言ったのは俺のとなりに一人の女子生徒がいたからだ。
「莉久、やっと卒業式だねっ!!」
そういってはにかんで笑う彼女は佐藤莉奈。
生まれたときからずっと一緒の幼馴染みで、
ーー好きな人。
150cmぐらいの身長で彼女自身は気にしているようだが、小柄で小動物のような可愛さがある。
『いつか大人になったら、結婚しようね。』
幼稚園の頃にそう、約束はしたもののその時はそう言う類いのものは結婚しか知らなくて今も付き合っていない。
彼女も俺を好いていてくれて、俺の気持ちもきっと知ってるんだろうけど、ずっと勇気がでなかった。
だから、中学の卒業式である今日、伝えるって決めてたんだ。
「りーくーはやっ……っ!!」
俺の少し前を歩いていた莉奈のからだが傾く。
俺はとっさに莉奈の腕と腰をつかんだ。
「っ……あっぶなかった……ありがと、莉久!」
姿勢をただしてもう一度歩き出す莉奈。
いつも、おてんばな彼女は時々ああやってつまずきそうになることがある。
「まったく……そろそろ勘弁してくれよ。」
「本当に昔っからあぶなっかしいよなお前……」
半分あきれ気味に言うと頬をふくらませた莉奈。
「もー、いいじゃん莉久が助けてくれるんだからさ!!」
「よくないの。俺頼みはね。」
「もーう、いっつも隣にいるくせにっ!!」
「お前がついてきてんだろ?」
「ついてきてませーん!」
そんなことを笑って話ながら学校に向かった。
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式が終わり、家に帰る途中。
俺はふぅ……と息をつく。
……よし、言うか……
「なあ、莉奈。」
そう声をかけると振り向く莉奈。
「なあに?莉久?」
見慣れたえくぼ。見慣れた笑顔。
俺はずっとこの笑顔をみていたいって思った。
「莉奈。……俺ずっと前から……っ!!!」
その時だった。
俺は目を見開く。
そこには……
目をうつろにして倒れる直前の莉奈がいた。
いろいろ考えぬいた言葉が消えて頭が真っ白になる。
反射的に手を伸ばして、
「……っ!!!莉奈っ……!!」
なんとか、ぎりぎりで受け止める。
彼女の小柄な体を強くゆする。
「莉奈っ……!!莉奈っ……!!」
何度呼んでも返事はない。
ーーーいつもの笑顔は返ってこない。
「莉奈っ……!!莉奈っ……!!」
本当にそれしか口からでてこない。
通りかかった人に気づかれて救急車が到着するまで俺は莉奈の名前を呼び続けた。
生まれて始めて俺の太陽が沈んだ出来事だった。
ここまで呼んでくださり、ありがとうございました。
このシリーズは「切ない恋」をイメージして書くことにしました。
主人公を男の子にしたので書いていて新鮮でたのしかったです。
次回も読んでいただけると嬉しいです!!