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境界のアスターズ―1
基本的に自作ですが文章の手直しにAIを利用しましたことをご承知おきください。
境界のアスターズ―1
誕プレは面倒事
……。
「だる」
ゲーム、下手になった。
手に持ったゲーム機には、「GAME OVER」の赤くて大きな文字が表示されている。また負けた。これで何回目だろう。
「あーもう、飽きた」
私は持っていたSwi〇chをベッドに向かってぽいと投げ出した。
せっかくの13回目の誕生日。部屋にこもってゲームを遊びまくって楽しもうと思ったのに、現実はちっともうまくいかない。
苛立ちのままに私はゲーム機をさっさと片付け、机の上のテレビのリモコンを適当に手に取ってボタンを押す。
……まぁ、この時間帯だし。小さい子向けのアニメか、大人が身内ノリで騒いでいるよくわからないバラエティー番組くらいしかやってないだろうけど。
画面が点くまでのほんの数秒、暗い液晶に自分の冴えない顔が映って苛立ちが増す。
電源が入り、なんとなくいつも見ている2チャンネルを押した。
カーテンを閉め切った暗い部屋に、パッと鮮やかな明るい青色の光が溢れる。
ん?
「おかあさ〇といっしょ」でもやってるのかと思ったら、画面にはただただ青色の背景が広がっているだけだった。
よく見るとそこに、白い細い線で綺麗な図形が描かれ、重なり合っている。三角形、五角形、円。いろいろな大きさの、いろいろな図形が、それぞれ違う向きに向かってくるくると静かに回っていた。
は? 何よこれ? 魔法陣?
2チャンネルでこんな謎の番組、やってないよな?
ありえない。
不気味に思って、咄嗟に4チャンネルに切り替える。
だが、いつもやっている夕方のニュース番組ではなく、今度は違う色の背景に、また別の見たこともない魔法陣が映った画面が表示された。
「はあぁ?」
1チャンネル、5チャンネル、9チャンネル、11チャンネル……。
焦ってボタンをポチポチ押しても、まともな番組は一切流れてこない。1チャンネルから5チャンネルまではそれぞれ色の違う魔法陣が表示されて、それ以外のチャンネルボタンを押したら真っ暗になるだけだった。
1チャンネルは、赤。
2チャンネルは、青。
3チャンネルは、黄。
4チャンネルは、緑。
5チャンネルは、黒。
「は?」
なにこのテレビ? 誕生日に急に故障するとか、ほんとふざけんなよ?
「だる」
リモコンを乱暴に机に放り投げ、床に転がっていた鞄を手に取る。
N〇K、何変な映像流してんだよ。
イライラがピークに達した私は、そのまま自室を飛び出した。
気づかなかったけれど、画面が真っ暗になっただけで、テレビの電源自体は切れていなかった。
♢ ♢ ♢
今日で私は13歳になる。
数日前にお母さんが「誕生日はいい雰囲気のレストランに連れていってあげる」と言ってくれた時は、実は密かにすごく楽しみにしていたのだ。なのに、出かける直前になると途端に気が重くなってくる。
「お母さん、いつ行くの?」
リビングに顔を出すと、お母さんは鏡の前で優雅にアクセサリーを選んでいた。
「もうちょっとかな。支度してなさい」
「……もう支度終わったんだけど」
「色々言わないの。早く行きすぎたらお店の人にも迷惑でしょ」
本当は支度なんて終わっていない。
一人、玄関の大きな鏡の前に立ってみる。
そこに映るのは、可愛いフリルが付いたキュロットスカートに、黒いタイツ。英語のロゴがプリントされたトップス。肩から掛けたチェーンの小さなバッグ。そして——とびきりの仏頂面。
こんなおしゃれな洋服には、本当はこれっぽっちも興味がない。普段はジーパンにTシャツっていうセンスの欠片もない格好ばかりだから、今日はお母さんに「いい加減ちゃんとしなさい」と言われた通りの服を着ただけだ。
高級レストランに行くんだから仕方ないと頭では分かっているけれど、やっぱりしっくりこなくて嫌だった。
周りの子みたいに新品の服で着飾るなんて、正直言って気持ち悪かった。
鏡に映る自分の姿が、何より気持ち悪い。
学校の女子たちが群がって出す『キャハハハ』という下品な笑い声が、頭の中でまた再生される。
「……おしゃれなんて、馬鹿のやることなんだよ」
誰に言うでもなく小さく吐き捨てて、私はリビングのソファーにドサリと寝転がり、スマホを引っ張り出した。
SNSを開くと、おすすめの動画として変な踊りを踊る同年代のダンス動画が流れてくる。
面白くもなんともない。見ていて楽しいわけでもないのに、癖のように指だけが勝手に画面をスクロールしていく。
真顔で画面を見つめ続ける私に気づき、お母さんが目をつり上げて振り返った。
「その洋服でソファーに寝転がらないの! 汚れるでしょ、自分の部屋に行きなさい!」
だって、部屋のテレビ壊れたし。見たくないから部屋に戻りたくないんだけど。
そう言い返そうとして、私はハッとする。
そんなことを言ったら「またあなたが乱暴に扱うからテレビを壊したのね」とブチ切れられて説教が始まるに違いない。
「……はぁい」
テキトーに返事をしてリビングを出た。部屋に入る気なんて微塵もなくて、私は自分の部屋の扉の前に直接座り込み、スマホでTik〇okの動画を流し続けた。出発の時間になるまで、そうやって現実逃避するしかなかった。
♢ ♢ ♢
車に乗って連れていかれた高級レストランは、正直思っていたのと全然違っていた。単に私の性格に合わなかっただけかもしれないけれど、息が詰まるほど堅苦しくて、すごく嫌な場所だった。
豪華に飾られたテーブルの上には、カッコつけたフォントで『冬井様』と書かれた紙が置かれている。お父さんとお母さんは上機嫌で、メニューを開いてはやたらと高そうな料理を注文し頬張っていたけれど、私は一番安いハンバーグのコースで十分だった。
想像より料理の量が少ないし、なんだか落ち着かなくて喉が乾く。お腹を満たそうとテーブルの上の水が入ったグラスに手を伸ばした。途端に、「行儀が悪い」とお母さんに鋭い目つきで睨まれ、私は慌てて手を引っこめた。
「そんな持ち方しないの。ほら、グラスは……」
お母さんの注意する声が、普段よりずっと尖って耳に刺さる。
周りを歩くウェイトレスさんたちの動きも機械みたいに硬くて、なんだか気持ち悪い。
こんな言葉、使っちゃいけないって分かってる。でも、どうしてもムカついてしまうのだ。
こんな場所で、こんな風に着飾って、私たちがまるで特別な人間みたいに偉そうな顔をして。
——世の中には、金持ちになりたくてもなれない人だっていっぱいいるのにさ。
前にボソッと言った時、お母さんは「皆がなりたくてもなれない環境なんだから、今ある幸せを大切にしなさい」と言っていた。嘘つけ。大切にしているんじゃない、ただ調子に乗っているだけだ。
ナイフとフォークを手に取る。
冷めた気でムカついているくせに、ついさっきまでレストランに行くのを楽しみにしていた私も、結局同類じゃないか。
運ばれてきた美味しいはずのハンバーグは、味が全くしなかった。
それが料理のせいなのか、自分のねじ曲がった性格のせいなのか、私には分からなかった。
♢ ♢ ♢
帰り道、私がずっと不機嫌な顔のまま後部座席に座っていると、お父さんはバックミラー越しに私を叱った。
「そんな顔をするな。せっかくの誕生日なんだから、もっと喜びなさい。お高いレストランにも連れて行って『あげた』んだぞ」
あげたって何よ。そんな上から目線で恩着せがましく言うなら、最初から行くんじゃなかった。なんならファミレスの方がいいでしょ、あれよりは。
「紫苑はまだ分からないだろうけどな、こういうところは滅多に来れる場所じゃないんだぞ。ちょっとくらい楽しそうな顔もしなさい、分かったか?」
私は返事をせず、窓の外に視線を逸らして無視した。
お母さんはあからさまに大きなため息をつき、お父さんは「全く誰に似たんだか」と吐き捨ててアクセルを踏み込む。
街灯の光に照らされた黄色い落ち葉が、夜の風に舞ってひらひらと落ちていくのが見えた。
家に到着し、静まり返った玄関で靴を脱ぐ。
「紫苑、明日は学校なんだから今日は早く寝るのよ」
背中越しにお母さんの声が聞こえた。
「…………うん」
「返事は?」
今、言ったじゃん。
「紫苑!」
感情的な怒鳴り声が頭の上から降り掛かってくる。うるさい。ドメスティック・バイオレンスって言葉、一度辞書で調べてみな。分かりましたよ、さっさと部屋に行って早く寝ますよ。
あえてドタドタと乱暴に足音を響かせながら、階段を一段飛ばしで登る。
「待ちなさい! 紫苑!」
後ろから追いかけてくる声を無視して、2階の廊下を突き進む。
——その時の私は、すっかり忘れていたんだ。
夕方、あのテレビに映っていた気味の悪い魔法陣のことなんて。
イライラしたまま自分の部屋の扉を勢いよく開けた瞬間、私は息を呑んだ。
こちらはリクエストしていただいた小説の一話です!
まだ展開が決まっていないのですがよろしくお願いします、
読んでくださりありがとうございました。