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【進撃の巨人二次創作】部下の様子がおかしい
百茅
⚠注意事項
※クトゥルフ神話の要素が含まれます。
※原作の展開ガン無視の完全IFストーリーです。
※筆者の自己満足です。
※ウォール・マリア奪還作戦までのネタバレ
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最近、モブリットの様子がおかしい。
こう言っても、大体は「おかしいのはお前だ」と一蹴されるのだが。
ウォール・マリア奪還を成功させ、多大な犠牲を払った。
だが目的に向かい大きく前進できたことは確かであり、喜ばしいことである。
それでも私は、副官の様子が気になって仕方がないのだ。
まず最初に気になることは、彼が何故生きているのかだ。
彼は始め、死亡者として数えられていた。死んだと思ったからだ。
いや、本来死んでいなければおかしいだろう。
私がこの目で見たはずなのだ、超大型の爆風に巻き込まれた彼を。
それなのに彼は、傷一つない姿でひょっこり現れた。
そこまでならまだ、まだたまたま生き残ったものだろうと思ったはずだ。
だが、それからの彼は明らかに様子がおかしいのだ。
彼は部下に対して敬語を使うようになった。誰も気にしていないが、
私はこれを見て強烈な違和感を覚えた。彼は上官や目上の尊敬できる人物には
丁寧な敬語を使うが、それ以外に敬語を使うことはない。
ましてや、エレンやアルミンなんかに敬語を使うことはまったく無かった。
彼は序列に倣う生真面目な人物であるためだろう。
なのに、今の彼は私やリヴァイにはともかく、エレンやアルミンにも敬語を使った。
それが私の目には、非常に不自然な事柄として写った。
そして、彼は性格が変わった。前まではしっかり者で生真面目でミステリアス、
若干何を考えているのか分からない、といった雰囲気を纏っていた。
だが最近はそうではない。最近の彼は、よくドジをする。
前まではそんなことも無かったが、この頃は本当に多いのだ。
名前の呼び間違いや物事の覚え間違い、そもそも忘れていたりすることも
多くなり、今の彼は天然ポンコツといった印象。
短期間でガラリと性格が変わるなんて、あり得るのだろうか。
笑うことも多くなった。前までの彼は、あまり笑うことがなかったのに。
頭を打ったのではないかと医務室に行かせたこともあるが、異常はなかった。
頭を強打したとかでないと、有り得ないほどの変わりぶりにも関わらずだ。
それだけではない。彼は、物の整理が下手になった。
彼は私の手伝いで書類などの整理をしてくれることが多かったが、
分かりやすく記録を取った年代順に書類をまとめて仕舞ってくれたり、
何かと整理整頓が得意なイメージだった。そして割と几帳面な性格らしく、
書類の端まできっちり綺麗に揃えられていて、驚いたことがあった。
そのはずなのに、今の彼は几帳面にも整頓上手にも程遠い。
ウォール・マリア奪還前に自分が仕舞った書類を、どこにやったかと
必死に探していたのだ。そう、自分が仕舞った書類を...
...自分が、仕舞っていない書類だとしたら。探すのは当然だ。
いや、そんなことがあるわけ無いだろう。頭の中で思いながらも、
ひとつの疑念を拭い切ることが出来なかった。
自分が仕舞った書類の場所が分からないのも、名前の呼び間違いも、
物事の覚え間違い、そもそも忘れていたりすることだって...
全部、元から知らないのであったら当然だ。
敬語を使う対象が変わったのも、よく笑うようになったのも、
書類の場所、人の名前、ウォール・マリア奪還以前の事柄の記憶。
それらを元から知らないのも、今の彼が...前までの彼と
別人だったからだったとしたら?そもそもの話別人なのだから、
変わるのは当然だろう。だが、今の彼も前の彼も、見た目はまったく同じだ。
見た目がまったく同じで他人に成り代わるなど、可能なのだろうか?
そんなこと...人類の技術では不可能だとしか思えない。
だが実際、それが起こっているのだ。この考えはただの仮説に過ぎないが、
妙に確信を持ってしまっている自分がそこにいた。大前提として、
私は眼の前で彼が死ぬのを見た。しっかりと、自分の目で見た。
彼が帰ってきたときは、悪い白昼夢だったのだろうと片付けてしまった。
でもこうなってくると、現実はあっちだと思わざるを得ない。
私はずっと彼を近くで見てきた。だから、彼の変化には人一倍鋭い気でいる。
こんな現実味のない仮説を信じたいわけではない。
ただ、直感がそう告げているというだけだ。この疑念を拭えるのであれば…
私はモブリットが、いつも日記をつけていると言っていたことを思い出した。
その日記の中身を読んでみれば、何かが分かるかもしれない。
日記を覗き見るなんて、趣味が悪いなんてことは分かっている。
だがそんなことを言っていられる段階は、既に過ぎている予感がするのだ。
私は兵舎にある彼の部屋に足を運んだ。この時間帯、大体彼は不在だ。
そして兵舎に、鍵なんていう高級なものは備え付けられていない。
まったく、兵士の善性を完全に信じ切った作りをしている…
今回ばかりはそれに助けられたが。そう思いながら、
モブリットの部屋の扉をゆっくり開く。中にはもちろん誰もいない。
何かの間違いで彼がいたら、修羅場になってしまうところだったから
ひとまずは安心できた。そして、部屋の様子を見渡してみる。
部屋は荒れ切っており、空き巣が入ったのかと一瞬焦ってしまったほどだ。
はたから見れば、空き巣は私の方なのではないか?という話は置いておこう。
まるで部屋中端から端までひっくり返したような有様に、驚きを抑えられない。
私の部屋と同じくらい、いや、私の部屋より汚いまであるだろう。
前に見た彼の部屋は、きちんと整頓されていて、必要最低限のものだけが
野ざらしにされている…といった様子だった。今とは大違いだ。
疑念を拭いに来るつもりが、また新たな疑念のもとが振り撒かれ、
雑巾が追いつかない状態に頭を抱える。そうだ、ここに来た目的…
彼の日記を探さなければならない。ただし、この散乱した物の中からだ。
とりあえずそれっぽいノートだけを引っ張り出し、脇の方にまとめていく。
ああ、こんな作業。モブリットが、彼がいつもやってくれていただろうか。
私の部屋で、私が散らばした書類をまとめているモブリットの姿が、
ふと目を閉じた瞬間、瞼の裏に鮮明に映し出された。
思えばいつも、彼に無理ばかりさせていた。彼の体調や負担も無視して。
もしかすると今の彼は、私に対して反抗しているのかもしれない。
私だってドジになるときもあるのだから、あなたがちゃんとしなさい。
そういう意味を込めて、普段と違う自分を演じているのかもしれない。
なんだそれなら、私が変な妄想を膨らませただけだろうか。
そう思いながらも、ノートのひとつを捲る。すると、それは日記だった。
折角だから、少し見てやろう。すると、ウォール・マリア奪還前後の
日記の記述に、若干の違和感を覚えた。
<今日は、久し振りに巨人のスケッチ以外に絵を描いた。私は元々絵を描くことが好きで、植物図鑑の挿絵を描くのが夢だった。なのに、今は夢とは程遠い仕事をしている。本当に、人生というものは先が読めない。調▓兵▓▓ おかしい、なぜ調査兵団に入ったのかが思い出せない。確か、訓練兵時代に…記憶力が落ちただろうか。思い出したら書こう。>
<今日は分隊長が大事な書類を無くしたやらで、忙しい1日だった。それにしても最近、どこからか視線を感じる。ねっとりとした、背中にへばりついてくるような視線だ。気味が悪い。いざとなれば、自分の身は自分で守れるが。それより今気にするべきなのは、明日のウォール・マリア奪還作戦についてだ。これを成功させることが出来れば、我々調査兵団は目的に大きく前進できる。だが、今現在予測される殉職人数…ここに自分が入るべきなのだったら、喜んで入るだろう。それで、奪還が可能なのであれば…私は、名も無き兵士として死ぬ覚悟は、とうの昔にできている。心残りといえば分隊長だが、きっとあの人なら…大丈夫だろう。>
<うれしい うれしい もっとみたい もっともっと…もうはなさない から はなそう>
<文字を書くのはまだあぶない 筆跡まではまねできないきょうは名前を覚えた エレン アルミン リヴァイ ハンジ モブリット ハンジという名前が 頭の中でずっとはなれない たいせつな名前だった のかもしれない 我々はしらない感情>
寒気がして、背筋に変な感覚が走った。ウォール・マリア奪還の後に
書かれた日記が、明らかにモブリットが書いたものではない。
だがこれは彼の日記で、彼の部屋にあったものに違いない。
それなのに文章の書き方も、筆跡も、まったく彼のものとは異なる。
そして、ウォール・マリア奪還の少し前に書かれた日記の内容。
物忘れが多くなった?誰かに監視されていた?どの情報を拾うべきなのか、
頭の中で考えがぐるぐる巡る。つまり、ああ…どういうことだ?
疑念は大きな疑問に代わり、私の脳内の中心に仁王立ちしている。
そして今のモブリットが、以前までのモブリットとは別物なのだとしたら。
どうやってそのようなことが可能なのか、私には分からない。
私以外にも分からないだろう…そも、そんなことは人間には不可能だし、
かといって巨人関連の力でもそんなことは出来ないだろう。
可能性があるとすれば、壁外の謎の技術…?いや、分からない。
疑問はなかなか解消されず、このままでは壁外に出向くまで
偽物のモブリットと膝を突き合わせて生活しなければならないことになる。
その状況に耐えていられる自信は無いし、それならいっそ本人に
お前は本物かと聞いたほうが良いのではと思うほどだ…
そんなくだらないことを考えていた瞬間だった、部屋のドアノブに
手がかけられた音がした。ドアノブと人間の肌が触れ合う音が聞こえる。
だが音が聞こえてしばらく、ドアが開けられることはなかった。
それでも、ドアの向こうに立つ人の気配は消えない。
警戒はしながらも、すぐドアが開けられないことに少し安堵していた。
ほっと私の口から息が出たと同時に、けたたましい音が響いた。
ガチャガチャ、ガチャガチャ。ドアノブを回す音。
鍵なんて無いのに、ドアノブを回して扉を開けば入ってこられるのに。
それなのに、ガチャガチャ。ガチャガチャ。
ドアノブを回す音は止まなかった。
このままだと、私がノイローゼになってしまう。痺れを切らした私は、
騒音の主を弾き飛ばす勢いでドアを開けた。狙い通り、鈍い音が響く。
一体誰がこんなことをしているのか、ある程度予測はついているが…
扉の前で額を痛そうにさすっている兵士。彼のことはよく知っている。
それと同時に、まだ何も知らない。
「モブリット、何をしているんだい?扉は引けば開くよ」
「分隊長こそ、私の部屋で何をしていたんです?趣味が悪いですね…」
「趣味が悪いのは、君も同じだと思うよ。君、モブリットじゃないでしょ」
私の言葉に対する彼の反応は、薄い笑みを浮かべるだけ。
見たことのない表情。やはり彼は”違う”存在なのだと再確認する。
もう少し人が来ないような場所で話しませんか。そう彼に提案され、
私は渋々頷いた。本当は、人通りが少ない場所でこいつとふたりきりは
不安だ…何をされるのか分かったものじゃない。真実に近づいたのだから、
殺して口封じ…なんてこともあり得る。だが、ここで拒否すれば
こいつから情報を聞き出すことができない。聞きたいことがたくさんあるのだ。
しばらくは、こいつの手のひらで踊るふりをするのも悪くないだろう。
先程から貼り付けたような笑みを崩さないこいつに不気味さを抱きながらも、
連れられるがままに兵舎を出て、商店が多い通りを抜け、
小さくて誰にも知られていないような骨董品店ばかりが並ぶ、
本当に人通りとは無縁そうな場所に連れてこられた。
彼は私の方へ向き直り、笑顔で言葉を投げかけてきた。
「さあ、あなたは私に何を聞きたいんですか?
そうですね…4個まで、あなたの質問に答えます。4個ですよ。
それ以上はダメですし、それ未満もダメです。ぴったり4個質問に答えます」
「は…?なんで急にそんなことを…あっ、今のは質問じゃないから…」
「ふふ、分かってますよ。私はどこぞのランプの魔人とは違って優しいので」
こいつが何を言っているのかはよく分からないが、それより重要なのが
4個の質問に答えるという部分だ。4個…何を聞くべきなのか。
まず、お前は本物なのか偽物なのか。そして偽物だったとして、
本物は死んでいるのか、それとも何か別の場所にいるのか。
いやこの質問はふたつという判定になるのか?それなら、
本物は死んでいるのかという質問にだけ絞ったほうがいい。
こいつが偽物であることを前提として質問を組み立てていくが、
何が目的なのかも聞いておきたい。何がしたくてモブリットに成り代わったのか、
なぜ成り代わる対象にモブリットを選んだのか。これも聞きたいが…
質問できるのはあと1回だけだ。あとの1回、本当に聞くべきなのは何か。
散々考えた後、私は全部の質問を考え終えた。
早く質問しろと言わんばかりに、モブリットの姿をした何かがほくそ笑む。
「質問を考えた。お前は本物のモブリットか。
偽物だとして、本物は死んでいるのか。そして何が目的なのか。
…君に、モブリットの代わりが務まるのか」
「面白い質問ですね。それでは順番に答えましょう」
まず最初の質問の返事は、”自分はあなたの予測通り偽物だ”というもの。
まさか人間に正体を見破られるなんて、そう言いながら偽物は
声を弾ませて笑った。そして、次の質問の返事。
”死んでいる”という事実を、包み隠すことなく告げられた。
やはりあれは、白昼夢などではなかった。今まで夢だと信じようとした
あの出来事のほうが、耐え難い現実のものだった。
覚悟はできていたつもりだったが、いざ面と向かって言われると
言葉の重さに吐き気を催してしまいそうなほどだ。
次に偽物は、何が目的なのかも話してくれた。そしてついでとでも
言わんばかりに、自分の正体についても話してくれた。
彼は自らを”イースの偉大なる種族”と名乗った。イースと呼ばれる
滅亡しつつある銀河の彼方から、6億年前の地球に到来した
実体を持たない精神生命体だという。時間の秘密を極めた唯一の種族であるため、
畏敬の念を込められ、大いなる種族と呼ばれているそうだ。
人類以前に繁栄した「旧支配者」の一種族だという彼は、
そのことを自慢気に話してくれた。
そんな彼は、イースの偉大なる種族の中でも”変人”と言われる部類であった。
彼には人間として暮らしたいという願望があった。
一般的なイースの偉大なる種族は、人類の文化や歴史を知るために
人間に成り代わるようだ。だが彼が抱く願望はそういう知的好奇心とは
また違ったものであり、他のイースの偉大なる種族には理解を得られなかった。
そこで彼は、自分の独断により成り代わる対象を探していた。そしてたまたま
目に留まった人物がモブリットだった。毎日彼をずっと観察し、
彼の一日の行動、話し方などを研究していた。
そんな最中、ウォール・マリア奪還作戦でそのモブリットは死んだ。
モブリットの行動などについての情報収集は終えていなかったが、
その彼が死んでしまったのだからしょうがない。そう思い、
不完全なままだが彼に成り代わることにしたようだ。
彼の身の回りの人間の名前を覚えられていなかったことも、
上官以外にも敬語を使っていたのも、まだこいつが彼のことを
あまり知らなかったからだという...筆跡などに関してもそうだ。
地球やら銀河やら、何を言っているのかはよく分からないが、
とりあえず彼らがなにか人知を超えた存在であることは理解できた。
「とりあえず大体分かった...いや、何も分からないのだけど分かった。
理解の範疇を超えているってことが分かった。だから、もうこれ以上
君の正体やら目的の話は聞かないよ。最後の質問に答えてくれ」
「私にモブリットの代わりが務まるか、でしたっけ。
ええ、彼のことをもっと教えてくれるのなら可能です。
それにしても、あなたはなぜそんなことを聞くのですか?」
「...私にはまだ、モブリットがいないとダメなんだ...多分。
偽物だったとしても、君にはそばにいてほしいと思った」
「...驚きました。あなたは、偽物でもいいというのですか?
彼のことが大切なんだとしたら、私のことを罵るんじゃないですか?」
「うん、多分...普通はね。人間のこと、君はよく知っているようだ」
そう、普通なら彼の言う通りにするのだろう。私は普通じゃない。
偽物だとしても、そばにいてほしかった。この言葉に嘘偽りはない。
本物のモブリットの気持ちを無碍にしているのかもしれない。
「正気だとは思えない...私はてっきり、あなたに貶されるものかと。
私が人間なら、そうしたでしょうから」
いつの間にか、私たちの立場は逆転していた。
様子がおかしい部下は、人ならざる存在でありながら人間の感性を
よく知る生物だった。その様子がおかしい部下に怯えていたはずの私は、
今その様子のおかしい部下に、感性という部分で疑問を抱かれている。
ああそうか、私の方がおかしいらしい...それでも、気持ちは変わらない。
「いいでしょ?君だって人間の生活を求めたはずだ」
彼は頷いた。”モブリット、あなたの上司は様子がおかしいですね”
どこに届くかも分からない、うわごとを呟きながら。
お題のルーレットで出たものに従って書いてみました。
二次創作は、本編ではありえない事象を発生させられることが
醍醐味だと思っているので、これからも本編の展開
ガン無視の二次創作を書こうと思っています。よろしくお願いします。