公開中
スロウダウナー
「…ねえドクター」
「なんですか、ミクさん」
「僕のこと、どう思う?」
「…どうって…。大切な患者ですが」
「…そう。グミ先生は…こんな僕のことを、助けてくれるんだ」
「……もちろんです」
「‥こんな《《モンスター》》のこと助けてくれるなんて、モノ好きだねぇ」
---
一人暮らしを始めても、特に何も変わらなくて。
就職もうまくできなくて、やっと受かった仕事場でいじめられて。
昔されていた学校でのいじめもフラッシュバックして。
引きこもって、ネットの世界に来て。
「…あは」
新旧曖昧な、絶望的に広い広い世界で僕は生きている。
神の手のひらから振り落とされた人間と、手のひらに滞在する人間で分けるのなら、間違いなく僕は振り落とされたほうだ。
僕って、誰かに操られているような人間だ。
もはや、人間とも呼べないかもしれないな。
そんな僕は、今日もドクターのところを訪れる。
心痛を抱えて無理矢理浮かべたすまし顔で、僕は今日もドクターに助けを求める。
「薬をください、ドクター」
「…薬…。抗うつ薬でいいですか?」
「いいよ、それで。少しでも楽になれるなら」
「…そうですか…」
---
「私も、司令塔の仕事に付きたいですっ」
「私も、頑張っておしゃれしてみたんです」
私も、私だって。
そんなふうに、色々な立場に立ってみても、取ってつけたように自分を変えても。
結局は、そんな"私達"は、
「「「偽物」」」
なんだ。
夜の街に行ってみても。
過剰な期待が、退路を塞ぎ込んで、僕の居場所はどんどんなくなっていく。
「もう、逃げることすらできないんだ……」
---
「よくさぁ、僕、人類最初の日に戻れば楽になれるかもしれないって思うんだ。でもさ、戻ったとしてもさ、"僕"の記憶はないよね」
「考えるだけ無駄。…わかってるのに。なんで救われたい、って…思っちゃうん、だろう…」
「……ミク、さん……っ」
「……!」
「……冗談だよ。一層悲しくなるから笑い返してほしかったな」
「それにさ、僕がほんとに、人類最初の日に戻っても生きる資格はないんだから」
---
「ミクさん」
「…はい」
「私が、ミクさんの仲間になります」
「……」
「安心してほしいんです、少しでも」
ぎゅっ、とドクターに手を握られた。
「…………!」
(手に…ぬくもりを感じる)
(ドクターは今、僕にぬくもりを分けてくれてる、安心を分けてくれてる)
(うれしいはずなのに…)
(そんなことをしてもらうほど、僕はこの世界に重要な人間じゃない)
「…?ミクさん?」
「…僕はいらないね」
「え…?」
僕は、ドクターと手を離して、まっすぐにドクターを見つめる。
「…本当なら嬉しい愛っていう気持ちを限界なほど汚して汚した僕には、愛を求める資格なんてないんだよ」
「……っ」
---
「ミクさん、頑張ってますねー。最近」
「あっ、ありがとうございます、上司」
("最後"に頑張っても心苦しいだけ)
(でも)
(僕だって、咲いてみたいんだ、本当は)
(――!……ああ)
("咲いてみたい"、これが本当の僕の気持ちだ)
(これが、僕の本当の、ずっと擬態してた"アイ"だったんだ……)
---
――…でも
こんな"最後"にアイを持ったって、僕の印はないよね
どうせなら、もっと早くアイを持ちたかった…
なんでもっと早く、アイを思い出さなかったのっ
でも、今までたくさんたくさん1人で泣いてきたけど
やっと僕を見つけた
もう泣くことはない。
だって、もう終わりだから
---
「…よかったですね、ミクさん」
「はい。ありがとうございます、ドクター。"これ"を教えていただいて…」
「いえいえ。お役に立てたのなら幸いです」
「…それじゃあ、ばいばい」
「…ありがとうっ」
「ドクター」
「そして、」
「僕。"最愛なこの世界に産み落とされたモンスター"」
---
パトカーと救急車の音が鳴り響いた。
グミドクターは、患者 ミクの世界と一つになる瞬間――首を吊る瞬間を、したり顔で見ていた。
そして、ミクも、人生最後の瞬間は、人生最大のしたり顔だったという。
---
曲パロといっていいのかわからないほど雑でしたが…
最後まで読んでくださったみなさんありがとうございます〜!
それではまた次の機会に⁉