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三馬鹿の日常
夢月あまね様から頂いたキャラクターたちです。
東京の繁華街、老若男女様々な人々が思い思いの姿で行き交う夜。
光り輝く喧騒にあふれた街の歩行者天国に面した一軒の居酒屋から、肩を組み、暖簾を押し上げて出てくる3人の人影があった。
正確に言えば、彼らは肩を組みながら真ん中の人物を支えていた。真ん中の人物は、まさしく酔っぱらいといった様子で、その少々丸い顔は赤く染まり、眠そうな顔で両側の二人に寄りかかっている。
一方両側の二人はと言えば、片方は背が高く真ん中の人物を支えるのには十分なのだけれど、もう片側の男はチビで、少々苦しそうに真ん中の男の重みを引き受けていた。
真ん中で支えられている男性は山田元一郎、通称やま。
片側の背高のっぽは小野澤龍輝、通称おのざわ。
もう一方のちびは、島野春大、通称しま。
彼ら3人は大学のサークルで知り合った仲であり、この繁華街に、いつも彼らがそうしているように飲みに来ていた。
今日に限ったことではないがやまはよく食べ、よく飲む。そのくせあまり酒に強い方ではない。どちらかと言えば食専門である。しかし元々計画性という言葉から縁遠い性格の上、少し酒の回った頭でまともにセーブできるわけもなく、結局おのざわと同じくらいの酒を注文して、あっけなく潰れそうになっていた。本人は非常に幸せそうだ。
一方おのざわはというと、やまとは比べ物にならないほど酒には強い。同じだけ飲んでも、おのざわの顔はやまとは違い色も変わっていないし、一見すれば素面である。
また彼は女好きであり、大学であろうと街中であろうと、とりあえず綺麗な女性を見かけてはやまとしまに「おいあの人美人じゃね?」としきりに同意を求め、そして隙あらばナンパする。意外とこちらも目を離せばめんどくさい事になる男だ。
そんな二人に手を焼いているのがしまである。彼は二人に比べると身長がかなり低く、そのせいで年下に見られることも多いが、れっきとした大人である。また彼はどちらかというとせっかちな方で、何をするにも進まないやまと脱線しがちなおのざわに悩まされている。が、友達付き合いを続けていることからもわかるが、しまはそんな二人でもまあ面白いしついていきたい、と思っているのだった。ちなみに、3人で出かけた時は、居酒屋で注文をまとめるのも、焼肉屋で肉を網に並べるのも、毎回彼の役割になる。
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「やま、重い!そろそろ自分で歩けよ!」
居酒屋から少し離れた比較的人通りの少ない細い道でしまがパッとやまの腕を離した。そろそろ肩に限界が来そうだったしまは、自分にのしかかる腕からようやく解放されて、ふうーと息を吐きながら凝った首を回す。
「ええー……」
そして、急に支えを失ったやまはだらんと力なく腕を垂らしながら不服そうな声を上げる。依然として眠そうなままだ。
「しま、俺一人で持つのは流石にきついって!」
片腕だけでやまを支える羽目になったおのざわは、元々体幹が強い方でもなかったため悲鳴をあげる。
「おーい、自分で歩こうか?」
「わかったから……」
しまの声に渋々といった様子でやまはふらつきながらも立つ。
「じゃあ、俺はこっちだから……」
そういって歩き出そうとするしまの腕をおのざわがぱっと掴む。
「待て、二次会いこーぜ」
「え!?」
まさかここからまた飲み食いする気なのかとしまは目を剥くが、やまはすでに限界が近そうであるにも関わらず、お、いいねーと賛成する。
「まじか……」
呆れる様子を見せながら、しまも内心は誘われたことが嬉しかった。
「やま、今度は自重しろよ!」
そう言いながら適当な店を検索するおのざわ。やまは鼻歌を歌っている。
「あ、ここいいんじゃね?」
そういっておのざわは液晶を二人に向ける。いいねいいねと、二人もそれに賛同する。
「あ、待って、俺のこと運んで……」
「はあ!?」
速くも泣き言をいうやま。呆れながらも肩をかす二人。
「本当に、次の店ではノンアル以外禁止だからな?」
「任せろ!別に俺は焼き鳥が食えればそれでいい!」
「まだ食べんのか……」
「あ、あの子可愛いー!」
「アホかお前は」
おのざわの頭を叩こうとして、しまは、そういえばやまが間に挟まってるんだった、と思い出す。
アホな話題で、頭の悪そうな笑い声をあげるのも。しょうもない話ばかり延々と繰り返されるのも。無計画にただ楽しくやっていくのも。全て、彼らの日常。
やけにうるさい3人組は、今日もただ、若者らしい馬鹿騒ぎをする。