公開中
異変解決! 〜異次元消息異変〜 参
「あ…ここは?」
気づけば、わたし・由有は不思議な場所にいた。幾何学模様がずらりと、四方八方に描かれている。彷徨っても彷徨っても無限空間。でも、お腹もすかないし眠くもならない。
「おい、由有。これ、異変か?」
「そうみたいね。なんとか空間を捻じ曲げられないかしら…飛符『天駆ける一撃』!」
秘技をしてみても、近くみえる壁を足はスルリと抜けてしまう。
「姉さん、ここは一体…新しい異変だ」
「サニー、ひとまず落ち着きなさい。こういう時、如何に冷静でいられるかが、生きるか死ぬかの境目だから」
「むぅ」
隣りにいるサニーとムーンの声、そして文と花音の声もする。
「花音さまぁ、どうにかして捻じ曲げられないですか」
「しょうがないじゃない。伊代みたいに瞬間移動もできないし。わたしたちの能力を覚えてる?空を飛ぶ、放ビーム魔法を使う、星空とかを操る、天気を操る、念じたことを書き起こす、医学に長けている、よ?」
花音の言葉ひとつひとつが、わたしたちの希望を打ちのめす。
「しかも、ここでは時が経っているかわからない。現実と同じスピードか、長いか、早いかさえも」
「…」
どうしよう、とつぶやく。こんなとき、誰なら何をするだろう?
「星符『夜空の魔法姫 スター・ドレイン』!!」
「姉さん、無茶はやめなって!」
ムーンが幾何学模様に攻撃する。もちろん、遠く遠く、星型の弾幕が飛んでゆく。
「なんでそこまでするの、姉さん!?」
「煩いわね、サニー!人間、妖怪、関係なく守る。それが姫の務めだから」
「ったく、姉さんは謎に真面目なところがあるなぁ」
サニーが呆れてムーンの方を向く。
「天符『天象の吟遊詩人 警戒の雷』」
ゴロゴロゴロッ、と雷が降り落ちる。
「一応、わたしも由緒正しきスター・サファイア家の末裔。もう性は変えちゃったけど、血筋はまだ現役だから!」
「我が妹よ、それがいいわ」
フッ、とムーンとサニーが口元を緩ませる。
「魔符『ハイパービーム』!!」
「紅…はあ、あんたまで」
ビームがまた、果てしなく遠いところまで飛ぶ。
「はぁ…ほんと、やなっちゃうわ。人間は不思議ねぇ…出来もしないことを力技でできるようにしちゃうから」
そう皮肉ってつぶやく。
アメジストのように、紫色に輝く幾何学模様。ずうっと続いていく様を、わたしは静かに眺めた。