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ある死神のおはなし
レオ
そう遠くない昔、あなたのお父さん、お母さんが子供の頃でしょうか。ある死神がいました。死神は二種類の人間にしか見えません。もう死んだ人間と、人を沢山殺してしまった人間だけです。死神の仕事はふたつ。もう死んだ人間をあの世へ送ることと、人を殺した人がどんな人なのかを調べることです。
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ある日のこと。死神はある人殺しの調査をしにある男の家へ行きました。その男の家はこの日本から遠く離れた雪国の、山の上にありました。
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男の家は広く、古い家でした。死神が家へ着くと、家の扉を叩きました。
「ごめんくださーい、怪しいものではありません」
そういうと、例の男が出てきました。
「よく来てくれたね。寒かっただろう、さあ入って」
死神は家へ上がりました。
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死神は案内されたダイニングへ入りました。
ずいぶんと大きな机なのに、椅子は向かい合わせに2つしかありません。
「もう一つの椅子は誰が使うんですか」
今日の死神の仕事はあくまでどんな人間かを調べることなので、お話は適当に繋ぎます。
「娘が使うんだ」
「娘さんがいらっしゃるんですね」
「なかなか上手く行ってなくてね。さあ座って、お茶でもどうかな」
死神はありがたくお茶を受け取り、一口啜りました。
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「娘さんは今何歳なんですか」
「9歳だよ。家に入ってもなかなか僕と口をきかないんだ」
ふ、ここで死神の頭にハテナが浮かびます。今は夜の八時です。9歳の女の子が1人で出歩くには遅い時間。それに、周りには街灯の一つもないのに。
「娘さんは今どちらに?」
そういうと、男は少し黙り、一言言いました。
「ついてきてくれ」
そういうと彼は立ち上がり、ダイニングを出ました。少し歩くと、一番西側の部屋に来ました。
「見てくれ」
男がその部屋のドアを開けると、部屋の中が見えました。そこには、女の子の写真がびっしり。それも、全て違う子です。
男がぽつりと呟きました。
「次はどんな娘ができるかな」
死神はひどく恐ろしくなり、叫びながら家を飛び出してしまいました。
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どれくらい走ったでしょう。気付くと街に出ていました。死神は安心し、ゆっくり歩きだしました。
ふと、つい先日死んだ子供を迎えに行ったとき、怖い怖いと泣き出してしまったことを思い出しました。そんなことは死神にとっては日常茶飯事。だけれども今はやけに鮮明に思い出してしまいます。遠くを来た道を振り返り、その度に泣き叫ぶ、女の子の声を。