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第九話:衝突と理想の果て
グライアの攻撃は止まらなかった。愛する者への手加減は一切ない。むしろ、愛する者だからこそ、この世界の理を正す役目は自分にあると、彼女は自身に言い聞かせていた。
「これが、貴様の理想の果てだ!」
グライアの黒い神力が、無数の冷気となってゲネシスに襲いかかる。それは死の概念そのものを具現化したものであり、触れるものすべてを無に帰す力を持っていた。
ゲネシスは、白い神力で防御壁を張る。彼の力は生命の創造と維持。本来は攻撃的な性質ではないが、愛するグライアの攻撃を受け止めるため、必死で抵抗する。
「俺を罰したいだけだろう、グライア!君のその冷たい態度の裏にある焦りは、俺にはお見通しだ!」
ゲネシスは、痛みの中にもいつもの笑顔を忘れなかった。彼にとって、グライアが自分に真剣に向き合ってくれている証拠だと捉えていた。
「黙れ、変態」
グライアは顔を赤らめたが、攻撃の手は緩めない。彼女の怒りは、ゲネシスの無自覚な言葉に向けられたものではなく、この状況を作り出した世界に向けられたものだった。
戦いの余波は大きく、ゲネシスの神殿と庭園は瞬く間に荒廃していく。本来なら生命力に満ち溢れているはずの庭園の草木は枯れ果て、黒と白の力の衝突地点は、世界の終末を思わせる光景と化していた。
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その頃、シルフィアとゼフィールは、天帝に最後の嘆願をしていた。
「どうか、新たな理の構築を試みさせてください!排除ではない、共存の道があります!」
シルフィアは必死に訴える。
「成功確率は?」
天帝は冷静に問う。
「……非常に低いです」
ゼフィールは正直に答える。
「しかし、このままでは世界の滅亡は避けられません。我々は、この可能性に賭けるべきです」
天帝は沈黙した。神々が世界の根幹に手を加えることは禁忌中の禁忌だ。しかし、目の前で世界が滅びかけているのも事実だった。
「ゼフィール、シルフィア。……許可する。だが、失敗すれば、お前たちにも重い罰が下ると思え」
天帝の言葉に、二人は深く頭を下げた。希望の光が見えた瞬間だった。
「グライア様とゲネシス様を止めないと!」
シルフィアは急ぎゼフィールと共に、二人が戦う境界へと急いだ。時間は残りわずか。二人の柱神の衝突は、世界の崩壊を加速させていた。
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