私の悪いとこを全部なくして代わりになるのならそれでいいの。

お父さん、お母さん。今まで迷惑かけてきてごめんなさい。 肩を丸めて膝を震わせ、兄と姉に別れを告げる。 見栄を張って私を形成した。いつだって、そう。 悪い事じゃない。私の悪いとこを全部なくした代わりになるのであればなんだっていいの。 「…愛されたい」 言うはずのなかった本心が口から溢れた。 もうこれ以上本音は出さないように、出ないように形成した私の顔を全部縛った。 皆さようなら。あぁ、先生もいたっけ。じゃあお元気で。 鼓動が一層早くなった心臓。縛ったその口の隙間から唾液も吐瀉物も垂れる垂れる。 いつの時代も、正しい正直者が馬鹿を見るんだ。 縛っただけじゃ、まだ足りない。 完全に｜私《・》が出ないように、この心臓を貫かなきゃ。大きなミシンで。鋭い針で。 もうなんにも残ってないよ。私という全部が引き剥がされて細胞すらも｜無くなってくの。《亡くなってくの》 私はもういないの。そう思いたいの。全部が破棄されて…帰る場所すら、無かったの。 私の悪いとこを全部縛って、切り取って。それが私の代わりになるのであるっていうなら、なんだっていいの。それで良かったの。こんなの私じゃないって思っても。…それでおしまいなの。