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『君と僕の、夏の境界線』4 一応完結 続き書いて欲しいならファンレターよろしく😀
楽しかった夏休みは瞬く間に過ぎ去り、秋が来て、冬が終わり、気づけば季節は春になっていた。
三月の終わり。駅のホームには、いつもと違う少し冷たい風が吹き抜けている。
電光掲示板に表示された『特急・東京行』の文字が、現実を無情に突きつけていた。
葵の足元には、大きなキャリーバッグが置かれている。
「本当に、行っちゃうんだな」
ポシェットの紐をぎゅっと握りしめた葵が、寂しげに微笑む。今日の彼女は、あの夏のポニーテールでも浴衣姿でもなく、少し大人びた私服を着ていた。それだけで、彼女が新しい世界へ進もうとしているのが分かって、胸がツンと痛む。
「うん。でもね、不思議と泣きそうにはないよ。蓮がずっと支えてくれたから」
この半年間、僕らは受験勉強の合間を縫って、たくさん話をしてきた。不安になるたびに手を繋ぎ、お互いの気持ちを確かめ合ってきた。
ジリリリリ、と発車のベルがホームに鳴り響く。
ついに、その時が来てしまった。
「蓮」
葵が一歩、僕に近づく。あの歩道橋の上で、僕らの影が重なったあの時のように。
「私、東京で頑張るね。だから蓮も、ここで格好いい男になっててよ」
「言われなくても、置いていかれないくらいビッグになってやるよ」
お互い、無理に笑おうとしているのが分かって、愛おしさが込み上げる。
僕は葵の肩を引き寄せ、最後に一度だけ、強く抱きしめた。葵の小さな手が、僕の背中に回る。
「遠くに行っても、僕たちの境界線は繋がってる。忘れるなよ」
「うん。世界で一番、大好きだよ、蓮」
離れた葵は、今度は涙をこぼさず、最高の笑顔を見せて電車のドアへと消えていった。
プシュー、と音を立てて扉が閉まり、列車がゆっくりと動き出す。
窓の向こうから、葵が小さく手を振っているのが見えた。僕も大きく手を振り返す。
列車のスピードが上がり、やがて彼女を乗せた車両は、僕の視界から完全に消え去った。
静まり返ったホームで、僕は一人、深く息を吸い込む。
見上げた空は、あの夏のジリジリとした青さとは違う、どこまでも高くて優しい春の青だった。
距離という新しい境界線が、今日から僕らの間に引かれた。
だけど、もう何も怖くない。僕らの心は、あの夏の向こう側で、確かに一つに繋がっているから。
(新幹線、乗ったらLINEして)
ポケットの中でスマホが震えた。画面を見つめ、僕は今度こそ、心からの笑顔を浮かべた。
(一応完結)