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ある日の日常(大島視点)その2
学校編です!ちょっと長め!
それでは、いってらっしゃい!
妹に見送られて家を出た俺は、慣れない寒さに耐えながら川島のところへ足を運んだ。
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「おっ!来た来た!おーい!大島ー!」
川島が大声で俺の名前を呼ぶ。朝からうるさい奴だな。あいつはそういう奴だが。
「朝から元気だな。さては今日のテスト忘れてるな?」
「マジ!?今日テストあんの!?」
1ヶ月前から言われ続けたことだろう。
ここまで読んだみんななら分かるはずだが、こいつは正真正銘のバカだ。とにかくバカ。
こいつの頭の中に【勉強】という単語は存在しないと思う。
「行くぞ。」
慌てふためく川島を置いて、俺は学校の方向へ進み始めた。俺と川島はいわゆる【幼馴染】で、家も近い。
いつもの待ち合わせ場所もお互いに1.2分で着くところである。
昔はよく公園で遊んだっけ。昔すぎて、よく覚えていない。
「ちょっ、置いていくなよっ!」
川島が走ってこちらに来る。さすがだな。元陸上部は伊達ではないらしい。
50メートルほどの差を数秒で埋めてきた。
「さすが、元陸上部。」
「中学だけな。強制だよ、強制。元々入りたくなかったし。」
この話をするといつも川島は顔をしかめる。相当嫌な思い出なのかはわからない。
俺にとっては羨ましいだけなのだから。
「あ、そうだ。」
川島が何か思い出した顔をして、こちらを向く。
「今日、大島の家行く約束だけど。」
「どうかしたのか?」
俺はどうしても気になった。
今日行けないというならば、光がショックから立ち直れない可能性があったからだ。
俺は息を呑み、返答を待った。しかし、俺が思っていたよりもあっさり、
「ちょっと遅れそうだわ。姉ちゃんの職場に差し入れ持ってかないといけなくて。」
よかった。行けないわけではない。そういえば、川島の姉は社会人だったか。
「姉ちゃんが「職場に旅行のお土産持っていくんだ〜!」て言ってたのに、今日になって忘れて行っちゃって。代わりに持って来いって言われちゃった。」
「結構図々しいな、姉。」
つい本音が飛び出てしまった。
「お〜!大島、俺の気持ち分かってくれるのか!」
その瞬間、急に強く抱きしめられた。痛い。
しかし、俺と川島の身長差は7センチ。一回り大きい男子高校生なんか、振り払えるはずもなく。
「川島っ!痛いっ!」
「ああ、ごめん。つい。」
反省した様子で川島は手を離したが、まだジンジン痛い。冬だから余計にだ。
この悪事は絶対に報復してやる。そう心の中で誓った。
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先程のミニ事件の後、遅刻しそうなことに気づいて、2人で全速力で学校に向かった。
なんとかチャイム直前についた。
ガラガラッ
「あ!2人ともギリギリですよ!」
もう1人の同級生である、中島涼が、息切れている俺たちに注意した。
「ごめんごめん!話盛り上がっちゃって!」
川島がそう答えると、俺たちは各々自分の席に座った。もうすぐホームルームが始まるようだ。
ガラガラッ
「はーい。今からホームルームやりまーす。」
だるそうに教室に入ってきたのは、俺らの担任、美島ツネ美先生だ。
「遅刻した人はいませんかー。」
「「いないでーす。」」
「はーいじゃあホームルームを終わりまーす。」
うちのクラス、2-Aの恒例【5秒HR】。
見た目以外に長所がない先生の数少ない良いところだ。
そんなこんなですぐ終わったホームルーム。
俺は今日のテストに備えて、机に数学のテキストを開いた。
しばらく解いていると、クラスメイトの1人が話しかけてきた。
「大島くん。すみませんが、テストの範囲表待っていませんか?」
彼は中島涼、教室に入ったとき俺らに話しかけてきたやつだ。
こいつも勉強しているとは到底思えない。何故なら、、、
「ほんとうにおねがいしますぅ、、、泣」
この状態になるということは、そういうことなのだ。
中島はとにかく涙もろい。
女子と話してるだけでも目に涙を浮かべているし、怖い先輩に出くわしたなんてなったら、川島に泣きつくに決まってる。
「分かったから。泣くな。」
「ありがとうございますぅぅ、、、泣」
「だから泣くなって!」
本当にわかっているのか心配になる。
まあ心配したところでこいつの未来は大体予想できるが。
一方の川島は、机に突っ伏して寝ていた。
ぐーぐーと寝息を鳴らして、音だけ聴くと幸せそうだが、おそらくそうではないだろう。
キーンコーンカーンコーン
ガラガラッ
チャイムが鳴ったと同時に数学の先生が入ってきた。
寝不足のようで、目の下にははっきりとしたクマがあった。
今日は田中先生か。てっきり3年担当の先生が来るもんだと思っていたが。
3年数学担当、甘島肆恩(かんじましおん)。
今年新任として来たにも関わらず、生徒たちに大人気の新米先生である。
ちなみに、名前からみて分かりづらいと思うが、成人男性である。
今日はその先生が来ると聞いていたので、いつもの先生が入ってきて驚いた。
「えー、甘島先生は今日欠勤されている。なのでいつも通り私が授業をする。」
「「えーーーー!」」
「えーって言わない!」
お馴染みのくだりをしたところで、早速テストの解答用紙が配られた。
「それでは、始め!」
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「なあなあ、テストどうだった?」
「いやー、終わったわ。」
クラスがテスト後に騒がしくなるのは、恒例行事といっても過言ではない。
しかし、教室の隅に静かにうずくまる2人の影が見えた。
もちろん、赤点ツインズの2人である。
「いや、流石におわったわ、、、」
「希望も見えない、、、」
2人とも魂がすっぽり抜けたようで、今日一番ひどい顔をしていた。
「おお、大島。テストどうだった?」
人にまだ質問できるから、そこまでのダメージは入っていないのかもしれない。
いや、ないな。
「別に。いつも通り。」
「大島、数学得意だもんな〜。羨ましいわ。」
「ですよね〜。脳みそだけ取り替えてほしいです、、、」
「グロいこと言うなって。」
3人とも疲れたことには変わりないので、各々席につき、残りの授業を受けた。
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「やっと昼休みだ〜!!」
元気よくそう言ったのは川島である。
「大島は今日学食何にする?」
「そうだなー。今日はカツカレーにでもするかな。」
「お!珍しく太っ腹じゃあーん!」
前日、家で昼食に200円のうどんを毎日食べていることをうっかり話してしまい、光に質問攻めにあった。
今日は多くお金を持たされてしまい、他に使い道もないので、おとなしく従うことにしたのだ。
「じゃあ、、、俺はハンバーグ!」
いつも川島は肉系の昼食を頼む。
ちなみに中島はお弁当で、人見知りでもあるので、食堂にはあまり来ない。
俺らは空腹を満たすため、食堂へと向かった。
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「あ。」
そこにいたのは、、、
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「やあ、奇遇じゃないか。雑草でも食べに来たのか?ペンギン君?」
この後大島はどうなるのか、、、
次回もお楽しみに!