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手を伸ばした先は太陽でした1
「…ねえ?本当に行くの?」
「忘れ物取り行くだけなんやからビビんなよ」
「夜のこの街は、街は…!」
震える彼は、|鼓堂《こどう》に肩をゆすられあまりの衝撃で腰を抜かした。その数秒後二人の笑い声が響いていたはずなのに、存在しないもう一人まで混ざっていた。
「おー、こんばんは」
背後に佇む顔が溶けた少年でさえも、まるで紳士のように礼をしてから銃口を向ける。
「な、ほら!流生?はよ教室行かなあかんで」
「もういいよ帰る、帰りたい」
涙を溜めた瞳を見つめ笑いながら額を弾き、自信ありげに呟いた。
「お前一人じゃなんもできへんくせに」
間近にそう言われ涙を引っ込めて、次に怒りはじめる彼に鼓堂は安堵している。
「それにしても教室のこの模型らキショいな」
古くから語られている、街を彷徨う成仏できなかった人間のような異形のものが飾られていた。
「…壊したいね」
「お?ほんま?やる?」
古びて今にも壊れそうな模型にデコピンの準備を始めた鼓堂に|浅海《せんかい》が慌てふためいていると、誤って発射されたデコピンによって模型は瞬時に散っていった。
「まあ、模型ごとき壊しても意味ないけどな」
僕たち少年少女は、いつか大人になるまでにこの異形のものたちが死ぬかこちらが死ぬかを競っている。