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あなたは私の声を知らない。 (一話完結)
__さくらのはな__
「ご乗車ありがとうございます。次はー桜之花ー桜之花ー忘れ物のないようにお願いします。」
地下鉄のうるさい音に紛れてこう聞こえた。
__なぎはら かすみ__
私は二十二歳の普通なOL、凪原 香純。
今は、私が勤めている文房具会社、sketchの桜之花支社へ出勤中。
ー彼氏は、いない。
っ、悔し!
「桜之花ー桜之花ー」
あ、行かなきゃ!
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**ドン!**
私は、二十代前半ぐらいの細身の男性とぶつかった。
「きゃ!ご…ごめんなさい…。」
私はふと、彼を見た。
(あれ?カバンに耳が聞こえない人のマークがある…もしかして聞こえないのかな。)
私、手話できないよ…
あ!ジェスチャー!
これでも私、小学生の頃、ジェスチャー王って呼ばれたんだから!
私はジェスチャーでごめんなさいした。
彼は微笑んだ。
ー笑顔・・・素敵だな・・・
なーんて。早く行かなきゃ。
私は手を振り、その場を去った。
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「おはようございま〜す!」
私はオフィスに着くと、元気に挨拶した。
朝の印象は大事だからね。
「おはよう。凪原くん。今日はこの資料を頼めるかい?」
「はい!豊田部長!」
「ありがとねぇ。」
机に着くと、荷物を置き、コーヒーコーナーへコーヒーを淹れに行った。
もう一度席に行き、眠気覚ましコーヒーを飲んだ。
すると、隣から甘ったるい、ぶりっ子な声が聞こえた。
「せんぱーい♡コーヒー飲めるんですか〜?しゅご〜い♡」
「はいはい。いつも飲んでるでしょ。」
彼女は、日高 桃(ひだか もも)ちゃん。
可愛いけど憎たらしい、初めての後輩。
もう一個の隣は、裏で後輩軍団に、『くそばばあ』と呼ばれている、森 晶子(もり あきこ)先輩がいた。
「凪原。ホチキス留めと、コーヒー淹れに行ってくれる?もちろんいいよね?」
「はい。」
断ったら、怒られるんだよね。本当めんどくさい先輩。
私はコーヒーコーナーへもう一度行き、コーヒーを淹れた。
「はい。先輩。」
「ふん。」
先輩はまずい!とかおえ!とか言っていたけれど、無視無視。
さて。ホチキス留めでもしますか。一番にしないと怒られるんだよね。
カチ…カチ…
ー彼、どうなったんだろう…。
は!私、どうしちゃったんだろう。知らない人のことを考えて…。
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「先輩、ホチキス留め終わりました。」
「ふん、なにこれ。一ミリズレてるわ!本当バカな子。」
一ミリて…。バカなんだったら頼むなよ…。
次は資料を作っていた。
すると…
朝、出会った“彼”がいた。
「なんで!?」
私は思わず声を上げてしまった。
「先輩知ってるの?」
「凪原くん。知り合いなのかい?」
二人にそう尋ねられたので、こう答えた。
「今日の朝、駅のホームで会ったんです。」
「そうだったんかい。名前は月野 悠(つきの ゆう)さん。異動があったので、前田さんと入れ替わりです。そして月野くんは、ろう者ーつまり耳が聞こえないんだ。よろしくな。」
「え…あたし難聴者出会ったことない…。手話勉強しよかな?」
「私もしていい?」
私が尋ねると、「いいよー」と返ってきた。
ま、先に資料作り。
彼は私の前の席に座った。近い!嬉し!…私、なに考えてるの?
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お昼になった。月野くんを誘おっかな。
私は月野くんにご飯を食べるジェスチャーをした。
月野くんは、「はい、よろこんで。」と言わんばかりに笑顔を見せた。
よし、今日は奢るぞ!
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私のおすすめ食堂へ連れて行った。
ここ、安くて美味しいんだよな〜。
私はおばちゃんにこう言った。
「この人、異動できたの。月野くん。難聴者なんだー。」
「あれまぁ。そりゃ大変。よろしくね。で、注文は?」
おばちゃんは尋ねた。
「私はいつものハンバーグ定食で、月野くんには、おすすめでいいか。」
「はいはーい。」
私はスマホを出し、メモアプリを開いた。
ポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチポチ…
よし。
私は、月野くんに見せた。
『よろしくね。月野くんには、おすすめを頼んだよ。苦手なもの、ない?』
月野くんは最初、驚いていたけど、すぐに微笑み、メモを見せてくれた。
『ありがとう。人参以外だったらなんでも。』
人参!?可愛い♡
月野くんは察して、照れた。
おばちゃんがポツリと言った。
「お似合い。ねぇ。」
「なんか言った?」
「いいえ。」
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定食が到着した。
私は、少しでもお上品って思って欲しく、普段使わないナイフを持った。
ちょっと…難しかったけど。
月野くんには、幸い人参が入っていませんでした。…これ、メニューには、人参入ってるけど…おばちゃんありがと〜察してくれたんだ!
「ごちそうさま〜。」
「はーいありがとねー。」
月野くんはお財布を取り出そうとしていた。
私はメモに、『私がおごるよ。安いし。』と書いた。
月野くんは丁寧にお辞儀した。
お金を渡し、おばちゃんがこう言った。
「ごめんね。今日人参なかったの。ははは。値引き、するわね。」
まぢか。おばちゃんは察したわけじゃないんだ…。はは。
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オフィスに戻ると日高さんが手話の練習をしていた。
「日高さん。練習私もしますね。」
日高さんは顔にぱああと笑みを広げ、
「はい!はい!しますしますぅ!」
とバンザイしていた。
ふぇええ?
月野くんはメモを出し、こう書いた。
『少しなら教えれますよ。』
いいの!?じゃあ、『お願いします』!
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もう、六時だ。すごく長いこと仕事をせず、手話練習をしていたので少し怒られたけど、最初だから許してくれた。
ー名残…惜しい…
ご飯誘ったら迷惑だよね。昼も誘って夜も誘う…キモイじゃん。
でも、私、耐えれなかったみたい。
『ご飯行く?』
気がついたらそう書いていた。
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ー居酒屋 ホームランー
ホームランさん、とっても美味しいの。えだ豆は、塩加減最高だし、卵焼きはほろほろ・ふわふわで暖かみを感じるんだ。
『月野くんってお酒飲める?』
メモに書いた。
『うん。好きだよ。』
ーすっっっっっき…
だめだ私。もう、乙女になってしまったかもしれない。
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来週はクリスマス。私たちは駅前まで来た時に大きなクリスマスツリーの点灯式が始まった。
「みてよ」と、言わんばかりに。
『クリスマス、好き?』
月野くんに見せた。
『うん。ロマンチックでいいよね。僕、今までに彼女とかできなかったんだ。』
ーそう、だったんだ。
嬉しい、なんて言ったら迷惑だよね。気に、しない。
『凪原さんは?彼氏さん、できたことあるの?』
ぶわぁぁぁと、顔が赤くなった。
『いないけど…』
彼は朝と同じ微笑みで、こう見せた。
『僕、凪原さんのこと、好きかも。』
え…?
どこでどうしたらそうなるの?
『理由はね、優しさだよ。奢ってくれたり、手話を頑張って勉強してくれたり。そんな凪原さんに僕は恋したよ。』
こんなど直球で言われたの、人生で初めて。
私は、覚えたての手話でこう見せた。
ー私も、あなたが好きですー
あなたは、私の声を知らない。
こんにちは♪向日葵 なつねです🌻🐰🥕
今回は大人の純粋LOVEを描きました。ちょっぴり難しかったけど、感想を教えてくれたら嬉しいです♪
では👋