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    4.組分けってやり直しアリなんだ。
    
    
        4話目!いよいよホグワーツ…!
今回ちょっと長いです。
    
    
    「たまには手紙書くんだぞ。」
「何かあったらすぐフクロウをだすこと!母様との約束よ。」
父様の筋肉に締め付けられた体がギュウと音を立てた。分かってるからやめて!あばら折れる。
9と4分の3番線で抱き合う僕らにトムが口を開いた。
「大丈夫です。ノアのことはしっかりと監督して見せますので。」
「僕ら同い年だよね?」
トムの言葉を聞いた父様が名残惜しそうに僕から離れた。ごめん、寂しいよね…。
というか、今まで気づかなかったけど周りがみんな僕らを見ていた。こんな感動的な別れは珍しいの?それともただ単に父様と母様の美貌?トムも入るかな。めっちゃかわいいし。
「そろそろ行くね。」
「ああ、気を付けて!」
「オリヴァーも、行ってくるね!」
「ええ。ホグワーツ、楽しんで下さいませ。」
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三人との豪快な別れを終えた僕らは車両に乗り込んだ。
まずい。コンパートメントが埋まってる…。突っ立った状態でホグワーツまで行きたくない。僕、一応貴族だし!
うろうろ探していると一つのコンパートメントの扉が開いて肩を叩かれた。
「ノア、此方に来い。」
振り替えると、僕の幼なじみがいた。
「アブくん!」
トムが誰だと言いたげな目で僕を見る。そう言えばあったことないか。
「アブクラサス・マルフォイ。僕のちっちゃい頃からの友達だよ。貴族なんだ。」
「お前もだろう?ノア。それはさておき、君はもしかして…。」
「トム・リドルと言います。」
トムはよそ行きの笑顔を貼り付けて名乗った。
「ああ、君が…。」
アブくんは何か言いたいことがあるような感じだった。…あ、トムがマグル生まれだから?
「言いたいことがあるなら言っちゃえば?」
と僕が言うと、アブくんはこちらを見た。
「失礼だろうが言わせてもらう。彼はマグル生まれだろう?」
「まあね。」
「君ほどの人が、なぜマグル生まれなんかを…。」
「まあ良いじゃない。僕は気にしてない。遊び相手であってくれるならそれ以上もそれ以下もいらないよ。」
アブくんは少し黙ってそうかと言った。というか、こんな話してる場合じゃ無いんだよ。
「ごめんアブくん。僕らコンパートメント探してたんだ。ここ良い?」
「構わない。」
よし!席確保!
僕らが席に座ろうとすると、ノア、とアブくんが僕を呼んだ。アブくんが手で隣を叩いている。
「あ~!!そうだった…!」
トムは訳が分からないと言った顔でこちらを見ている。
「ごめん、トム。約束なんだ…。」
トムが説明しろと言った。僕が口を開こうとするとアブくんが僕を制止した。
「以前ノアと行ったゲームのご褒美だ。」
ほうとトムが笑った。
「僕がゲームで負けたから一年間弟扱いするんだって。屈辱だよ!同じ歳なのに。」
ニヤニヤとトムが笑う。
「それは良い。僕もやりたい。」
いつの間にかアブくんが出していたカードで僕らはブラックジャックをした。先に三回勝ったほうが勝利の絶対に負けられない戦いだった。
結局、僕は負けた。トムが兄と呼んでも構わないと言ったが、僕は断った。断固拒否だ。絶対に!
コンパートメントの外には、いつの間にか白熱した戦いを見に人がやって来ていた。助けて…。まだ見ぬ先輩…。
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ホグワーツへ向かう道中、僕の髪は増えた二人の兄に弄ばれていた。
「何をしているの?」
黒髪の女の子が一人、コンパートメントの扉を開けた。マジで救世主だと思った。
「ヴァルブルガせんぱい、たすけて…!」
情けない声を力を振り絞って出した。たすけて。マジ今すぐ。冗談抜きで。
ただ、残念なことに僕の願いは届かなかった。短い三つ編みをされ、すっかりかわいくなってしまった僕の頭を見て、ヴァルブルガ先輩はニヤリと口角を上げた。
「楽しそうなことをしているじゃない。」
やんぬるかな。ヴァルブルガ・ブラック参戦!
制服を着替える時間になる頃には、魔法で伸ばされた髪が完全に女の子になっていた。この場の誰よりもかわいい。というか、途中からブラック家全員参加してなかった?
「コレ、モドシテ。」
「嫌だ。」
「断る。」
僕はなんとか説得して、白く短いもとのふわふわした髪に戻してもらった。
「制服着替えないとだよ。戻って!はやくはやく!」
これ以上は何されるか分からない。早く帰ってください。本当に。
みんなしょうがないなと言いながら帰った。目は諦めていなかった。
「ふう…。疲れた…。」
そうかと言うトムは上機嫌だった。僕のこといじめるのが好きなの?
コンパートメントにコツンと靴底のの鳴る音が響く。
「アブくんは相変わらず着替えるのが早いね。」
「君が遅いだけだ。」
「そんなことないよ!…着替え終わったアブくんにお願いがあるんだけど。ネクタイしめてもらったりって…。」
「本当に子供だな。」
君も僕も子供ですが?と返すといつの間にかネクタイはきっちりと締められていた。
「革靴は履けるかい?」
アブくんが僕を煽った。
「出来ます~」
アブくんとトムの笑い声が重なった。何でこいつら打ち解けてんの?さっきあんな純血かどうかでバチバチしてたのに。共通の友達がいると早いタイプか?
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ホグワーツについてからは早かった。
校長先生の緒注意などを聞き、いよいよ組分け!正直どこでも良いよ、ぼく。父様も母様も好きなところに行っていいと言ってくれた。そんなんでいいの?一応純血貴族なのに。
「ABC順に名前が呼ばれます。呼ばれた生徒は前へ出て帽子を被って下さい。」
ABCDEF…僕とトムとアブくんの中で僕が一番最初だ。ちょっとわくわくする。
「Mr.フォークナー、少し話が…。」
振り返ると青いローブを着た先輩をつれた先生がいた。なんですかと聞くと、先輩はにこやかに話始めた。
「レイブンクロー寮の絵画、本当にありがとう御座いました!とっても素晴らしくて、談話室でいつも見とれてしまう程です。あなたがここにいると知っていてもたってもいられなくって…。組分け前にご免なさい。」
「いえいえ!謝らないで下さい。それより、あの絵画は僕のお母様の絵画ですよ。なぜ僕に?」
「フォークナー家の方とはなかなかお話できないので今しかないと思ってしまったんです。」
「なるほど。母に伝えておきます!きっと喜んでくれますよ。」
先輩はぱあっと顔を明るくした。
僕が話し込んでいるといつの間にかアブくんもトムも組分けが終わっていて、あとは僕だけだった。
「フォークナー、ノア」
名前が呼ばれた。帽子に向かって歩くとみんな僕のことを見ていた。ちょっと恥ずかしくない?
座って帽子を被せられる。うーんと考え込んだ後に帽子が
「ハッフルパフ!」
と叫んだ。
拍手が起こる。ちょっと嬉しいな~なんて考えていると、スリザリンのテーブルからブラック家の面々とアブくん、トムがこちらに向かってきていた。それはそれはお怒りだった。
帽子に。
「あり得ませんわ!もう一度、やり直して下さい。」
「帽子はもう古い。もう一度だ。」
そう抗議する彼らを尻目にハッフルパフのテーブルへ向かおうとしていると手首を捕まれた。
「待て。君はもう一度組分けをするんだ。」
それからは先生と彼らの口論だけが響いていた。最終的に先生たちが折れて、僕はもう一度行うこととなった。
マジごめんね。帽子さんと先生たち。
前回の二倍以上の時間をかけて帽子が言った。
「スリザリン。」
声量が全然違う。仕方ないとでも言いそうな感じだった。ごめん。帽子洗ってあげるから許して。
ふっと目を向ければスリザリンのテーブルが沸いていた。ヴァルブルガ先輩に手を引かれ、君のために開けていたんだと言われた席に座る。
先輩と先生の話が終わってご飯が出てくると、これ好きだったよね、これ食べれる?と先輩たちが言いながらご飯を取り分けてくれた。なにこれ、スリザリンの姫みたいになってる。
とりあえずご飯食べようと思って食器を手に取り口に入れた。
…なにこれ。クソうまい。カボチャスープかな?ホグワーツさいこー!!
「あの、Mr.フォークナー。」
声のする方を見た。そこには気弱そうな男の子がいた。
「僕のこと覚えてますか?ダイアゴン横丁で一度、助けて貰ったのですが…。」
あ、あのときの。タッパのある男らに絡まれてるのを助けた子だった。この子、スリザリンでやって行けるのかな。
「もちろんだよ。あのときは大変だったね。」
ちらりとトムを見ると誰だという顔をしていた。君、人混み苦手だからダイアゴン横丁行かないもんね。
「はい。死ぬかと思いました…。」
「だよね。ああそうだ、タメ口でいいよ。Mr.もいらない。僕らは同学年なんだから!」
彼は嬉しそうにうんと頷いた。
それを皮切りに色んな人が話しかけて来た。大概は君に会えて光栄だとかそういうのだったけど、僕は来るものは拒まないからたとえ同じフレーズばかりでも気にしなかった。
ヴァルブルガ先輩にお菓子を勧められるまでずっとそのままだった。トムは僕にほっとかれているからか少しイライラしていた。いや、少しどころじゃない。かなり。ヤバイかも。機嫌かなり悪いだろうな…。