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声を持たない歌姫と呪えない悪魔
小さな音が聞こえた
霧のようなすぐ消えそうな息の音
気がつくと自らの存在しない足はその音へと向かっていた
草をかき分け木を渡る
そんないつもしている行為をその音の為だけに急いている
少しその音が薄まった頃
元は小さな村があった所には大きな建物があった
だが、その建物は壊れかけてぼろぼろで蔦に包まれていた
そんなところから息の音が聞こえるのだろうか
もしかしたらそれはただの夢だったのではないか
そんなことも考え始めたその時また息の音がなる
息の音はその建物の隣、小さな塔
よく鎖の重なる音が響いていた、塔
鎖に包まれた人がいた場所を覗くとそこには
「…」
1人の少女がいた
---
「…女の子?」
そこにはいたのは水色と桃色の瞳を薄い白で隠した細い少女だった
「……」
少女が驚いたような顔をして軽く口を開いてもその口から言葉が出ることはなかった
そのことに驚きまさかと思い聞く
「声、でないの?」
声は聞こえていたようで少女はゆっくりと頷いた
「ここから、出たい?」
そう聞くと少女は
「……」
はくはくと口を動かす声は出ないが口の形を追うとわかる
《《ここからでたい》》
少女についている鎖を取るのは大変だろう
でも少女に希望を与えたのは今の自分だから
そう考えた自分は塔の扉を開け少女へ近づいていく
「…⁈」
近くで見た少女は本当に小さくおそらく10歳にも満たない程小さかった
そしてその少女は自分の姿を見て驚いていた
当たり前だろう、
普通黒のマントに身を隠した上猫の目元を模した黒の仮面をつけた者など、
いないだろうから
「どこまでいける」
「…」
鎖の音を鳴らしながら少女は近づいてくる
そして目の前に来た所で少女は止まった
おそらく塔の中ならどれだけでも動けるようになっているのだろう
自分は手に持っていたナイフを鎖に当てる
やはりと言うべきか鎖には傷がつかない
「…」
それに気づいたのか少女は不思議にも手を合わせて目を瞑った
少女がそのまま歌うように口を動かした
目を上げて静かな少女の歌を眺めていると
鎖が落ちる音がした
「…⁈」
急いで下を見るとそこには切れた鎖が落ちていた
先ほどまで切れなかったはずなのに
なぜ少女が歌を口ずさんだだけで変わった?
そんなことを考えながらも少女を解放していく
「…」
少女は歌ったあとはずっと笑顔だった
---
手枷と足枷を取った後、自分は疑問に思ったことを聞いた
「…なんかいるかい?お腹空いてるんじゃないかと思って」
少女は首を横に振り塔の中にある棚を指差す
そこには空いた飴が入った袋が置かれていた
これを食べていたということだろうか
でも、飴では栄養どころでもないのでは?
そう疑問を並べていると少女は歌いはじめた
「…」
まわりには何も聞こえない、でも少女はたしかに歌っている
そして歌が終わった頃、少女は飴を一つ取り出して自分の唇にあててきた
食べてみろ、ということだろうか
おそるおそるその飴を舐めた
するとその飴は森に生きる獣の味がした
「え」
「…」
自分の驚いた顔を見て少女はまるで"すごいでしょ?"とでも言うように微笑んだ
「…これは、どうなっているんだ?」
「…」
少女は少し悩むような素振りを見せてから
近くのベットを指差し座れと言っている気がした
とりあえず座ったが何かするのか、
ベットは変に硬く、何でできているのだろうかわからない
そして自分の目の前に立った少女は再び目を閉じ手を合わせ口を動かした
すると硬かったベットに体が沈む感覚がした
驚いて声が出なかった、そして少女は自分に近づいて少し口角をあげ微笑んだ
この少女は奇跡でも使えるのか
…そう思った時、一つ聞こうとしていたことを思い出した
「…なぁ、君は文字は書ける?」
その問いの答えはNO 少女は横に首を振っていた
これはまずい、本格的にそう考えたのは理由があった
ここは悪魔の森、そう言っているのを聞いたことがある
だがこの森に悪魔はいない、いるのはただ獰猛なだけの獣共
だからこそ危ない
人間には文字と言葉しか共通な言語がないのだ
それがどちらもない少女はどう生きれるというのだ
「…君、名前はある?」
「…」
せめて呼び名があればいい、そう思い問うと
少女は小さく口を微笑まし
手を動かし文字を作った
そうか、先ほどは書けるかと聞いたのだから
わかるかは聞けていなかった
少女がつくったかたちは
《《イ》》《《ア》》
「…イア?」
名前を口に出すと少女は目を細めた
そしてまた文字を形作る
《《ロ》》《《イ》》《《ア》》《《ー》》《《ジ》》《《ュ》》
イア・ロイアージュ
その名前は……
この森の元所有者の貴族の名前だった
少し口を開けていたが気がついた
名前をきいたなら返すのが礼儀だ
苗字はいらないだろう
「…自分はリャロ、よろしく、イア」
聞いたイアは手を動かした
《《み》》《《ょ》》《《う》》《《じ》》《《は》》
……きになるか
「イア、すまないが自分は一市民、苗字は持っていないんだ」
イアは少し怪しむような顔をする
だが隠さないといけない、仕方がないことだから
「…そういえばイア、君はどこからきたんだい?」
その疑問にイアは少し考え込むと指をもう壊れた建物へむける
その建物周辺をよくみてみると
そこには森の出口
少し大きな家があった
「…ここ、かい?」
イアは頷いた
その家については鳥達の声で知っていた
この森に住むものからしたら1番危険な場所
なぜならここは…
「…奴隷、売買所…」
自分は目を見開いて立ち尽くしていた
そこにあったのは今では違法な奴隷売買所
だがそのまま残っている奴隷売買所もある
そのほとんどが獣を売るものになりつつあるため
獣達は近づかないのだ
だがイアはこちらを指差した
売られたのか、攫われたのか、
自分には想像もつかなかった
イアは少し微笑んで足を進めようとする
それに焦り
細く骨の硬さが伝わるような腕を掴んでしまった
イアが少し驚いて振り返る
そして掴んでしまったことに気づき
すぐに手を引っ込める
「…」
イアが自分のマントを引っ張って手を引っ張り出す
「え」
「…」
そして手を優しく包み微笑んだ
手は皮と骨しかないような硬さだったが温かった
そしてまるで"こっち"というように手を引っ張り走っていく
その先には小さな小屋があり
小屋を守るかのような木々や花が光を反射して
イアを精霊かのように光らせる
こんなところは見たことがなかった
「…」
イアはただ微笑む、ただ口角を上げて目を細める
「ここ、どこ?」
イアはその問いに少し憐れむかのような目をして微笑んだ
そしてまた手を引いて小屋へ入る
小屋の中にはただ一つだけの机と花だけが乗っている
花はもう枯れていて色褪せている
光すらないその部屋は寂しさを感じさせた
そしてイアは手を離して小屋の奥から紙を持ってきた
そこにはイアについて書かれていた
---
イア・ロイアージュ
8 女
14579年没落ロイアージュ家末女
ロイアージュ家の歌姫
無言 文字理解あり
ロイアージュ家の家宝の花の種 所持
---
「…没落」
そこに書かれていた没落の文字
しかもその年代は約5年前でただ知らなかった
恐れていた対象はすでに亡くなっていて
もうイアしか生きていない、そうゆうことなのだろうか
歌姫、声を出せないイアをなぜ歌姫と書いてあるのか
そして
これが5年前に書かれたものなら
何故イアはまだあの姿なのか
いろいろ考えている時
イアに服を小さく引っ張られる
「…どうした?」
疑問を片隅に置いたままイアを見る
イアの手には不恰好な文字が書かれた紙があった
そこに書かれていたのは簡単なこと
"うわさのあくまにあいにきた"
悪魔、それは5年前の自分のあだ名で
ただこのマントと仮面の裏が原因でつけられた名前だった
呪うことすらできない自分をみな悪魔と呼びこの森へ追いやった
そしてこの森に悪魔は自分しかいない
イアが探している悪魔は自分なのだ
「…イア、あくまにあって、何がしたいの」
急いで別の紙を取り出し小さな尖った炭で文字を書く
"はなをさかせてほしい"
花、それは今ここには机にある枯れた花しかない
枯れた花は咲くことはない
「枯れた花は咲かないよ?」
イアはまた書いて見ればみせる
"ちがうはな かほうのはな たねはもってる"
家宝ということはさっき書かれていたロイアージュ家の家宝の花だろうか
イアはきているワンピースについているポケットに手を入れると小さな種を出した
これが家宝?そうは見えないが
そして頭の中に浮かんだことがあった
「…イア、それに歌、聞かせたことある?」
イアははっとして首を振った
そしてすぐにそれを小さな植木鉢にいれてまた手を合わせて目を閉じた
そして歌い出した
すると理解はできないことが起きた
種が花となった
その花は硬く小さな指輪の形をしていた
イアも予想外だったようで呆けている
だがその顔もすぐ戻りその指輪を手に取る
そしてそれを抱きしめるように握って目を閉じた
嬉しそうな悲しそうな顔で
外から吹く風はその現実離れした儚い精霊のようなイアの人間証明のようだった
イアはそのまま少し止まってからその指輪を指にはめ
近くにおいてあったナイフを手に取り髪に当てた
そして長すぎていた髪をナイフで切り
息を吸った
その行動に自分は呆けたままみていた
そしてイアは微笑んでまた息を吸った
「リャロ」
その口からはじめて、声が出た
「…イア?」
「うん、ありがとう、あそこからだしてくれて」
その声はまた精霊のように儚い優しげな声で
「でも、ほんとにいたんだね、あくま」
「え?」
「リャロ、私達ね、ずっとリャロをさがしてた」
意味がわからない、探してた、なぜ?
「あの種はね、リャロのおじいさんがのろって、あーなったんだ、だからみんなリャロなら解く方法を知ってる!って思っちゃったんだ」
「それでこうなった?」
「うん、まぁ見つける前に没落しちゃったからもう私しかいないけど」
そう話しているがやっぱり気になった
「………イア、どうして喋れるんだ?」
「この指輪はね、お母さんの先祖が私と同じ歌姫だったの!それで歌をいっぱいこの指輪にきかせたんだ!その歌の力でつけてる人の願いを叶えるの、だからしゃべれるようになりたい!ってしたんだ!」
イアはそう言うと自分のマントと仮面を引っ張って取った
「え」
そう言葉が出たことには体についた黒い痕と悪魔のような真っ赤な目がイアの目に映っていた
それに気づいた瞬間逃げようと思った
「まって、リャロ、そこにいて」
そう止められると服を掴まれる
諦めてそこに立つとイアは指輪を外した
そしてまた手を合わせて目を閉じる
口を開きまた静かな歌を奏でる
その歌に惹かれていたらいつのまにか黒い痕が消えていることに気づいた
「…痕が消えた」
歌が終わってまた指輪をつける
「はい、ごめんねいきなり取って」
マントを返される
「目は、変えてないけどよかった?」
「……あ、あぁ」
マントを着てまたイアをみる
このあとはイアはどうするのだろうか
自分は見つけたし声も出るようになった
「……イア、このあとどうするんだ?」
「このあと?うーん…また街に行こうかな、私、ずっと没落してから奴隷だったから、今を知りたい」
「…」
「リャロ、よかったら、くる?」
「………自分は悪魔だよ、そんなことしたら」
「?悪魔じゃないよ、天使だよ?リャロは」
「……え」
天使、そう言われて目を見開く
そんなことは初めて言われたから
否定の言葉を出そうとした時
精霊の空間を壊す音が聞こえた
ここか!そう低い声が聞こえてきた
その声をきいたイアはすぐに自分を引っ張って小屋の後ろへと隠れた
「イア」
「静かにしてねリャロ、あれに見つかっちゃダメだから」
少し静かな時間が流れ
いつのまにか低い声は聞こえなくなっていた
「よし、もういいね」
「…あれは?」
「奴隷売買所のしょくいん、また探しにきてたんだ…」
間が空いたと思っていたらイアが考えるような顔をしていた
「イア?どうしたんだ?」
「……リャロ、走れる?」
「え、走れるけど」
「じゃ、ついてきて!」
そう小屋の影から引っ張り出され手を引かれる
そのまま小屋には目もくれず森の奥へ走る
---
そこには綺麗な花畑が広がっていて
そこの中心についたときイアは手を離した
「ついた」
そう呟いて手を合わせて目を閉じた
いつも歌を歌う時と同じ動きをした
そして息を吸った
「息の根整え空へ向け、水の|音《ね》風の|音《ね》花の|音《おと》、全て整え空へ向こう」
祈りなのかわからないそんな言葉を並べる
だけどそれを歌う|少女《イア》は紛れもなく
声を持たなかった歌姫だ
手を広げ小さな口を大きく開けて風に吹かれる
その姿に花と光が加わりただ美しい
歌い終わったらしいイアはこちらへ近づいてくる
「リャロ」
「…何?」
「苗字は?」
今きくのがそれなのか
そう思って少し笑ってしまう
「?なんで笑ったの?」
「いや、ごめんね、自分はリャロ、リャロ・ローキュラス、ロイアージュ家の親戚の一つだよ」
そう言えばイアはやっぱり驚いた
まぁローキュラス家は親戚の集まりにもいってなかったから仕方ないし
「…あれ、でも、リャロって男の子…だよね?ローキュラスの子孫て…」
そこにきずいたか
まぁローキュラス家の子供いま自分しかいないし言った方がいいか
「うん、自分は女だよ」
やっぱり予想外だったのか、まぁ一人称もわかりづらいのにして髪も切って染めたし
「こんなかっこいいのに女の子だったの⁈」
「そこ⁈」
「あとだって……あの、む、むね、ないし…」
そこか
「いやほとんどない人もいるからね?それにお父さんに隠してもらった」
「え、それ全部取ったらどうなるの?」
………やっぱり気になるかぁ……
「……|Receptae《解除》」
風に包まれる感覚がして
胸あたりが重くなり髪色が変わっていく
風が止んだ頃にはイアがキラキラとした目でこちらを見ていた
「えーと…何?」
「めっちゃ綺麗…!なんで隠したの?」
「え、だって目立つし」
「……まぁ、そっかたしかに」
そんなことを話しながら一つだけ気になっていた
「そういえばさ、イア……なんでまだ小さい?」
「…これわねぇ…」
なんかあったのだろうかその考えは次の言葉で壊れた
「…ただ身長が伸びなかっただけ…」
それだけ?あのもしもいらなかったのか…
「それだけか…考えすぎだろ自分」
「え、もしかしてリャロなんかあったと思ってたの?」
「まぁ奴隷売買所いたって知れば考えるだろ…」
「すごい丁寧におせわされてたよ〜まぁ寒かったから逃げたけど」
「え、あの塔にいたのは?」
「逃げたお仕置き!」
……なんだったんだよあの空気…
そう思っているとイアがいきなり立ち上がった
「さて!リャロ、一緒に街!いこ!」
そう言いながら手をこちらに向けている
「…仕方ないな、いいよ、イア」
その小さな手を取って自分は森から離れていった
起承転結?そんなの使わないと小説じゃないって言う奴がいたなら私そいつらブッ飛ばす☆
名前、リャロ・ローキュラス
性別、女
年齢、15
体つきを変えた際の影響で目の色が変わって負っていた傷が黒い痕となった
元は薄い水色の髪と紺色の目
変わった目を隠すために好きな猫を元に仮面作ってつけてた
黒い痕を隠すために黒いマントをつけていた
悪魔の森と呼ばれた森に住んでる
名前、イア・ロイアージュ
性別、女
年齢、13
悪魔(リャロ)を探してた
声が出せなかったが家宝の指輪の祈りの効果でだせるようになった
ロイアージュ家の歌姫、
水色と桃色のグラデ目
薄い白の髪
白ワンピースをきている
初めての6000文字超え☆
文字数6224
めっちゃシリアス予定がシリアルになったよ☆感想ほしいなできればで