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生き残れるのは一人だけ~椅子取りゲームその1~
『第一回戦を始めます』
スピーカーから音が聞こえてきた。
『種目名は「椅子取りゲーム」です』
椅子取りゲーム……。
小さいころによくやったわ。
『ルール説明です。椅子を中心に一つ置いた後、音楽が流れるのでそれに合わせて椅子の周りを歩いてください。音楽が止まったら椅子に座ってください。座った人から抜けていき、最後まで残ってしまった人が負けです』
じゃあ、最後じゃなければいいのね。
なら大丈夫だと思うけど。
『一回戦を始めます。皆さん椅子の周りに円を描くように立ってください』
私たちはその言葉を聞くと椅子の周りに立った。
『よぉい、スタート!』
音楽が流れ始め、私たちは歩き出した。
一番先頭を柚希にして、石崖さん、長野さん、山竹さん、立画さん、私、神堂さんの順番だ。
前を歩くみんなの顔を見ると緊張しているようで顔がこわばっている。
ちらっと後ろの神堂さんを見ると無表情だった。
少し驚いた。
こんなデスゲームの時に無表情でいられる?
私でさえ緊張してるのに……。
そう考えていると音楽が止まった。
はっとした私は急いで走ったが間に合わなかった。
椅子に座ったのは、長野さんだった。
『長野梨沙子クリア』
とスピーカーから声がすると、長野さんはすっと立ち上がり部屋の隅へと動いた。
また、私たちは椅子の周りに並び、音楽が流れ始めると歩き出した。
私は今度こそ座れるようにと椅子から目を離さず、音楽を聴いていた。
シーンとした部屋には呼吸音と音楽だけがひびく。
しばらくすると音楽が止まった。
その途端私は走った。
椅子に滑り込むように座った。
私が座ったのだ。
『西沢川江梨子クリア』
私は死なずに済んだ。
そう思うと倒れそうになったが、踏ん張って立ち上がり部屋の隅へと動いた。
柚希を見ると青ざめて震えている。
残りのメンバーは柚希よりも足が速いから追いつけないと思っているんだろう。
そして椅子が正しい位置に直されるとまた音楽が流れ始めた。
普通に音楽を聴いていると楽しいだろうけど、こんなデスゲームの中ではちっとも楽しくない。
柚希はとぼとぼ歩いているから時々後ろを歩く石崖さんがつまずきそうになっている。
それでも柚希はスピードを速めない。
プツッ。
音楽が止まった。
柚希はパッと顔を上げて顔をして走った。
結局座ったのは立画さんだった。
柚希は絶望した顔で立ち尽くしていた。
でも、私の不安そうな顔を見ると何かを決意したようで輪に戻っていった。
思った以上に長くなりそうなので続きは次回にします。