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不正受給詐欺事件
「それはそうだけど」
「本当は、もっと早く知りたかった。君が俺の最後の作品を読んだのは誰だ。そして、お前の最後の作品が本当に正し過ぎることは知っていた。お前が犯人ならお前に問いただす価値がないな」
「解からないの?」
「俺が?」
「このまま行くと本当に誰からも追い付けない。私の目の届く範囲では追い付く価値がないのよ。あなたは私が何だって言っても信じてくれないでしょう。私が疑わせても何だって言えるはずが無い」
俺はお前が俺に協力はしない、と答える。鬼ヶ島の監視カメラの映像を俺は見逃している。この鬼面に嘘が透けて見える。
「俺はお前に協力はしない。この目で見た、この体で見た。お前が、そして俺が本当に正しいと信じているものは何だ」
鬼灯は困った、と一言呟いた。
「これは事実として私が信じている事実よ。私が嘘偽りなくそう思う証拠がある」
俺は鬼灯の目を捕えて続きを促した。
「何?」
「この人は、私のこの手の中に在る」
そう言って俺を見た。
「……そうだね」
「何て悪さをしているのか分からないけど、君はそれでも『信じる』と言うの」俺は頷いた。
「お別れを済ませて行こうか」
「お別れって、まだ何かしなくちゃいけないことがあるんじゃないの?」
「あるんだ。誰が言ったか忘れたけど、俺とお前の間に。それだけは分かってくれ。あと、俺は君を愛してる。だからこの先は絶対に離れない。俺も君だって信じてる。だけど『これ以上』俺に近付いたら離れないし絶対に離さない。俺を信じて欲しい」
そう言って、「行こう。ここから先はお前ではなく俺の話だ」
鬼灯は首を傾げた。
そしておとなしい猫娘は、自分の腕を組み、何もなかったかのような顔になった。
「そっかぁ♪」
「ちょっと、どこ行くの!?」
「あの後、少し考えたんだけれど、もし僕たちが本当に一緒にいられなかった場合、君を引き留めておくには、どうすればいのかな?」
「引き留めるって、何処へ?」
「君と一緒に居れば、きっと何かが見えてくるはずだ」
俺は思わず、言葉を失った。
そうか。やっぱり……そういうことか。そんな事、ある筈がない! 自分で言っておきながら頭がおかしくなりそうだ。
……でも、じゃあ……?
「どうして僕の言葉を信じるの? 僕は君と一緒にいられない」
「……」
「だから君は僕の話を聞いてくれればいい。君は君の考えを受け止めてくれればいい。でも、それだけでは駄目なんだ」
俺は何も答えられず、ただ言葉の刃が突き刺さるのを止められなかった。
それに鬼灯は「そう……それだけじゃ駄目だ」
そう言うと、目を合わせず、その綺麗な長い黒髪を触れ、その小さな頬を撫でた。……そうか。そういうことだったんだ。俺はその瞬間、思わず、鬼灯の胸に飛び込んだ。
そう、俺は鬼灯は鬼灯だ。……こんな状況で、こんな事、こんなのって言われ、でも俺はここに居る。違う。これは違うんだ。
だって俺は――――
「俺は……
お前だ!」
鬼灯は目を閉じたままで微笑み、「ご名答だよ。君の中の僕はもう気づいているみたいだけど、僕らは表裏一体の存在でしかないんだよ」
俺の手を取って自分の胸に持って行った。そして、心臓が脈打つ音を聞かせた そう、俺達は二匹の鬼なのだから そう言って笑ったのだ……。「お前、何者なんだ」「私は君の中に存在する影にすぎないよ。ただ、君は私の事をずっと忘れない。私の存在が消えるまで君は私を忘れる事は無い」
それはどういう意味だと問いかけたが返事はなかった 鬼灯はそのまま倒れ、床の上で動かなくなったからだ…… その時の鬼灯の顔は今まで見てきたどの笑顔より美しかった……だがその表情はとても辛く悲しげにも見えた それから一週間経ち鬼灯と会えないままだった。俺はまた一人で動き出した……まず初めに俺はあの女を探す事にした。あいつは恐らく何かを知っていると思ったからだ……俺は女を探し回った、聞き込みをした、捜査を続けたが手掛かり一つ無かった……だが俺の中で少しずつ何かが崩れ落ちていった……それは俺自身の中の何かが……俺自身という殻を破り出そうとしていたのかもしれない……そんな時ある刑事に会った。彼はある殺人事件の担当だったがとてもいい奴だった、彼は俺と同じ匂いを感じていたらしい。彼との日々は楽しい物になっていった。まるで昔の鬼灯のように思えた。彼と一緒に事件を解決していくうちに彼の正義感の強さ、真っ直ぐさそして自分の信じる道の為にどんな困難でも恐れずに前に進むその姿は俺を強くしていった。……そんなある日のことだった…….
「今日は久しぶりの外食だし!楽しみ~」
(そうだな……早く行こう)
「おぉ、やっと来たのか待ってたんぜ」
店の前には例の女の姿があった……彼女はいつもの調子で話しかけてきたが俺は何も言わず店に入った。「無視すんな!この人非人が! あんたみたいなやつのせいで……」
彼女が何か言っていたが何も聞かず食事を終えた。……会計を済ませる時に俺は言った。
「美味かったぞ」と 彼女は何故か嬉しそうな顔をしたがすぐに暗い顔になった……俺は店を出ようとしたら彼女に引き留められた 彼女は泣いていた 俺は彼女に背を向けたまま聞いた。「なんで泣く?」
泣きながら震えた声で答えてくれた。「わかんないけど なんか涙が出てきたんだよ」……そう言い残すとどこかへ走り去ってしまった。
そのあと、しばらく街をぶらついていたら誰かに声をかけられ振り向く そこに居たのはあの日、あの時、一緒にご飯を食べに行った時の刑事さんだった。
そしてその後ろにはあの日の……あの夜一緒に飯を食っていたあの刑事さんもいた。二人は真剣な面持ちで話し始めた「あなたに話があります。署までご同行願います」
そう言われた瞬間、俺は理解してしまった。……あぁやっぱり、そうか そんな事あるはずないと否定し続け、必死で逃げようとしていた自分がバカみたいだ……あぁそうだ。分かってたじゃないか俺が信じていればそれで良いんだ……そう自分に言い聞かせる。
俺は抵抗せずパトカーに乗り込む 二人が乗ってくるのを確認してドアを閉める、その後サイレンを鳴らしながら警察病院へと直行した そしてある一室に通される…… そこで待ち受けていたのはあの日、俺と一緒にメシを食いに行って、そのまま帰らぬ人となっちまった女だった 女はベッドの上に横たわり眠っていた。俺はそいつに向かって言う
「お前、本当は生きてんだろ?あの後何が起きたか話せ」
すると女がゆっくりと目を覚ました。女は何も覚えていなかったのだ。だが一つだけはっきりしている事がある……鬼灯は死んでいなかった。
女は鬼灯について何か思い出そうとしていたが何も思い出せなかった。俺は女から鬼灯の話を聞き、確信を持った、あいつは死んじゃいない。
それから数日後、事件は突然解決した 一人の男が自首してきた
「全て私がやりました。申し訳ありません」
彼は罪を素直を認めた 取り調べで彼が自白する中一つの映像が流れ始めた それを見た瞬間俺は鳥肌が立った……俺の脳裏に浮かんだのは真っ暗で光も届かない闇のような場所…… そこに立っていた一人の少女、そして少女が呟くように「……助けて」と言う その直後 男の部屋から銃声が響き渡った 男の拳銃から煙が出ており男は倒れこんだ……その手には拳銃を握っている……だがその拳銃の弾は既に抜かれていた。そして部屋の片隅にある鏡が割れていてそこには血が付いた俺の指があった それからというものその男の取調べを担当したのは鬼灯だった だが、ある日を境にして彼女は変わった……まるで人格が変わったかのように 鬼灯が部屋に入ろうとした時、「入って来るな!!」と言い、それからしばらくして彼女は机の上で手首を切ったらしく自殺を図った……それからは俺や周りの人間との接触を完全に断ったのだ……だが俺はあきらめずに彼女の世話をしていた。いつかまた昔の様に笑い合える日が来ると信じて……。しかし、そんな日はもう来ないのかもしれない。何故なら彼女は変わってしまったからだ。
あれは俺が彼女の世話をし始めて3日目の出来事だった……その日の朝はとても寒かったのを覚えてる……彼女を起こして身支度を整えた後朝食の準備に取り掛かる。そして彼女を食堂に連れていき二人並んでテーブルに着く
「おはようございます……」
「うん……今日もよろしくね。私まだ仕事があるから行かなくちゃいけないんだ。
「わかりました」
そういうとそそくさと立ち去って行った……一人になってため息をつく 俺達は一体誰の復讐をしているのだろう、誰が俺達を苦しめた?俺達は本当に正義の味方なのだろうか、そんなことを考えながら歩いていると聞き慣れた怒号に似た怒鳴り声が聞こえてきた 俺は咄 ん……!何の騒ぎだろう……!?行ってみよう!
「離してください! どうして私が逮捕されなければならないんですか!納得が行きません!」
見ると若い女が警察官らしき奴らに掴み掛かっていた
「どうしてこんなところにお前らが居る!」
俺は慌てて駆け寄った
「お前たち!何をやっている!」
「あっ、鬼灯!大丈夫か!?」「先輩!何事ですか!」
「何だ……お前ら」俺は女の手を取り、女の無事を確認する。「怪我はない?もう大丈夫だから安心しろ」そういうとその人は俺の顔を見て驚いていたが少し考えて俺達に話しかけて来た。「私はこういうものですが、貴方たちは何者です?この女性はどうしてこんなところで騒いでいるのですか?」
そういうとその人は一枚の名刺を渡してきた、名刺には「警視庁特殊資料室 特別管理資料第二課」と書いてあった……え?俺達が呆気に取られて居ると後ろから聞き覚えのある声がした「お前は……」俺はハッと振り向く、鬼灯が俺を見ている……俺の視線が鬼灯の視線と交差する、そしてお互い同時に口を開いた「鬼灯(鬼灯さん)……なのか?」
「あなたは、先輩なの……?」俺は女の腕を引いて離れ、鬼灯の方に近づく「あ、ああそうだ。俺だよ」そういうと、鬼灯が俺に抱き着いてきた、だが、次の瞬間 俺は鬼灯に殴り飛ばされた。俺と鬼火の距離が開いた「貴様!」俺は急いで
「よせ!」「離してください!」「俺達の邪魔をするな!」「鬼灯さん!」
「お前らは黙っていろ!」俺が言うと、鬼灯は俺に向かって怒鳴った。
「鬼灯さん!落ち着いてください!」
「うるさい!お前らこそ、私に付きまとうな!」
「待ってくれ!俺たちはお前を助けたくて!」
「私はお前たちに何の恩もない!」
「鬼灯!俺を信じてくれ!俺はお前を助けたいんだ!それだけなんだ!お願いだ!話を聞いてくれ!俺はお前を助けたいんだ!俺は!」
「お前は……私を助けるだと……ふざけるな!私の人生をめちゃくちゃにしておいて!私はもう!私は……私は!もう、あんな思いをするのは嫌なんだ……私は……」
「お、おい!待てってば!鬼灯!鬼灯ーっ!!!」
「……」
「……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……夢……か」
「どうしたの?」
「うわわわわわわ」
「ど、どうしたの?」
そう言って布団の中に入って来た。
俺は起き上がって深呼吸をして気持ちを落ち着ける……そう、今日から一緒に暮らす事になったのだ。そう言えば今朝見た夢のことを思い出す。確か鬼火の過去の夢だったな。
「ちょっと、顔洗ってくるわ。先に食べといていいぞ」
「わかった。あ、そういえばさっき、お客さんが来たんだよ。お隣さんの人が。お弁当届けに来たってさ」
「そうか」そう言うとお弁当を受け取り、鞄に詰め込んだ。
「今日はどこに行くの?」「とりあえず駅だな」
「じゃあ一緒に行こう」二人で一緒に家をでた。今日は良い天気だ。風が冷たいけど心地よい。そう思えた。俺は鬼火と並んで歩く、
「あのさ……」
「ん?どうかしたのか?」
「ううん、何でもない……」鬼火が俺の袖をギュッと握ってきた
「何か不安なことでもあるのか?」
「ん、ごめん……何でもない……」そう言うと下を向いて歩き始めた。
「何かあるなら相談に乗るぜ?」「……ほんと?」「ああ」俺は鬼火の頭を撫でながら言った そうすると嬉しそうにした……そのあと、手を繋いで目的地まで歩いた
「ここか……」「何か感じますか?」
「微かにだが鬼火を感じる」俺は扉を開けた……
「あぁ……先輩。やっと会えた……嬉しいなぁ……でも、もう終わりかな……あぁ……会いたかった……本当に……ごめんなさい」
「……お前が……やったんだろ……?なんで俺に会いたいんだ?俺はここに居ても……誰も喜んじゃくれない。俺が死んで悲しむ奴なんて居ないしな。むしろ、喜ぶんじゃないか?あいつは人殺しだ!とか言われるんだろうな。……あぁ、わかってる。俺だって馬鹿じゃないんだ。全部分かってたんだ。俺が死ねばみんな幸せになるんだ。……だから俺も覚悟を決めた。」
鬼灯は俺に向けて拳銃を向けていた。俺はそれを見ても動揺はしなかった。
その時の鬼灯の顔はとても苦しそうな表情をしていた。泣き出しそうな顔をしていた。だが、鬼灯が引き金を引いたその瞬間 俺は目を閉じた。……パン だが痛みは無かった。ゆっくりと目を開ける。すると目の前には誰か立っていた。俺は恐る恐る前を見た。
そこには一人の女の子が立っていた。その子は俺に微笑みかけた後すぐに消えてしまった。すると急に強い光が放たれた。俺の視界が真っ白になった。
俺は気を失った……
次に目を覚ました時、そこには一人の男が座っていた。男は鬼灯に手錠をかけようとしていた。だが俺は咄ん!男を突き飛ばした そして男の襟首を掴んで叫んだ
「何してんだてめぇ! 鬼灯を離しやがれ!」男は一瞬怯んだが鬼灯を盾にし俺の動きを封じようとした。だが俺は男の腹を殴った。だが男は諦めなかった。今度は拳銃を取り出そうとしたが俺は男の拳銃を奪い取り、
「鬼灯!逃げるぞ!早く立て!逃げないとあいつが……
」
だが俺の言葉を聞いた途端に 鬼灯の目から涙が溢れ出した そして俺の首に両手を伸ばして俺の身体を引き寄せる
「鬼灯……!? な、何をして……!」
俺は鬼灯の行動に驚きつつも抵抗しようとしたが 力が強すぎて俺では敵わなかった。
俺はそのまま唇を奪われ、舌を入れられ絡まれていく……は?どういう事だ……?何故だ……?俺は困惑しつつも、鬼灯のされるがままになっていた。
だが俺はここで思いっきり突き飛ばしてやろうとしたが、その前に鬼灯が俺から離れた。
「鬼灯……?」
「ごめんね……先輩……でもこうするしか無かったの……ごめんなさい」
「おい、何やってんだよ……」俺は思わず声をかける。そして再び近づいてくる。俺は必死で避けようとする。がしかし避けられずにまた捕まってしまった。「鬼灯……?」「先輩……私はもう、限界です……」「は?何がだよ……」「私はもう耐えられない……私は……先輩が……好きなんです……」
「え?え?え?ちょっ、待てよ。いきなり何言ってんだ?お前……」
「私は……ずっと前から貴方の事が好きでした……でも、貴方はいつも他の女性と一緒に居る……私が入る隙なんか無いんですよ……」「いや、そんなことは無いと思うんだけどな……」「それに、私達の間には何も生まれません……何もね……」「いや、それは違うぞ!俺達はきっと分かり合えるはずだ!」「無理ですよ……私達は相容れないんです……私は……先輩が欲しい……先輩を私のものにしたい……先輩が私以外の女と話すだけで胸が張り裂けそうになる……先輩が私以外を見るだけでも許せない……先輩は私だけを見ていればいいんです。」そう言うと俺の手を掴み自分の胸に触らせた。「や、やめろ!やめるんだ!」俺が慌てて手を離そうとすると彼女は強く握りしめてきた「お願いです先輩……私のものになってください。私を愛してください。」「ふざけんな!俺はお前のものにはならない!」俺が強く否定すると、彼女は涙を流した。「どうしてですか?どうしてそんな事を言うのですか?私達は両想いのはずです……私は貴方の事が大好きなのに……どうしてですか?どうして……どうして……どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」
「俺は、鬼灯の事は嫌いじゃねぇけど、好きじゃねぇ。恋愛対象として見れねぇよ。俺は、誰とも付き合うつもりはねぇし、お前と付き合う事も出来ねえ。悪いな」
「……そっかぁ。そうだよね……私はやっぱり、迷惑だったのかなぁ……でもね、私も諦めないから、絶対先輩を手に入れる……待っててください。先輩の気持ちが私に向くように頑張るので待っててください」
そう言うとその女はどこかへ去って行った。
その後、俺たちは捜査を続けていった。そんなある日のことだ 俺たちはある資料を見つけた。その日、俺達は聞き込みをしている途中、ある家を訪れたのだが そこに住んでいる夫婦は子供が行方不明になっているらしく 必死に探しまわっているようだった。俺達は子供の捜索に協力している。俺たちはその家に上がり込んで家の中を探ってみる。すると二階の奥の部屋で妙な音が聞こえてくる ギシッ、ギシッ、 その音はまるで縄で縛られて動けない人間が必死に抜け出そうともがく様な、あるいは猿ぐつわを噛まされて苦しんでいる人間の声の様なものだった 俺たちは急いでそこへ向かった 部屋に入ると同時に女の叫び声が聞こえた 女は部屋の隅で何かを押さえつける様にしながらガタガタと震えていた。俺たちが駆け寄ると怯えた様子の女は俺たちを見上げた 俺たちは事情を聞き出そうとした。だが、俺が近づくと突然暴れ始めた。俺の体を掴むと壁に叩きつけようとしてきた だが俺は、女の腕を掴んで押さえつけた。俺は彼女の名前を叫んだ。すると彼女はピタリと動きを止め、次第におとなしくなっていった。だが、俺が彼女の名前を呼ぶ度にビクビクとしていた そして彼女はポツリポツリと喋り始めた その話によると、どうやら子供を攫ったのはこの家に住んでいた両親らしい。この両親は子宝に恵まれず子供を育てるのを諦めていた。だが、どうしても欲しかったからか闇オークションという所に頼みに行ったらしい。そこで売られていた子供達の中から一人を養子にしたのだという。
その子は生まれてすぐから両親の愛を受けられず育った、愛情が枯渇した状態で育ったため性格が歪んだ、それがこの事件の始まりだという。誘拐された子供は、養子に出された先で出会った義理の家族から虐待を受けた。それに耐えかねて逃げ出した所を両親が捕まえて地下牢に監禁したというのだ。
その話を聞いた後、俺は女が指さす方向に向かって歩き出す。そこには鍵がかかった鉄格子がありその中には小さな女の子がいた。どうやら意識を失っているようだ
「大丈夫か?」俺は女の子を抱き上げる「あぁ……良かった……本当に……無事でよかった……」そう呟いた後、泣き崩れた 俺達は女の子を連れてその場を離れた 女の子は病院で手当を受けて、それから警察に連れて行って引き取ってもらった。その女の子はこれから幸せに暮らすことになるだろう。
「先輩……」「ん?どうかしたか?」「……先輩は……私が助ける……」「……あぁ、ありがとうな。」
「ううん……気にしないで……だって私は先輩のこと好きだもん……」
そう言って微笑みかけてきた
「俺も、鬼火が居てくれて嬉しいよ。」「……うん。先輩、大好き……」
「俺、お前のそういうところ……大っ嫌いだよ」「え?え?え?え?え?え?なんで……先輩、なんで……そんなこと言うの?ねぇ、どうして?先輩?先輩?ねぇ……教えてよ……私が悪いなら直すから、ねぇ……」
「お前は何も悪く無いよ。ただ……俺は……弱い人間だから……」
俺は鬼火を突き飛ばして言った
「もう俺に関わるな……二度と俺の前に現れるな……」
「え……なんで、なんで……先輩……行かないで……」
俺は走り去る。
しばらく走っていると後ろから足音が聞こえる。俺は振り向き拳銃を構えた。すると、鬼火の顔が目に飛び込んできた。
「……先輩……なんで、逃げたの?」
「うるせぇ!ついて来るんじゃねえ!早く帰れ!」
「先輩が帰らないのなら、私も出ていきます。」「……そうか。じゃあお別れだな」
俺は扉に手をかけた。すると鬼火の泣き叫ぶ声が響いた
「嫌だ!離れたくない!先輩とずっと一緒に居たい!」
俺は思わず振り返ってしまう。鬼火は泣いていた
「先輩!先輩!」
「鬼灯……ごめん……」
俺は泣きじゃくる鬼灯を置いて家を出た。俺は走った。どこに行くかも分からずに ただひたすら走っていた。
「クソッ!」
俺は地面に座り込んだ。その時ふと思い出したことがある。俺はある人物に会いに来ていた。
だが俺は会いたくはなかった。なぜなら俺の大切な仲間を殺しかけた奴の上司だったからだ。だが、会わないわけにはいかないのが現状だった
「……失礼します」俺は部屋にお邪魔する。
部屋の中には一人の女性が座っていた。「こんにちは」と、笑顔を浮かべて挨拶をしてくる「あんたがここの責任者だな」
「ええ、私がここのトップの佐藤です」そう名乗ると女は立ち上がり、
「それで、用件は何でしょうか?」「……今回の事件についての話があるんだが」
俺は事件のことを話しはじめた。だが相手は冷静に俺の話を聞いていた。そして話し終わると「話はわかりました。私達としては貴方の事を信じることは出来ないのが現実です」
「……そうかい。そりゃ残念だ」俺はそう言い残してその家を後にしようとした。すると、「ちょっと待って下さい。私、まだ貴方の名前を知らないのですが、貴方のお名前は?」
「……俺の名前は霧咲零だ。」「……そうですか。では、零さんとお呼びしてもよろしいですか?」
「ああ、構わない」俺はそう言うとその場を去った。
俺達が捜査しているうちに一つの噂が広まっていった。どうやら最近この街のどこかにある屋敷の地下室に人が閉じ込められているという事があったらしい。
「これは、俺達にとっては朗報かもしれないな」
「ええ、そうですね」
俺達は早速調査に向かうことにした。俺達はまず情報屋を当たることにし街に出て情報を集めた。すると、
「おい聞いたかよ!あの例の屋敷の事でなんか分かったらしいぜ!」
「え!?マジで!?俺も行く!」「俺も行こうかな……」
どうやら何かわかったみたいだった。だが俺たちはその情報が気になり、その男達に付いていった。
「着いたぞ……此処がその館だ……なぁ、ほんとに中に居るのかよ……?」「あぁ、間違いない!ほら!あの窓から光が差し込んでいる!」「確かに……誰かが中にいる証拠なのか……?い、一旦戻って確認しようぜ!」
「いや、俺も賛成だ。なんかヤバい気がする」「俺も……流石にこの空気はなぁ……それになんか臭いぞ?何か腐ってるような感じが……」「うわっ本当だ……臭すぎて近寄れねぇよ」
「でも、もしこれが殺人事件だとしたら、このまま放っておくのはまずいと思う」
俺はみんなを説得してその館の扉を開く その瞬間俺は背筋が凍ったような感覚を覚えた。理由は簡単だ。俺達はその館で死体を見つけてしまったからだ 俺達は急いでその場を離れる事にした。
「おい、これ、もしかしたらやべーんじゃねぇか?」「そうだな……どうするか……」「でも……一応警察に報告したほうがいいんじゃねぇか?」
俺達はとりあえず通報だけしておく事にした。
その後、俺達は捜査を再開した。
「うわ、凄いな……この量」
俺達の目の前に大量の資料が置いてある そこには行方不明になっている子供達の情報が書かれていた その数は軽く20人以上はいるようだ
「これは大変そうですね」
「まあ、地道にやるしかないよな」
「はい、頑張ってくださいね。先輩」「おう!任せろ!」
それから数時間後、俺達は全ての資料に目を通した。その結果ほとんどの子供達は保護され、後は一部の子供達だけだ
「よし、次はその子たちを探さないとな」
俺は地図を見て場所を確認した後、
「それじゃ、行ってきます」「あぁ、頼む。俺は他の人達と情報を探ってみる」
そう言うと俺は部屋から出て行った 俺は今街の人と一緒に聞き込みをしている。だが有力な情報は無い
「すみません。その少年を見たという方はいますか?髪の色は茶色で、年齢は15歳ぐらいでした。身長は150cmほどです。見かけませんでしたか?」「ん〜そう言われてもねぇ……」「そうですか。ありがとうございます」
ダメだ……誰も知らないって……仕方がない……また別の場所を探すか……
そう思った俺は歩き始めた。
「先輩……」「どうした鬼火」「……先輩は、その子のことが好き?」「……」俺は答えなかった。
「……そう……なら……私にもチャンスはある……」そう呟くと鬼火は俺の服を引っ張る 俺は振り向いた。
「……何?」
「先輩、今日私の家に来て欲しい……」
「別に良いけど……なんで急に……?」
「先輩、今日私の家に泊まってよ……」「は?え?」
「先輩、私と一緒の部屋で寝て……私、先輩の事、大好き……」
「え?あ、いや……」「先輩……」
鬼火は俺の腕に抱きついてくる 俺はその手を振り払う
「触るな……」「え……」
「お前と関わるとろくなことが無いんだよ……お前は……」
「なんで……」そう呟いた後俺に掴みかかってくるがすぐに離す そして泣きながら走って行ってしまった これでよかったんだ。俺は弱い人間だから守ることなんてできないんだから……。だから俺は、鬼灯を殺すことにした。
「さよなら……鬼火……」俺はそう呟いてその場を後にした。
私は、先輩に言われた通りずっと先輩のことを待っていた。いつ帰ってくるかも分からないのでただじっと待ち続けた。それから1時間ほど経過した頃だろうか ガチャリと音が聞こえた。
「あ、おかえりなさい」私は先輩を出迎えた 先輩は驚いた様子で固まっていた。それもそのはずだ。
私は先輩の家の前でずっと帰りを待っていたのだから。「なんでここに居た?どうして俺の家を知っている?」「え?だって先輩は私の事嫌いになったんですよね?じゃあお家に帰るしか無いじゃないですか」そう言って私は笑った「ふざけんじゃねぇ!」そう言って殴りかかってきたが、それをひょいと避けると地面に倒れ込む。先輩は地面に頭をぶつけて痛そうにしていた。「いった……」「なんで殴ろうとするんですか?嫌いなのに」そう言って先輩を見下すと、悔しそうな顔をする。
「そんなに、私と一緒に居たくないなら……もういいです。私、一人で暮らしますから。」
私はそう言って玄関のドアを開ける。そして外に出ると振り向いて言った。
「もう二度と会いません。さようなら。」
先輩は何か叫んでいたが無視してそのまま走り出した。そして自分の部屋に戻ると鍵をかけてベットの上に横になる。涙が出てきた。「……寂しい……一人はいやだよぉ……助けて……先輩……」
先輩が家を出て行ってから数日後、ニュースが流れた。
どうやら連続殺人があったらしくこの街も危ないみたいだ。警察によると、まだ見つかっていない人もいるみたいだし。怖いなぁ。でも今は大丈夫だと思う。何故かと言うとその事件の犯人は、私が殺したからだ。正確には違うんだけど。でも、結果的に言えばそうだった。
私は、自分が捕まるのは嫌だったので適当な人を攫ってきて殺しては捨てるという行為をずっと繰り返してきた。最初は怖かったけれど、だんだんと楽しくなってきた。でもやっぱりバレるのは嫌だった。なので、先輩の家の前に置いていたのも実は私なのだ。私は先輩の事を愛しているのに、嫌われたくはない。どうしたら良いのかわからなくて困っていた。
そんなある日、一人の女の子に出会った。名前は、鬼灯ちゃんというらしい。その子と仲良くなったのはつい最近で、いつも公園のベンチに座ってボーッとしているので、話しかけてみた。そしたら、「私と友達になってくれますか?」と聞いてくるので、もちろんと返事をした。そこから、一緒に遊びに行くようになり次第に、好きになっていた。先輩に内緒にしてこっそり会っているうちに段々と好きになっていった。そして、私はある計画を実行に移したのだ。それは……監禁するというものだった。そして、ついに実行に移せた時はとても嬉しかった。
まず最初にやったことは、睡眠薬を飲ませること。この睡眠薬は少しの量でも効果が出るように調整してある。その次にロープなどで拘束し逃げられないようにする準備をする。この辺りは意外にも簡単にできたのだけど問題はここからだ いざ実行に移す時にどうしても抵抗してしまうのである意味面倒だったがなんとか成功させることが出来た。あとは、地下室に閉じ込めるだけだった。地下室は広く作り、ベッドなども置いておいた。その部屋に閉じこもってもらった。食料などは最低限置いた。水に関しては近くの川まで水を汲みに行った。
鬼火さんには申し訳ないが我慢してもらうしかなかった。だが問題が起きた。ある日突然、地下室で物音がした。何かと思い見に行ってみるとそこには縛られたまま暴れる鬼火さんの姿があった。「な、なんでこんなところに……?」「だ、誰かいるの!?」そう聞かれたので「いますよ。あなたの目の前に」と返すと
「な、なんであなたが……」と困惑しているようだった。だが俺の質問に答えてくれた
「貴方に聞きたいことがありまして」
「私に……?」「はい、貴女が今まで殺して来た子供たちは皆どこに住んでいるのか分かりますか?」
「わ、わかりますけど……何するつもりなの……」
「……復讐します。」俺ははっきりとそういった。
「なっ……!そんなの駄目!絶対だめ!」「……なぜですか?まさか貴女のせいだとでも言うつもりですか?」
「そうよ……私のせいで……あの子は死んだの……」
そう言いながら彼女は泣いていた。
「でも、あの子がいなくなったら、先輩も悲しんでくれるはず……それで、私は幸せになれてたのに……それなのに、邪魔するなんて……!」「そうかもしれませんね」俺は肯定した。確かにその通りだと思ったからだ。「でも、俺達は許せないんですよ。人を殺しておいてのうのうとしてる奴が」
「でも、あの子が死んだら、先輩はきっと悲しむと思う……だから、やめて……」
「……残念ですが、止める気はありません。では、失礼しました」
そう言って帰ろうとしたその時、腕を掴まれた。「待って下さい……」鬼火は震えながら言ってきたが、俺は振り払った
「先輩が傷つくところなんて見たくありません……お願いです……止めてください……」俺は無表情のまま答えた。「お断りさせていただきます。」俺はそう言ってその場を去った。
「……ごめんなさい……先輩……」そう呟いた後、泣き崩れてしまった。
俺達は今ある館の前にいる。この館のどこかに行方不明になっている子供達がいるという情報が入った。
「ここか……」「なんか……不気味ですね……」「そうだな……」俺達は慎重に中へと入っていった すると目の前に扉が現れた
「これか……」俺は扉を開くと中には複数の子供達がいた
「おい!お前たち!大丈夫か!俺の声が聞こえるか!」そう叫ぶと
「……誰?」と男の子の声が聞こえた 「俺達は警察だ!今からこの館から出してやるから安心しろ!」
「ほんとに……?」そう言われて俺は
「あぁ、本当だ」と答えた
「じゃあ、早く出してくれ!もう此処に居るのは飽きたんだ!」
「あぁ、わかってる。だがその前にいくつか確認したいことがある」
「わかった」そう言うとみんなは俺の話を聞いてくれた
「まず、君たちはいつからここにいる?」
「確か……俺が9歳ぐらいの時からかな……」
「そうなのか?」
「うん」
「ありがとう。次は……君はいつからここに?」
「私は、3年前くらいからここにいます」
「そうか……ありがとう」
これで分かった事は、ここに捕まっている子供は全員約3年前からここにいるということ つまり、失踪届が出ている子供が犯人だということが証明された。後はどうやって捕まえるかを考えるだけだ。まあ、考えなくてもいいのだが。
「さて、行くか」
「はい」
そう言って俺達が行こうとした時、後ろから声をかけられた
「ちょっと、待ちなさいよ」
俺達を呼び止めたのは……鬼火だった。
「何ですか?貴女に用はありませんが」
「……なんで、その子を連れていこうとするの?その子は……」
「鬼灯は俺の恋人ですが何か?」
「え?……うそ……」
「嘘ではありません。証拠ならありますよ」
そう言うと鬼火は絶望したような顔をしていた。そして、その場にへたり込んでしまった。
「なんで……私、頑張ったのに……なんで……」
鬼火はずっと同じことをブツブツと呟いていた。「鬼灯、行ってくる」
「はい、先輩」
俺と鬼灯は手を繋ぐとその場を後にした。
「ねえ、先輩」「ん?なんだ?」「好きです」
「え?」「私は、先輩の事が好きです」
「そっか、俺も好きだぞ」
「え?そうなんですか?てっきり嫌われてると思ってました」
「嫌いだったら助けに行かないだろ」
「それもそうですね」
「ああ」
「そういえば、先輩は私と付き合ってるんですよね?」
「おう」
「私以外に好きな人は居ないんですよね?」
「当たり前だ」
「ふーん……そうですか」
そう言った後鬼火はニヤリと笑った
「先輩、私と賭けをしませんか?」
「賭け?」
「はい、勝ったら私の願いを一つ叶えてもらう。負けたら何でも言うことを聞きます」
「なるほど……いいだろう。受けて立つ」
「やった♪じゃあ、始めましょう。」
「何をすれば良い?」
「まずはお互いの事を好きになってもらいます」
「は?」
「これからしばらくの間、私は先輩のことを心の底から愛しています。先輩も私を愛して下さい。そして、私だけを愛して下さい。これが最初のルールです。簡単でしょう?」
「……はぁ……別に構わないが……」
「そうですか、では始めます。先輩、まずはキスをしてください。舌を入れてディープなやつを。」
俺は言われた通りにした。鬼火はとても可愛らしくてとても魅力的だった。
しばらく経った頃、鬼火は満足したようで、俺から離れた。
「これで、私達の愛は深まりました。次に行きましょう」
それから、鬼火との生活が始まった。
「先輩、今日は一緒に寝ませんか?」
「え?」
「ほら、早く来てください」
「わ、わかったよ……」
「よし、ちゃんと来たね。偉いよ〜」
「そ、そうか?」
「うん!ちゃんと約束守ってくれて嬉しいよ!」
「そ、それは良かった……」
「私と一緒にいて楽しい?」
「もちろんだ」
「ふ〜ん……私は先輩のこと大好きだよ」
「……それは……恋愛的な意味でか?」
「そうだよ。でも、今は言わない。また今度ね」
「そうか……」
そんな会話をしながら、捜査を続けている。
すると突然、鬼火の様子がおかしくなった。
「おい!どうした!」
「…………」
「おい!返事をしろ!」
「……な……で……」
「おい!しっかりしろ!」
「なんで……どうして……私を疑うの……?私はやってないのに……ねぇ……私を信じてよ……」
「落ち着け!とりあえず一旦外に出よう!」
「嫌だ……此処に居たい……お願い……一人にしないで……」
「大丈夫だ!俺が側にいる!」
「ほんとに……?」
「あぁ、本当だ」
「……わかった」
そう言って俺達は外へ出た。外に出るなり、鬼火は倒れてしまった。急いで家に連れて帰る。幸いにも近くに病院があったのでそこに連れて行くことにした。救急車を呼ぼうとしたが、警察が使うのはおかしいと思い自分で車を運転することにした。なんとか病院に着くと、受付に行って鬼火が入院している部屋を聞いた。教えてもらった部屋に着きドアを開けるとそこには鬼火がベッドの上にいた。
「あ、先輩……」
「大丈夫か?」
「はい……でも、まだ少し疲れが残ってるみたいです……」
「そうか……無理はするなよ?」
「はい……」
俺達はとある屋敷の前にいる。この中に失踪事件の犯人がいるはずだ。
「ここですか……」
「あぁ、行くぞ」
「はい」
俺達は中に入っていった。するとそこには子供が立っていた。
「誰?」と聞かれたので「警察だ。今から君を解放してあげるから安心してくれ。」と言った。するとその子は首を傾げていた。俺は不思議に思いその子に話しかけてみた。
「あの……どうかしたのか?」
「……警察ってなに?」そう言われて俺は驚いた。警察を知らないなんて……
「警察は、悪い人を逮捕したり、困っている人を助ける人の事だ。」
「……そう……じゃあ、あなた達は僕を助けてくれるの?」
「あぁ、そのつもりだ。」
「じゃあ、早くここから出して!」
「あぁ、わかってる。でもその前にいくつか確認したいことがある。」
「確認したいこと?」
「あぁ、君はいつからここにいる?」
「えっと……5年くらい前かな……」
「そうか……ありがとう。次は……君はいつからここにいる?」
「僕は……3年前くらいかな……」
その言葉を聞いて鬼火が反応したが、無視をした。
「そうか……ありがとう。次は……君はいつからここにいる?」
「えっと……1年くらい前からかな……」
「ありがとう」
「え?それだけ?もっと詳しく聞かないの?」と言われたので、俺は「これ以上聞く必要はない」と答えた。すると、その子は困惑していた。
「え?なんで?」
「理由は2つある。まず一つ目、君の話を聞く限り嘘はついていないということが分かったからだ。二つ目に、俺達は時間がない。だから、無駄な質問はしたくない。」
「そっか……ありがとう」
そう言ってその子は俺達に付いてきた。
俺達は地下室へとやってきた。中に入ると、一人の女の子が椅子に座っていた。その子に話しかけると、その子はこちらを向いて答えてくれた。
「誰ですか?」
「警察だ。今から君を解放するから安心してくれ。」そう言うと、その子は首を傾げた。
「解放って……どういうことですか?」
「君が誘拐された子供達を監禁していることは分かっているんだ。」
「……そうですか……バレちゃいましたか……」
「あぁ、もう諦めてくれ。」
「……分かりました。じゃあ、最後に聞いてもいいですか?」
「あぁ、なんでも言ってくれ。」
「貴方の名前は何と言うんですか?」
「俺か?俺の名は……」
「……先輩?先輩!?」
「え?あ、あぁ、どうした?」
「いえ、急にボーッとしてたから心配になって……」
「あ、あぁ、すまない……考え事をしていて……」
「そうですか……気をつけて下さいね」
「分かった……」
「先輩?顔色が悪いですよ?本当に大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、大丈夫だ……」
「そう……ならいいですけど……」
俺と鬼火は館の中に入っていった。
しばらく歩いていると、目の前に扉が現れた。
「先輩、これじゃないでしょうか?」
そう言われたので俺は扉を開けた。すると中には子供が数人居た。
その子に話しかけてみることにした。
しかしその子は怯えていて、俺達が警察だと伝えるとすぐに信じてくれた。話を聞いていたところ、ここに閉じ込められているのはみんな小学生の男の子達で親が居ないようだ。俺はその子に親の事を聞いてみると 一人っ子で両親共に海外で働いているため連絡が取れないという子がいた。その子に親が帰ってくるまで待つように言うと、泣いてしまった。仕方ないので、一旦家に帰すことにした。その子を家に返してから俺達はもう一度館内に入る。そして、二階へと向かった。そして、しばらく歩き回りようやく目的の部屋を見つけることが出来た。
中に入り、俺達は子供を見つけようとしたが、居たのは一人の女性だった。その女性はなぜか部屋の真ん中で倒れており、意識が無かった。俺達は慌てて女性の側に近寄った。女性はとても苦しそうだった。とりあえず救急に連絡しようとしたが、電話が繋がらない。そこで仕方なく救急車を呼んだ。それからしばらくして、救急車が来た。救急車に乗せられる直前に女性が目を覚ました。目が合うと、突然抱きつかれた。
そして、こう言われた。
助けて、苦しいよ……と。
その後病院で検査を受けたが特に異常は見られなかった。ただ、ストレスが原因じゃないかと言われ、薬を処方してもらって帰宅する事にした。しかし、何故か女性はまだ俺の側を離れようとしなかった。なので、とりあえず事情聴取のため、警察署に来てもらうことにした。
〜〜移動中〜〜 パトカーに乗りながら俺達は事件についての打ち合わせをする。まず、鬼火には鬼灯についての説明をしてもらう事にした。そして俺が犯人を捕まえに行くと。そして鬼火の能力についても説明した。
そうこうしてるうちに、目的地に到着した。そして、車から降りようとしたら腕を掴まれた。どうやらこの人は鬼火から離れないつもりらしい。仕方ないので一緒に降りる。そのまま警察署に入ろうとすると止められてしまった。当然といえば当然だろう。鬼火と一緒に事情を説明するとなんとか通して貰えた。そして俺と鬼火はそれぞれ別々の部屋に案内され、鬼火は事情聴取を受けた。俺は一人で取調室のような場所に連れてこられた。するとそこには、一人の男が座っていた。
どうやらこの人が取り調べ担当の警察官らしい。俺も向かい側の席につくと、早速話を始めた。最初は世間話から入っていき、少しずつ事件のことについて話を進めていく。そうしていくうちにある共通点を見つけた。被害者は全員、何らかのいじめに遭っていたというのだ。そこで、被害者の写真を見せて確認をとった。やはり、どれも同一人物だった。俺は確信した。この人が犯人だと。
俺はすぐにその人に、犯行の動機を聞いた。するとその男は突然狂いだした。そして俺の方をじっと見つめてきた。俺の顔を見透かすような目で。俺は全て見抜かれている気がした。
どうしようかと考えていると、男の方から話しかけてきた。
お前、嘘ついてるだろ?と。俺は動揺を隠せなかった。すると男は続けて言った。嘘をついている人間特有の顔をしていると。さらに続けて、俺は問い詰めた。すると男は観念したようで、本当のことを話してくれた。自分は、昔ある少女から虐められていたこと、それがトラウマになっているということ。
そして、その犯人であると思われる人物が鬼火の可能性があると伝えた。俺は驚いて、鬼火に電話をした。すると鬼火は出ない。
「もしもし、俺だ。」
「あ、せ、先輩……」
「どうした?何かあったのか?」
「実は……さっき……」
そう言って鬼火は今までにあった出来事を話し始めた。
「なるほど……そうか……大変だったな……」
「先輩、あの……」
「なんだ?」
「その……私……」
「……?」
「……いや、何でもありません……」
「そうか……」
「あの……」
「ん?」
「やっぱりなんでも無いです……」
「あ、そう……」
「…………」
そんな感じで捜査は進んでいった。そして俺達はとうとう最後の容疑者の家の前にたどり着いた。その家の前には大勢の野次馬が集っている。警察が来ているからなのか、野次馬は散ろうとしない。このまま突入するのは難しいと思い俺は鬼火に相談する。
「どうする?」
「強行突破しか無いんじゃないですか?」
「……そうだな」
俺達は門を乗り越えて中に入ろうとした。すると、一人の警官に呼び止められた。
「おい!何やってんだ!」
「え?ちょっと中に用事が……」
「中に?なんの用事があるってんだよ」
「それは……えっと……」
「怪しいな……よし、署まで来てもらおう」
「え?ちょっ、待ってくださいよ」
「うるさい!早くしろ!」
「嫌だ!」
「抵抗するか……公務執行妨害だ!」
そう言って警官は警棒を取り出した。
「え?」
「大人しく捕まれ!」
「うわぁ!」
「えいっ!」
そう言って鬼火は俺を抱えてジャンプした。
「え?」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、助かった」
「よかった……」
「って、逃げられてんじゃねぇか!」
「え?」
「え?」
「あ、ほんとだ……」
「まぁ、いいか……」
俺達は館の前まで来た。するとそこには一人の女が立っていた。
俺達は女の人に声をかける。
すると、俺達の方に近づいてきた。そしていきなり俺の胸ぐらを掴んできた。
何事かと思っていると、突然俺に抱きついてきて、こう言ってきた。やっと会えましたね……と。
訳が分からなかった俺は質問することにした。
一体どういうことか教えて欲しいと言うと彼女はこう答えた。
私は貴方の恋人ですよ?と。
俺は全く理解できなかったが、彼女の話を遮り鬼火に事情を説明してもらった。そうして、なんとか状況を整理出来た。どうやら彼女曰く、俺とは小さい頃から付き合っていたが親の仕事の都合で離ればなれになってしまったのだという。そして俺は彼女がどこにいるかも知らず、今日まで生きてきたが偶然テレビで見かけて、それで思い出したとのことだ。しかし俺は彼女に心当たりはなかった。だから正直に言うことにした。俺は君のことを全く覚えていない。と。そう言うと彼女は少し残念そうな顔をしたがすぐに戻ってくれた。しかし今度は別の意味で悲しんでいるようだった。そうか……私のこと忘れちゃったんですか……?と聞かれたので素直にごめんなさいと言った。そうすると彼女はまた泣き出してしまった。慌てて慰めようとしたが、何をすれば良いか分からず戸惑ってしまった。そこで俺はふと疑問を感じた。何故俺達の記憶は残っているのか?そもそも俺達は恋人同士だったとして、なぜ今ここに居るんだ?そして俺はある仮説を立ててみた。恐らくだが、俺達には特殊な能力があるのではないか?ということだ。そしてそれを使えば元の世界に帰ることが出来るんじゃないかと思ったのだ。そこで俺はまずこの子から色々聞き出す事に決めた。するとすぐに泣いてしまった。俺はどうして泣いてるんですか?と言ってみると急に大声で泣き始めてしまった。どうしたものかと悩んでいたら突然鬼火に引っ張られた。俺は咄嵯の判断で女の子の腕を掴んだ。しかしすぐに振り解かれてしまった。そして女の子がこっちを振り向いた瞬間に思いっきり殴られた。俺は痛みでその場にしゃがみ込んでしまった。
痛ぇ……
俺は顔を抑えつつ立ち上がると女の子の方を見ると様子がおかしい事に気づいた。
どうやら女の子に触るとその人の記憶を見ることができるようだ。どうやら俺達はこの子に触れさえしたら元の世界に戻れるようだ。
「鬼火、お前先に帰っててくれないか?」
俺がそういうと 分かりました とだけ言い残して消えた。そして女の子の方へ歩いていき手を差し伸べながら もう大丈夫だよ と言ってみた。しかし反応が無いので どうしたのかな?
「おい、お前!こんな所で何をしてるんだ!?まさか……」
そう言われ俺は焦る。ここで捕まったら面倒な事になる。
「すみません。急いでるんで失礼します。」
俺はそう言い放ちダッシュして逃げた。
「くそぉ、逃がしたか……」
〜〜逃走中〜〜 はぁ、危ないところだったぜ。でも、ここ何処だろう?周りには家や店はあるが、あまり見たことのない景色だ。とりあえず人に聞くか。ちょうど近くを通りかかった男性に話しかけてみる。
「すみません。ここどこですか?」
「ん?ここは……そうだな、この辺では有名な所だぞ。ほら、あそこにある城。あれが有名な姫路城っていう城なんだ。まぁこの辺りじゃ一番大きいけどそこまで有名でもないよ。」
「なるほど。どうもありがとうございます。」
「うん、頑張って。」
俺はお辞儀をして別れた。
〜〜鬼火視点〜〜 私は先輩の指示で先に犯人の自宅に帰っていた。そして部屋の掃除をしていたら手紙を見つけた。その内容は、
「お前達がこの事件の真犯人を探していることを知っているぞ?俺の家にこい」
というものだつた。なので鬼火は指定された場所に行くことにした。その場所に着くと既に犯人と思わしき男が座って待っていたので声をかけたのだが無視されてしまった。そして男は私を指差し
「おい、貴様。その格好からして、メイドの者だな?」
と言われたので素直にはい。と答えることにした。すると犯人の男に
「なら話が早い。この家の家事全般を任せたいから住み込みで働く気は無いか?」
と言われました。
「もちろん構いません。ですから早く事件を解決しましょう」
私がそう答えると
「はははは、やはり馬鹿だな。俺はこいつを監禁するだけだから別に解決する必要なんか無いんだよ!」
と言い放たれてしまいました。私は動揺を隠しきれずに
「ど、どういうことです?」
と聞いたが答えてもらえませんでした。すると突然男の手が伸びてきたので身構えると頭を撫でられていました。どうしたのだろうと思っていると男からこう告げられた。「俺のものになれ」と。
「は?何を言っているのですか?嫌に決まっています」
そう言って突き放そうとするがびくりともしない。どうやら男の方が力が強いみたいだ。
男は続ける
「お前の主人のことは俺に任せろ」
男は続けて言った
「それに、お前の気持ちに嘘偽りがないことも分かった。俺のものになると言うまでお前を離さない」
そして男は鬼火を抱き寄せ、唇を奪った。そして強引にキスをする。
鬼火は必死に離れようとするが男の拘束を解くことが出来ないでいる。俺はそれを見過ごすことができなかったので二人の元に歩み寄る。男は邪魔が入ったせいか鬼火を解放した。鬼火の顔は紅潮しているように思える。俺に気付いた鬼火は何かを言いかけたようだったが口を塞がれていた為何も話すことが出来なかった。
俺達は三人で館まで戻った。そして鬼火は一旦休ませるために寝かせた後、事情聴取を行った。そうしていくうちに少しずつ真実が見えてきた気がした。しかし俺達に出来る事は限られていた。なぜなら俺達は探偵では無く刑事なのだから。そこで俺は、最後の確認を行う為にもう一度被害者である女性と会うことにした。その人は俺達が来るとすぐに駆け寄ってきて抱きついてきて、涙声で俺達に会いたかった。と言い出したので流石の俺達も動揺を隠せなかった。そのあと鬼火にも協力してもらい、話を進めていくとやはり彼女は何かしらの洗脳のようなものを受けていたのだと分かった。そこで俺は鬼火と協力して、催眠術をかけ直す事にした。これで一件落着……とはならなかった。なぜか、俺達が近づく度に怯えてしまうようになったのだ。これはどうしたものかと困り果てた時にある考えが浮かんだ。俺は鬼火の方を向いてアイコンタクトをした。すると鬼火はすぐに察してくれたようで俺に耳打ちしてきた。
「先輩、もしかして……」
「多分、お前の考えてる通りだと思う。」
「分かりました。やってみます」
「頼んだ」
そして俺は彼女に声をかけた。
「こんにちは。君は、あの事件の被害者の人だよね?」
「え?あ、はい。そうですけど……」
「君がやったことは全て知っているよ」
「え?どういうことですか?」
「君のお父さん、君に暴力を振るったりしてなかった?」
「え?なんで知ってるんですか?」
「やっぱりそうか……」
「どういうことですか?」
「落ち着いて聞いて欲しいんだけど、実は君に暴行を加えたのは俺の親父なんだ。だから俺は君が無実だということを証明したい。協力してくれるかい?」
俺は彼女に問いかける。すると彼女はこう言った。
「はい、お願いします。」
俺は彼女の手を取り歩き始めた。
そして目的地についた。そこは病院だった。
俺は彼女の父親に事情を説明して、診断書を書いてもらった。
こうして彼女の無実を証明することができた。
そして、俺達は警察署に戻った。〜〜〜 警察に戻ると、すぐに捜査が行われた。
俺達はまず、被害者の父親に事情を説明しに行った。
すると彼は俺達を疑った。しかし証拠を見せると疑いが晴れたようだ。
俺達はそのまま容疑者の尋問に入った。まず一人目。
「貴方が今回の一連の事件の犯人ですね?」
俺がそう言うと、男は驚いていた。
そして、鬼火が追い討ちをかける。
「貴方がやってることは既に分かっています。貴方が犯人だということもね。さぁ、大人しくしてください」
そう言うと、男は黙ったままうつむいていた。
そして鬼火が一歩前に踏み出し、手錠を取り出した。
「抵抗は無意味ですよ?ほら、手を出してください」
「……あ、ああ……」
男は諦めがついたのか素直に手を出した。
俺はすかさず手錠をかけた。
「よし、じゃあ署に戻るか」
俺達は車に乗り込み、署へと戻る。
〜〜〜車内〜〜〜 俺は運転しながら考えていた。犯人の動機についてだ。
恐らくだが、犯人の目的は復讐なのだろう。犯人にとって大事な人が傷つけられたからこその行動だろう。
そう考えていると、ふと俺は疑問に思った。
「なぁ、鬼火。」
「はい、何でしょう?」
「お前って昔に恋人とかいたのか?」
「な、何を急に……い、いましたけど、どうしたんですか?」
「あぁ、ちょっとな」
「もしかして嫉妬してくださっているのでしょうか……?」
「はぁ?んなわけねぇだろ。」
「そ、そうですか……そういえば先輩、先程からずっと気になっていたのですがそちらの女性の方とはどのようなご関係で?」
と、唐突に聞かれたので少し焦ってしまった。
「ん?あぁ、この子は俺の幼馴染だよ」
「へぇ〜そうなんですか。」
俺は適当にはぐらかすことが出来たと思ったが彼女はそうでは無かったらしい。
彼女はとても不満げな顔をしていた。そんな顔されると罪悪感を感じるな……。仕方ないから俺は正直に話すことにした。すると彼女がとんでもないことを言い出した。
「私にも紹介してください!」
は?いやいや、意味が分からない。俺の頭の中には?マークが飛び交っていた。すると彼女は続けて言った。
「私、まだお友達いないんですよ。それに、最近になって私に変な視線を送ってくる奴もいるみたいですし……」
俺はそれを聞き、納得してしまった。確かに、この子みたいな可愛い子が俺の側に居たらそいつは勘違いするだろうな。
俺はどうしようか悩んでいた。俺は鬼火にあまり関わって欲しくないと思っているからだ。
「あ、あの先輩!わ、私と付き合ってください!」
俺は驚いた。今までこんな事を言われた事が無いからだ。それに、こんな可愛い子に告白されるなんて思っていなかったから余計だ。どう答えれば良いだろうか……
「あー、ごめん。今は色々と忙しいから後でいいかな?」
俺は申し訳なさそうにして答えた。「そ、そうですか……では、またの機会にお返事聞かせてくれますか?」
「あ、うん。分かったよ」
「ありがとうございます」
そして俺達は犯人の元へと向かっていった。〜〜〜回想。鬼火視点。〜〜〜 私は先輩にフラれてしまった。理由は私の容姿に問題があるからだと先輩は言っていた。ショックだった。私は泣きそうになりながら歩いていた。すると前から男性が歩いてきた。私は避けようとしたのだがその男性から話しかけられた。「そこのお嬢さん、大丈夫ですか?もし良かったら一緒にお茶でも飲みませんか?美味しいケーキ屋を知ってるんですが……」……ナンパされてしまいました。どうしましょう?私はこの人を知らないので断るしかないですが断ってしまって良いのでしょうか?しかし、ここで断ったとしてもしつこくついてきそうですし、とりあえず話だけでも聞くことにしましょう。
〜〜〜男視点。三人称。〜〜〜 俺は今日、人生で初めて一目惚れというものを経験した。その相手は綺麗なお姉さんのメイドさんだ。その女性は何か悩んでいるような表情をしていたので声をかけてみた。すると俺にこう告げてきた。「あの、すみません。道に迷ってしまいまして、案内してくれませんか?」と。俺は喜んで引き受けた。そして二人で歩いていると女性が俺にこう告げてきた。「実は私、彼氏がいるんです。だから、そういうのはやめてもらえると嬉しいのですが」と。俺は驚きのあまりに言葉が出てこなかった。まさかこんな美人でスタイルも良い女性に男がいただなんて思いもしなかった。しかし、俺は諦められなかった。そこで俺はある作戦を思い付いた。それは、まずは俺という存在をアピールする事だ。そしてその後、女性の心を揺さぶるようなセリフを言うのだ。そうすればきっと上手く行くはずだ。
俺達は喫茶店に入り、注文を済ませた。そして俺はまず自己紹介をした。名前は田中太郎。年齢は23歳。趣味はゲームと読書。好きなものは甘いもの全般。と、言った感じで自分のことを説明していった。そして、俺はこう言った。「貴女の名前を教えていただけますか?」と。すると彼女はこう言った。「鬼火と申します。よろしくお願いします。」と。俺は彼女の名前を聞いて、何か引っかかるものを感じた。どこかで聞いたことがある気がしたのだ。しかし、思い出すことが出来なかった。なので俺はこう言った。
俺は鬼火と連絡先を交換して別れた。
俺は家に帰ると早速パソコンを立ち上げた。そして、俺は鬼火について調べることにした。
するとすぐに情報が出てきた。
鬼火という名前の女の子は実在しており、その子は俺の通っている大学に通っていることが分かった。俺はその日、鬼火と会うことにした。
〜〜〜鬼火視点〜〜〜 私は今、先輩とデートをしています。
先輩がいきなり誘ってきた時は本当にびっくりしました。
先輩曰く、私に好意を持っているからとのこと。
しかし、先輩の気持ちには応えられません。なぜなら先輩は私にとってただの先輩だからです。それ以上でも以下でもないのです。
そして、先輩は突然こんなことを提案してきました。
先輩は私のことが好きだと。そして、付き合いたいと。
しかし、先輩の想いに応えることはできませんでした。
先輩は悲しげな表情をしていましたが、それでも私に問いかけました。
なぜなのかと。私が先輩のことを異性として見ていないと言ったからです。私は正直に理由を話しました。
すると先輩はとても驚いていましたが、少し嬉しそうにも見えました。もしかすると先輩も私のことが好きだったのかも知れませんね……。
そして、私たちは犯人探しを始めました。すると、容疑者の一人が犯行を認めました。
彼はこう言い放ちました。
お前のせいで、大切な人を亡くしてしまった。だから復讐をしたのだと。
そして、鬼火がこう言った。
貴方は間違っていると。
そして鬼火は続けてこう言った。確かに復讐は良くないことですが、復讐は何も生み出しませんと。
そして鬼火は犯人にこう言った。
貴方はもう罪を犯しています。これ以上罪を犯せば地獄行きですよと。
そして犯人は鬼火に襲いかかった。
しかし、俺が間一髪で間に合い、犯人を取り押さえた。
そして、俺達は犯人を連れて警察署に戻った。
俺達は犯人を尋問室に閉じ込めた。
俺達は容疑者を全員集めて、事情を聞いた。
まず一人目。こいつは今回の事件の犯人だ。動機は大事な人の仇討ちだそうだ。
俺達は証拠を突きつけて問い詰めた。
そして犯人はあっさりと犯行を認めた。
俺達は犯人を尋問室に連れていき、手錠をかけた。
そして俺は鬼火に指示を出す。鬼火には手錠をかけたまま外に出てもらい、犯人を引きずって連れてきてもらうことにした。
俺はその間に、他の犯人達から事情聴取を行った。
〜〜〜数分後〜〜〜 鬼火は手錠をかけたままの男を連れてきた。俺はその男に質問した。
お前がやったのか?と。
男は静かにうなづいた。
俺は続けて男に質問する。
どうしてこんなことをしたんだ?と。
男は震えながら答え始めた。
男は昔、恋人を亡くしたらしい。そしてその恋人は目の前にいる彼女だと言う。
俺は続けて男に質問する。
何故、こんなことをした?と。
男は涙を浮かべながらも答えた。
俺は彼女が許せなかった。
彼女はいつも笑顔で俺に優しくしてくれた。
しかしある日、彼女は事故にあって亡くなった。俺は悲しみに暮れていたが、しばらくして立ち直ることができた。
しかし、ある時を境に彼女にストーカーされるようになった。
俺は怖くなり警察に相談した。
警察は俺の話を信じてくれなかった。
だがそんなある日、彼女が俺の家に訪ねてきた。
俺は彼女を家に上げてしまった。
そして俺は彼女に押し倒されてしまった。
「ねぇ、なんで私じゃダメなの?私なら君に幸せを与えてあげられるのに……」
俺は抵抗しようとしたができなかった。
彼女は泣いていたからだ。
「ねぇ、私のものになろ?そしたらずっと一緒にいられるよ?」
俺はどうすることもできずに、
「あぁ、わかったよ」
と答えてしまっていた。
「ありがとう……これからはずーっと一緒だよ?」
彼女は俺にキスをしてきた。
「んっ……ふぅ……」
俺は舌を入れられて、口の中を舐め回された。
「んぐっ……、んっ? 舌が痺れる。こ、これは何だ? お前。変な物をのませただろう? ぐはっ」
俺は血を吐いてその場に倒れた。
鬼灯~。
先輩が亡くなって四十九日が過ぎました。警察は先輩殺しの犯人をまだ捜しています。捜査線上にいくつか容疑者があがっているらしく、この間の男も浮かんでいます。幸い、私は捜査対象から外れているようです。だって私の首には先輩が爪を立てた跡が今でも残っているから。公式的に私は先輩に暴行された被害者という事になっているらしいです。
「はぁ……」
私は先輩との楽しかった日々を思い出しながらため息をつく。
「あれ、鬼火ちゃんだよね?」
私は後ろから声をかけられた。
「はい、そうですけど。何か用ですか?」
「ちょっと付き合ってくれない?」
「え?」
「ほら、来て!」
「ちょ、待ってください!」
私は男に手を引っ張られた。
「鬼火ちゃーん!助けてー」
私は助けを求めたが、無視されて連れ去られてしまった。
「あの、どこに連れて行く気ですか?」
「どこだと思う?」
「分かりません」
「着いたよ」
そこは廃ビルだった。
「鬼火ちゃん、俺のものになってよ」
「は?」
「俺さ、鬼火ちゃんのこと好きだったんだよ」
「嘘です!」
「本当さ。俺は君のためなら何でもできるよ」
「離してください!」
「いいや、離さない」
「誰か助けてくださーい」
「誰も来ないさ」
「は、はなして」
「分かった。その代わり俺の言うことをなんでも聞いてもらう」
「わかりました。聞きます」
「じゃあ、今すぐここで脱げ。服も下着も全てだ。全裸になれ」
「そんなのできません!」
「俺のモノになるんじゃなかったのか?」
「……わ、わかりました」
「鬼火ちゃん、恥ずかしがらないで堂々としててね」
「は、はい」
俺は興奮を抑えきれなかった。鬼火は美しい体をしていた。胸は大きく、腰はくびれていて脚は長い。俺は思わず抱きついた。
そして、
「鬼火、愛している」と伝えた。
すると鬼火は、顔を赤面させつつも
「私もです……」と言ってくれた。
俺は鬼火の体を堪能しつつ、廃ビルの屋上へと向かった。
〜〜〜鬼火視点〜〜〜
「鬼火、今日も可愛いね。俺だけのお姫様」
そう言って彼は私に唇を重ねてくる。
「はぁ、はぁ、もうだめです……」
そして私と彼は絶頂を迎える。しかし、そこで彼の携帯が鳴る。
「チッ」と小さく舌打ちをしながら彼が電話に出る。そして、「はい、もしもし。ああ、そうか。やっぱりお前が犯人だったか」と言い放った。私は驚いた。彼は私を愛していると言った。それなのに彼は私の元を離れてどこかに行ってしまったのだ。
「鬼火、今までごめんね」
彼は涙を流して謝ってきた。そして彼は私の耳元で囁いた。
「さよなら、愛していたよ。俺のお姫様……」と。
私は必死に彼を追いかけようとした。しかし、足が動かなかった。
「行かないで、置いていかないで……。一人にしないで!!」と私は泣き叫んだ。
しかし、無情にも私は彼を見失ってしまった。
〜〜〜回想〜〜〜 鬼火は俺のことを愛してくれていたようだ。だから、俺はその気持ちに応えてあげようと決めた。
「鬼火、俺についてこい。絶対に幸せにしてやるからな」と俺は鬼火に伝えた。すると、鬼火は笑顔でうなづいた。俺は鬼火と手を繋ぎ、目的地へと歩き出した。
しばらく歩いていると鬼火が立ち止まった。そして俺の方を向いて、
「先輩、この辺にしますか?」と訊いた。
「そうだな。この辺りがいいと思うぞ。じゃあ、早速始めましょうかね」
俺はナイフを取り出した。
そして俺は自分の腕を切りつけた。
〜〜〜鬼火視点〜〜〜
「せ、せんぱい? 一体何を? 大丈夫なんですか!?」
先輩は自らの傷口を手で押さえつけています。しかし、血は止まることなく流れ続けています。そして、私は思い出しました。以前読んだ記事を……。先輩はそのニュースを見て以来おかしくなったのだと……。先輩がおかしくなる前に読んでた雑誌には、先輩の恋人が自殺する直前にある男に暴行されていたという事が書かれていた。私は急いで救急に連絡しようとした。しかし、先輩が止めた。
そして、私はあることに気づいた。それは先輩の手から大量の血液が流れ出てきているということに……。
■回復期リハビリテーション病棟
「何なんですか? これ」
俺は妄想いっぱいの大学ノートを見せられて絶句した。そこには警察の捜査だの犯人だの自由奔放な内容が綴られていて最後に俺の出血が止まらない、と書いてあった。
「統合失調症の末期症状ですね。残念ながら妹さんは予後不良です。社会復帰は絶望的かと。精神障害者手帳の手続きをしておきました」
主治医は気の毒そうに告げた。俺はショックで二の句が継げない。
妹は自分のことを鬼灯と名乗り、兄である俺のことを先輩だと思い込んでいるそうだ。
それも衝撃的だった。つまり彼女にとって俺は赤の他人ということだ。
「つまり、妹は……俺のことを忘れてしまっている?」
「ええ、言いにくいことですが若年性認知症の症状も出ています」
「えーーっ」
俺は死にたくなった。妹の記憶に俺との思い出は残っていないという事だ。
「どうなさいますか?」
主治医は家族である俺の意見を待っている。
俺は苦渋の決断を下すことにした。
「安楽死させてやってください。このまま生き続けても苦しむだけだ。兄である俺だって苦しいです。こんなにつらい事はない」
「そうですか。よくぞつらい判断をなされましたね」
主治医は俺の手を握り涙ぐんだ。
「いえ。こちらこそ、妹を今まで手厚く看護していたらきましてありがとうございます。これで彼女を楽にしてやれる」
俺は涙を流しながら安楽死の申請書に署名した。