公開中
第9話:血と涙と誓い
パトカーの青い光と赤い光が交互に室内を照らす中、愛菜は真蓮の胸の中で泣き続けていた。
救急隊員の呼びかけにも、彼女は真蓮の服を掴んで離そうとしない。まるで彼という「光」から離れれば、またあの暗闇に引きずり戻されてしまうと恐れるように。
「大丈夫だ、俺はここにいる。どこにも行かねーよ」
真蓮は、処置を受けながらも、空いている方の手で愛菜の頭を優しく撫で続けた。
彼の肩には深い傷があり、真っ白な包帯がすぐに赤く染まっていく。それでも真蓮は、自分の痛みなど忘れたかのように、愛菜の震えを鎮めることだけに集中していた。
病院へ運ばれ、診察を終えた後。
夜の静かな病室で、二人は並んで座っていた。
「……秋葉くん、ごめんね。私のせいで、こんなに」
愛菜が、真蓮の傷だらけの腕を指先でそっとなぞる。
真蓮は、痛む体を無理やり動かして、わざとらしく腕まくりをして見せた。
「へーきへーき! これくらい、勲章みたいなもんだって。……それより愛菜、お前、さっきの警察の人の話……」
叔父の逮捕。そして、愛菜の身の安全。
もうあの家へ帰る必要はないこと、しばらくはシェルターや施設で保護されることになるという説明。
愛菜は俯き、自分の膝を見つめた。
「……怖い。独りになるのは、もう慣れてるはずなのに。……明日から、秋葉くんに会えなくなるのが、一番怖い」
その言葉は、愛菜にとって最大級の「告白」だった。
真蓮は一瞬、呆然と愛菜を見つめた。
そして、彼らしくない、ひどく真剣な、けれど熱い眼差しで彼女の手を握りしめた。
「独りになんて、させるかよ」
「……え?」
「俺さ……お節介で、バカで、困ってる奴がいたら放っておけない性格だけど。……お前に対しては、それだけじゃねーんだ」
真蓮の顔が、火がついたように赤くなっていく。
いつもはクラスのムードメーカーとして堂々としている彼が、言葉を詰まらせ、視線を泳がせる。
「……お前のこと、守りたいって思ったのは……お前が好きだからだ。野平愛菜っていう女の子が、笑ってるところを、一番近くで見ていたいからなんだよ」
静まり返った病室に、真蓮の鼓動が聞こえてきそうなほどの沈黙が流れる。
愛菜の瞳から、また一粒、涙が溢れた。
「私……ボロボロで、何もないよ……?」
「何もないわけねーだろ。お前には、俺がいる。俺の家族だっている。……俺が、お前の『新しい家族』になるための道、絶対作ってやるから」
真蓮はそう言うと、我慢できなくなったように愛菜をぎゅっと抱きしめた。
今度は愛菜を怯えさせるための力ではなく、彼女を一生離さないという誓いの重さ。
「大好きだ、愛菜。……もう二度と、雨の中で一人になんてさせない」
愛菜は、真蓮の温かい胸に顔を埋め、初めて自分から彼の背中に手を回した。
二人の「|エコー《響き》」が、病室の静寂を温かい希望で満たしていく。