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しるし
ウィルとまーりー
仲良しで結構!
先からわたしは落ち着きがないと白音に言われた。
あとウィルを見つめ過ぎだと、先程ウィルにマーリーの視線が怖いと訴えられたらしい。
「そんなに落ち着きがないか…?」
「マジでないよ」
「大したことはしてないんだが…」
「お前鈍感じゃん、ウィルにちゃんと答えてあげな」
わたしが叶えてあげれないものがあったのかと心底驚いた顔をすると知らなかったのぉ?と恨めしげに言われた。
冷蔵庫から何かを取り出す白音を見つめながらどんな顔をしていたか聞いてみると
「戦地の恋人を思い出して悲しむみたいな…とにかくバチクソに哀愁漂ってたね」
そっと顔を思い浮かべながらも白音が咥えているのがいちごジャムのサンドイッチだとわかり、おまけにパンが少し焼いてあるから、ウィルが作ったものだ。
「マーリーが部屋に引きこもってばっかで呼んでも来てくれないから俺にくれるって」
この下劣め…最近自分でジャムを作り始めたと聞き楽しみにしていたものなのだが…
「初めてにしてはなかなかにうまいジャムだし…theいちごって感じの味する」
大粒でうまいしと付け足し、ますます食べたくなっていった。
訪ねればまた明日作ってくれるかもしれない、そしてついでに謝りに行こうと、いちごジャムのサンドイッチを美味そうに食う白音を恨めしげに睨んでから、ウィルの部屋へ向かう。
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「お前のせいだ」
泣きはらした面でそう言われ、慄く。
「お前がッ…お前が来てくれないから」
グズグズ枕に顔を押し付ける姿は痛々しく、左手にたくさんの切り傷と、カッターがおまけのように落ちている。
「バカだ、バカ、お前なんかきらいだッ、マーリーなんか嫌いだ…」
「俺のことが好きじゃないんだろ、ほんとはそうなんだろ、もういえよ」
早口でそう言ってのけ、ものすごく悲しそうな顔、悲観や自責、そういった者の顔だ
「わたしは…」
「もういゔなよ、もういうな、わかッてるから早く消えろ、もう二度と話しかけるな」
ウィルはパニックなのか正反対の言葉を口にした。
なだめるつもりで頭に手を伸ばすと、思いっきり噛みつかれる。
なにかに怯えるような、臆病な目であった。
ふゔふゔとギリギリと歯を立て、力を強められる。
よほど強く噛んでいるのか、ほんの少しではあるが血が滲んで、それに気づいたように急いでウィルが口を離す。
楕円を描いた大きな歯型は右の八重歯の部分だけ血が滲み、ほかは赤黒く、深くあとが付いている。
「悪い子だ」
そうできる限りの低い声でつぶやくと、ショックを受けたような、暗い顔をした。
ウィルも騙されたようで、狼狽し、また泣きそうになる。
ここで不覚にも興奮してしまうのはこの例えようのない驚きを隠すためか、単に異常なのか。
ぼやぼやと考えながらも、仕返しと言わんばかりにウィルをかき抱く。
そっと肩口に歯をあてがってから、手加減なしに噛みつくと、ゔっと短い悲鳴のあとに、またふゔと長く抑え込むようなか細い呼吸を始めた。
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2分ばかりだろうか。うっ血した噛み跡をなでながら、そっと諭した。悪戯が過ぎたのか、ウィルはまたグズグズと泣き始める。
「私は君を愛している、絶対に」
「ほんとは嫌いなんだろ゛ッ…」
嫌いなんじゃないかとウィルが不安がっているたびに首筋や指先や耳に噛みつくと、ひどい顔ながらも少しばかり安心したような顔になる
この痕が私のものだと証明するのだから、安心するのだろうか。
私のものだ、そういうように肩口の傷をなで上げる。グシャグシャに白衣を掴まれる。
そっと確かめるように見つめられ、深く頷くと、また私の肩口に顔を乗せたようだ。
そっと優しく抱きしめた。
--- 狂おしいほど愛おしい、私の大事な、大切な、恋人。 ---
--- もう二度と、離しやしない。 ---
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