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寄り道~秋空をフレームに収めて~
2学期も始まってしばらくたった9月某日。暑さもそれなりに和らぎ、少しずつ過ごしやすくなってきた。それに伴ってだんだんと木々が色づいてきたような気がする。秋の澄んだ空に楽しそうにトンボが飛んでいた。
「秋の空ってなんか鮮やかだよな。どこか寂しい感じはするけど」
独り言をポツリ、部活で使っている教室で消えた。完全下校時刻が次第に近づき校舎の廊下は自分と同じ部活動生くらい、数人が帰ろうとしているだけでほとんどいない。夏に比べて夕暮れ空になるのが早くなった。
今は、部員の全員で部活動で使った道具を手早く片付け、帰る支度をしている最中だ。
「姿勢、礼」
「「ありがとうございました」」
最後に部長の掛け声が教室に響く。そうして顧問の先生に挨拶をして帰る。相変わらず部長の|榎沢《えのさわ》先輩は帰るのが早い。足速くないか? ここ文化系の部活なんだけど何故か足が速い人が多い気がする。そもそも廊下は走ってはいけない。先生に怒られなければいいが……
「帰るの早っ、榎沢先輩って足が速いよな」
「確かに。運動部とかに入っていてもおかしくないくらい身体能力すごいよね~」
「そういえば先輩って今までずっと新体力テストA判定だったらしいよ。先輩本人が言ってた」
「マジかよ」
「ふと思ったんだけどここの部活っていろいろと不思議な人が多くないか?」
「それは思ったりしたけど……あまり深く考えない方がいいかも知れないね。そんなこと言ってたらホントに日が暮れちゃうから」
「そうだね~」
と、いうわけでこの討論は別の機会にすることになった。
「じゃあまた、次の部活で」
「じゃあね~お先に失礼しまーす」
「またね~」
そう言って同じ学年の尾杉さんと野田さんは足早に去っていった。
靴を履き替え外に出ると、きれいな夕焼けが広がり、回りの木々がオレンジ色に染まっていた。グラウンドでは運動部がまだ活動をしているようで時折掛け声みたいなのが聞こえる。練習風景を見ていると今日のグラウンド利用は駅伝部とサッカー部らしい。校門までの長い一本道を一人で歩きながらふと、空を見上げる。あまりにもきれいだったので空の写真を撮りたくなった。
だかしかし、この学校は学校敷地内での携帯電話の使用は校則で禁じられている。校内では携帯電話の電源を切っておかなければならない。でも、バレないように試行錯誤しながら使っている人をちらほら見かける。
よくそんなことができるなーと思いつつ。許可を取れば親と連絡を取るくらいは大丈夫だけど、無許可で使ったりして先生にバレたら結構面倒くさい。生徒指導である。つまり、学校の敷地の外へさえ出れば携帯電話を使っても怒られないというわけだ。少しばかり急ぎ足で校門の外に出る。
この学校は少し丘の上にあるお陰で見晴らしが良く、今日は天気がいいので空が澄んで見える。坂を少しくだって眺めのいいベストポジションを見つけた。空を遮るものがなく、ちょうどよさそうな場所だった。
早速カバンから携帯電話を取り出し、電源を入れてカメラを起動した。早くこの風景を写真として写したかったのである。時間が立つにつれ鮮やかな黄昏の空がだんだんと紫がかった色へうつろいで行く。その様は何とも幻想的で気づいたら何枚も写真を撮っていた。
こんなことばかりするから携帯電話のアルバムが空とか風景で埋めつくされてしまうんだなと毎度思いつつ、それでも続けてしまうのは幻想的な一瞬の1コマを切り取って残したいと思うからなのだろうと考えている。
今日の写真はいつもよりきれいに撮れた気がした。
そんなこんなしているうちにどこか遠くでカラスの鳴き声が響いた。時間を無視して夢中になって写真を撮っていたので気づかなかったが、辺りも暗くなり始めているようで街灯も灯りはじめていた。運動部の人達も帰り始めていてザワザワと話し声が微かに聞こえる。時間的にもそろそろ帰らないといけない。あまりにも遅いと母さんに心配されてしまう。それだけは避けたい。
きれいな空の写真をお土産に家路を辿る。今度の休み、写真を現像しに写真屋に行ってみてもいいかもしれない。
ところで今日の晩御飯は何だろうか。早く家に帰らないとな。
これは寄り道と言えるのか。大前提として話はそこから始まりますが、気にしないでください。気にしたら終わりです。よく分からないクオリティーでぼちぼち続いていますが、このクオリティーがどこまで持つかは謎ですね。
お読みいただきありがとうございました。