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    4#宇宙のなみだ
    
    
    
    とうとう宇宙センターを見学する日になった。
僕はその日まん丸のパン二つに、いつもは塗らないバターを塗って食べた。トースターで焼くと黒焦げになっちゃって、なんだか苦くて困ってしまった。パンと格闘していると時間は刻々と迫っていた。ぼくは息を切らして学校を目指した。宇宙センターまでは学校からバスで一時間半。渋滞には巻き込まれなかった。
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「皆さンこンにちは。本日皆様をごあンないするセトと申します。」
「ごめんなさい。この子、いつも“ん”だけ裏返ってしまうの。私はオカノです。セトと一緒にあなた達をご案内します。」
淡々と話すセトさんはボディがきらきらと光るロボットで、オカノさんはスーツを着た優しそうなお姉さん。二人はバディなのだと言っていた。
セトさんがゆっくりと歩きながら展示物の概要について話し、オカノさんがそこに歴史を付け足していく。時折セトさんは展示物の前で立ち止まり、タブレットの表らしきものにチェックマークを付けていた。休憩中にこっそり聞いてみると、破損や腐敗していないかとか、正しい説明パネルが設置されているかとかを確認しているそうだ。
そんなことまでするんですね、と言うと
「人手が足りていないンです。」
と言った。
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「皆さン。これが太陽の箱です。灼熱の星を覆う為、あなたたちの祖せンが作り出しました。」
「センターに訪れたひとや研究者達は、皆この大きな物体を人類の最高傑作だと言いました。この断面図の模型を見てください。内部には太陽の炎を研究する、無人研究所があります。時々ここから無人探査機を出して表面を調査します。」
みんな模型を真剣に見入っていた。
「オカノ。少し話がある。」
「すみません皆さん。少し待っていて下さい。」
僕は気になって二人をこっそりつけた。以下の話は次の通りだった。
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「オカノ。太陽の箱の表面が劣化しています。」
「分かった。修復科に連絡しておきます。場所は?」
「A-6,D-10,F-2それから…」
「待って。この間点検したばっかりなのに。」
「妙だよね。オカノ、とりあえず修復科にれン絡しておいて。私は清掃科にれン絡する。きっと呼ばれるだろうから、あの子たちのあン内は他の人に頼もう。」
「分かった。シズカにも連絡しておく。何かあったら私に教えて。」
「わかってる。それじゃあまた後で。」