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田舎者? 軌跡よつば編
「〇〇県から来た、軌跡よつばです。よろしゅうお願いします!」
転校初日、うちが自己紹介すると、クラスがざわざわとした。転校生が楽しみとか、素敵な子だとか、そういうのじゃないことはわかる。みんなの顔がにやついている。嫌な顔をしている。
それでもうちは、印象のためににっこりし続けた。
「よつばちゃん、っていうの?」
隣の席の子。「あたしは莉愛っていうの、よろしくねっ」と、軽やかで高い声で言ってきた。髪を染めて、筆箱にはカラフルなペンばかり入っている。
ちょっと、苦手だ。
でも、初めて出来た友達が嬉しくて、「よろしく!」と返事した。
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違和感。
そんな空気が充満したのは、僅か1日のことだった。
転校してきた翌日。さっそく、うちは避けられていく。そんな時も莉愛は「大丈夫?」とか気にしてくれている。見た目で判断しないことが大切なんだろうな。
でも噂では、
「田舎から転校してきたから、イントネーションがおかしい」だの、
「田舎くさいし、古臭そう。どんくさそう」だの、
「流行りとか気にしてなさそうだよね。ダサい」だの、
そんなことばっかりが聞こえてくる。
イントネーションだって、みんなの言うことはうちにはおかしく聞こえる。
古臭いって、どういう基準なんだろう。いろいろ手伝ってきたから、どんくさいのはみんなの方。
流行りとか縛られずに、のびのびやっていきたい。ダサいって、誰が決めたんだろう。
どんどん避けられていくうちにも、莉愛は優しく接してくれた。
「そんなこと気にする必要ないって!」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ!」
「よつばは、なーんにもおかしくないから!」
そんな言葉が、唯一の救いだった。
___噂を吹き込んだのが、莉愛だと知るまでは。
莉愛は、クラス内で相当な権力をもっていた。転校生が人気となり、クラスで自分の地位が低められてしまうんじゃないか。だから、予め転校生を低めろ。そうみんなに吹き込んでいた。そして、その転校生を助けたら、自分の地位はもっと高くなる。みんなの地位も、比例して高くなる。
そう言っていたのだ。
うちを利用して、莉愛はどんどん人気になっていく。
うちは、人気になるための『踏み台』『ただの道具』でしかなかったのだ。
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間接的ないじめを受け、うちは学校に行けなくなった。
それから、子供用のチャットサイトで、のめり込むように活動した。ネッ友もできた。ここなら、信頼できる。真意はみえないけど、それでも肯定の言葉がほしい。
『不登校のみんなで人狼ゲームしませんか?』
そんなチャットルームを見つけたのは、不登校になってすこしのことだった。