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13.コミュ
急いで夕食をかき込み、2人は寮の共有スペースへと向かった。
そこは、普段はあまり使うことのない、ひっそりとした場所だった。
「ふぅ…危なかったね、もう少しで夕食抜きになるところだったよ」
狛枝が安堵したように息をつき、罪木も小さく笑った。
「それで、罪木さん。君はどうして3DSのゲームを?」
狛枝の問いかけに、罪木は少し戸惑いながらも、正直に話し始めた。
「あ、あの…どうしても『ペルソナ』っていうゲームを買いたくて…!
それで、まず本体だけ買って、またお金を貯めようと思って…
それで、つ、つなぎに『ぷよぷよ』を…」
罪木がどもりながらも話を終えると、狛枝は一瞬、きょとんとした表情になった。
そして、次の瞬間、彼は静かに、しかし、心の底から嬉しそうな笑顔を見せた。
「ふふ、まさか。君と僕が、全く同じ境遇だったなんてね」
「え…?」
「僕もだよ。プレステ4は買ったんだけど、どのソフトにするか迷ってしまってね。
だから、僕はつなぎに『妖怪ウォッチ』をやってたってわけさ」
罪木は驚きと感動で、目を丸くした。
同じような状況で、同じようにゲームに没頭していたのだ。
しかも、大好きな『ペルソナ』が共通点だなんて、こんな偶然があるだろうか。
「狛枝さんも…『ペルソナ』、お好きなんですか…?」
「あの、絶望的な状況を乗り越える『希望』の物語、たまらないよね!
僕たち、頑張ってお金を稼いで、いつか一緒に『ペルソナ』の話をしよう」
狛枝は、そう言って右手を差し出した。
罪木は少し緊張しながらも、その手を取って強く握手をする。
「あ…これ、コミュ発生しませんでしたか?」
罪木が、思わず『ペルソナ』のゲーム用語で呟くと、狛枝は嬉しそうに笑った。
「確かに!これはコミュ発生だね!君は…そうだね、
正義のコミュかな? いつも他人のために頑張ってるから」
「えへへ…!わ、私は…狛枝さんを見習って、正義の心、磨いていきたいです!」
罪木は、少し照れながら答える。
そして、ふと、彼のコミュニティを思い浮かべて、少しだけ意地悪な質問をした。
「じゃあ…狛枝さんは…死神とか、ですかね…?」
「ふふ、どうだろうね。僕の内面は、もっと複雑怪奇かもしれないよ?」
二人は顔を見合わせ、楽しそうに笑い合った。