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第3話:〈名前Ⅱ〉
そんなこんなで、メイドさんと二人っきりになってしまった。
多分じろじろ見てるのはバレると思うので堂々と見た目の説明をしていこう。
髪の色は薄い青色で、私の1.5倍近くの身長と豊満な胸部は正直羨ましい。
身長は無くていいから、胸が欲しい…。
想像してみたら、だいぶ変な感じだから…やっぱりこのままでいいや…。
話を、メイドさんに戻すと…。
髪は団子のように結んでおり、頭には…布をかけている…。
メイド服は、私の仕事場ではあまり見なかった形で…動きやすさ重視なのか足が上げやすそうな気がする。
目は糸目で…全く見る事ができない。
あと、メイドさんに対して言う事があるとするならば…。
怖い…なんというか、そこが見えない感じがする。
昔、お客さんとして来た旅人の人に聞いたことがある。
メイド服を着て戦闘ができそうな人は…怒ると殺される…と…。
このメイドさんも…もしかして…。
しかし、メイドさんと二人っきりは少し気まずい…。
そんな感情を読み取ったのか、メイドさんが口を開いた。
「このは様、貴方様の好きなものをお聞かせ願えないでしょうか?」
「えっと…?」
「失礼、私の説明は後ほど行いますが軽く言うならば私は貴方の専属メイドですので苦手なもの、好きなもの等の基本情報を知識に入れておきたいと思いまして…。」
…??専属メイド?
「専属って、どういうことですか!?」
「それは、後ほど…。先に、好きなもの等の基本的なことを教えてください」
なんだか、誤魔化された気がしたが…。
好きなもの…。
食べ物って事かな?それとも、物?
「先に、食べ物でお願いします。物についてはまた旅の終点についたら用意させてもらいますので…」
このメイドさん…心読めてる説ある?
「ありません」
「心読んでる!?」
「あ…聞き間違いです」
「いやいや、無理がありませんか!?」
私がそういうと、メイドさんが少しだけ目を開き物凄い圧をかけてきた。
「私は、心を読めません。いいですね?」
「は…はい…。」
承認すると、私を押さえつけるような圧が直ぐに消えメイドさんもさっきまでの細目で優しそうなメイドさんに戻っていた。
「戻ったぞ~…なんかあったか?」
その後数分もして、フミさんたちが帰ってきた。
メイドさんと一言も話さずお互いだんまりして座っているだけの状態を不思議に思ったのかフミさんが聞いてくるがメイドさんが「何もない」というと何の疑問も抱かずその言葉を承諾した。
もしかしなくても、メイドさんってここにいる誰よりも強いとか…ある?
「な、何もなかったなら…先に、苗字の発表…。」
ななさんがそういうと、思い出したかのようにフミさんが話し出した。
「そうだ!苗字を決めたんだ…あっはっは!」
この感じ…忘れてたっぽいな…。
「ん”ん”、で…苗字だが…。土方、月風、八咫神、古米の4つの案が出た…。どれがいい?」
「…?決めてくれるんじゃないんですか?」
「そうしよう…と思ったんだが、やっぱり自分の名前は自分で決めたほうが良いだろ?」
理にかなってるけど…。なんか、めんどくさくてパスされたみたい…。
でも、考えてくれたから…最後くらい自分で決めないとね…決めるの苦手だけど…。
土方このは…。なんか、玄破さんみたいな感じがする…。
月風このは…。すごい、魔法使ってきそう…。でも、響きは悪くない。
古米このは…。…なんか、すごく罵倒されている気がする…。
最後…八咫神このは…。あんまりしっくりこない…。私のような人間が神様の名前を語るとか…。でも、なんか…この名前にしなければいけない気がする…。
よくわかんないけど、まぁ一番安心できるのはこの名前かな…。
「じゃあ、”八咫神”にします」
「ななの勝ちだな」
「そうじゃのぉ、おとなしく負けを認めよう…」
「おめでとう、なな!流石私の自慢の妹!」
「えへへ、や、やったー!」
…??
もしかして、それぞれ苗字決めて誰の苗字が選ばれるかゲームしてた?
もしかしなくても、それが原因で私は選ばされることになった?
奴隷に、今まで選択することすらできなかった奴隷に?
不慣れなことをさせてた?
「今までのお客さんでもそんなことしないよ!!!」
私は、そう叫びながら地面に膝をついた。
しばらくして、流石に申し訳ないと思った共犯者3人が謝ってきたが首謀者は謝ってこなかった。
「お三方は、首謀者に協力しただけなんですよね?名前もお三方は考えて良い名前を選んでくださったみたいだし…。許します。でも、首謀者さん…。名前、罵倒してますよね?ね?」
「そ、そんなことは無い!断じて!本当だ!」
「じゃあ、こまいってのはどういう意味なんですか?」
「それは…えっと、あれだ…」
「そな、こまいな脳で考えれんほどの暴言なんか?あ”?」
「…ごめんなさい…。」
なんとなく、適当に使ってみた文章でも案外威圧感は出るらしい。
正直に言うと、私は”こまい”と言う言葉の意味も知らない。
本当になんとなくだ…この言葉を現地で使ってる人たちがもしこれを見てるのなら…。
本当にごめんなさい。
私は、内心で顔も知らない誰かに謝り目の前で頭を下げてるフミさんに意識を戻す。
「今回は許してあげます。上司としてのフミさんに免じて…。次は…ありませんからね?」
「肝に銘じとく…。ほんとに…。」
そうして、苗字決めゲームも終了し最後にメイドさんの自己紹介が始まった。
「それでは、最後に私が自己紹介をしましょう。私は、魔帝国ヘルデイズ王家直属のメイドであり、このは様…貴方様のこれからの身の回りのお世話兼護衛当の役割を承ったいわば専属メイドです。名を、仙凪棗〈センナギ ナツメ〉といいいます。」
「魔帝国?」
どこだそこ…。少なくとも、私は何も聞いたことがない。
「あー、それについては俺から説明する。俺たちが今向かってるのは、魔王軍の本拠地魔帝国ヘルデイズ。向かってる理由は、お前…じゃなかった…このはを次期魔王に推薦するためだ。」
「へー…魔王に推薦…。魔王に推薦?…え…??」
「何故、魔法師団団長や騎士団団長、魔将である俺や専属メイドの仙凪が来たと思ってる?迎えだけだったら、俺と仙凪だけで良かっただろうが…魔王に推薦となると話は別だ…。特に、このはのような”出遅れ”はな」
「で、出遅れ…。」
「ああ、他の推薦者たちは今はこのはと同じ10歳だが全員6歳ごろから学園などで授業を受けて今では最低でそこら辺のBランク冒険者並みの力を持っている」
「出遅れ…」
「だから、これから約半年で最低でもCランク…。できればAランク冒険者並みの力をつけてもらうために俺たちが一緒に迎えに来たってわけだ」
「で…おく…れ」
「おい、聞いてるか?」
「出遅れ?」
「返事が変になってるぞ?」
あれから、仙凪さんやななさん玄破さんたちの優しい言葉で立ち直り…明日から本格的な修行を開始することになった。
ちなみに、その時に知らされたのだが…。初めに目を隠してきた魔法使いさんはつむぎさんだったらしい…。
もっと、大人っぽい気がするというのは内心で留めておこう…。
お読みいただきありがとうございました!
今日は少なめの文字数でした…次はもっと書く!
では、また次の小説で~