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14.目的と聖女リオン
ミレアに情報をもらって、しばらくが経った。
私はまた、|彼《・》|ら《・》に会いに行くことにした。
最近忙しかったおかげでまあまあ昔のことに思えるけど、転移当初に私たちを襲ってきた彼らだ。
ミレアが書いたことが本当なら、彼らの目的も同じ可能性が高い。
「こんにちは」
「誰だ? ……聖女サマか」
「そうですよ、久しぶりですね」
「そうだな」
「今日はあなたたちの目的を聞きに来ました」
「何だ? 俺たちは答えないぞ」
「文章なら答えてくれないでしょうね。ですが、はい、か、いいえ、は答えてくれるのでしょう?」
「……そうだな」
「おい、オレたちの目的が分かったの?」
「あなたたちは知りませんが、他の組織の目的なら分かりました」
「「……」」
急に無言になられた。
「ま、その通りなんだろうな」
「だよな」
「聖女サマもあんまりその内容を言わないほうがいいぜ、あんたまで疑われる」
「別に構いませんけどね」
「……」
「また面白いことがあったら来ますね」
「……」
そう言って立ち去る。
彼らは、牢の中から、私が去るのをじっと見ていた。
「なあ……あんな聖女様で大丈夫なのか?」
「俺らにとっては悪いことではないが……これからが心配だな」
「もうちょっと嘘つこうとした方がよかったのか?」
「いた、それでは聖女様が困るだろう」
「だよな……どうすりゃいいんだよ」
「俺もそれが知りたい」
後ろで、|彼《・》|ら《・》がごにょごにょ喋っていたのに、ミアは気づかなかった。
「ありがとうございました」
牢を出る際、牢番に挨拶をする。
「何かわかりましたか?」
「いいえ。あちらの方は重要なことはしゃべってくれませんでした」
「そうですか……。ミア様には期待しておりますので、是非また訪れて、何か聞いてやってください」
「もちろんです。」
◇◆◇
そして、聖女がやってきた。
「こんにちは、わたくしはリオンと申しますわ。聖女ユミ、どうぞよろしくお願いいたしますわ」
「こちらこそよろしくお願いいたします、聖女リオン」
これはまた個性の強い聖女だなぁ。
まあ聖魔法が使えたら幼いうちから教育が始まるからね。仕方ないと言えば仕方ないかもしれない。
……リオンはもともと貴族だったのかな?
こんなことを考えることになるくらいだったら、調べておけばよかった。
「私はヒマリよ。リオン、これからよろしくお願いするわ」
ヒマリも今日はいる。
ミレアの方も誘ったんだけど、来なかった。残念だ。
そしてヒマリはもう聖女リオンを呼び捨てにしている。
リオンは大丈夫なのかな?
「聖女リオン、リオンと呼んでも構いませんか?」
「いいわよ。その代わり、わたくしもあなたをユミと呼ぶわ」
「ええ、それで構いません」
「聖女ヒマリ、あなたもヒマリと呼んでもいいかしら?」
「あなたが呼びたいんでしたら構いませんわ」
「ではそう呼ぶわ」
ヒマリのツンデレが出ちゃっているなあ。
「何生暖かい目線をよこしているのよ」
「いえ、なんでもないですよ」
あなたのことをツンデレだと考えていたなんて思っていても言うわけが無いじゃないか。
「あら、ヒマリはそういう感じなのね」
リオンが笑い出した。
賢いな、この子。甘えられて育てられたわがまま女かと思っていたけれど……
そんな人物を教会がこちらによこすわけが無いと言われればそういう気もする。
じゃあリオンは我が儘っぽいけどそうじゃない、ということで考えておいていいかな?
そして、多分リオンはヒマリがツンデレなのに気づいているな。
「そうですよ」
「二人して何かしら!? 私の悪口でも言っていたの!?」
「違いますよ」
「違いますわ」
だよね、ツンデレは悪口なんかじゃないもん。
「二人して本当に何!?」
「ただの内緒話ですよ」
「……そう」
「そうよ、あなたが可愛いわね、と話していたのよ」
あれ、リオン、そのこと言っちゃうんだ。
「可愛い!?」
あ、ヒマリの顔が赤くなった。
「今のお顔も可愛いですよ」
「可愛らしいわよ?」
「二人して……私のことおちょくっていますね!?」
あ、バレた。
「嘘は言っていませんよ。可愛らしいと思ったのは本当のことなんですから」
「本当に可愛らしいと思っているわよ」
「……」
あ、詰まった。
多分、言い返してもいい方向に進まないことを理解してくれたのかな?
だったら行幸だ。
「あなたたち二人は今日が初対面よね?」
「そうですよ」
「そうよ」
「なんでそんなに仲がいいの?」
何故って……
「思考回路が似ているのではないの?」
あ、私もそれを考えた。
だってリオンがヒマリをツンデレだととらえなければこうも仲良くはならなかったと思う。
「けど、ヒマリがいなければこんなに仲良くはなれませんでしたよ。ヒマリのおかげです」
「ユミ……あなた私のこと子供っぽく見ていない?」
「……どうでしょうね?」
「まあ、私が役に立ったならそれでいいわ。だけど……私を置いて話をするのはやめて頂戴!」
ツンデレいただきました。
顔がまた赤くなっているしそっぽ向いてくれている。
典型的なツンデレ……だよね?
「分かりました」
「分かったわ」
そして顔を見合わせて笑った。
「もう、言ったそばから二人してまた私を置いて行って!」
「ごめんなさい」
「申し訳ないわ」
そして、また顔を見合わせて笑うのだった。
聖女リオンとの初対面は、こんな風ににぎやかなまま時間まで続いた。
うん、本当にヒマリのおかげだ。