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ビター・スイート
「エラー!!ハッピーバレンタイン〜!!」
真っ白な空間、Anti-voidの床に塗料が現れ、そこから出てきたのは紛れもない守護者であるインクだった。その手は後ろに回されているがハート型の箱を持っている。
「今日に限っテお前が来るのカ…」
そんなインクを迎えたエラーはチョコレートを作っていたようで、固まったチョコを型から外してラッピングをしていた。
「そのチョコエラーが作ったんだよね!」
興味津々でエラーが作ったチョコレートを眺めているインクが確認するように尋ねる。
「まあナ……半分は自分用だガ…他の奴らにあげるやつもアる…」
返事をするのが面倒臭いと言わんばかりにぽつぽつと返事を返すエラー。
「え!!ボクも食べたい…」
上目遣いでエラーを見るインクだったが、エラーから返ってきた返事は快いものではなかった。
「お前にはやラねえからな!!クソインク!!」
ラッピングし終わったチョコの袋を抱えてエラーはインクから逃げるようにポータルを開く。ポータルに入ろうとしたその刹那、インクが口を開いた。
「ボクもチョコレート持ってきたのになぁ…」
ハートの箱を差し出して珍しく頬を染め目を逸らすインクを見て、エラーは目を見開いた。
「……ハ…?」
驚いたエラーは自身と、すぐ後ろまで来ていたインクの下にポータルを開いてしまった。
そしてポータルに2人が入って到着したのは、真っ白な部屋だった。壁に「キャンディキスチャレンジ チョコver.をしないと出られない部屋」と書いてあるパネルがかけられており、真っ白な机が置かれている。机の上にはチョコレートの箱とキャンディキスチャレンジチョコver.のルールが書いてある紙が置かれている。
「何ダよこノ部屋!!!!!!」
エラーが真っ赤になりながら金切り声を上げる。一気にグリッチやノイズの量が増えている。その勢いでガスターブラスターを発射するが壁には傷一つつかない。
「まぁまぁ……」
暴れるエラーを嗜めようとインクは声をかけるがポータルを開こうと苦戦しているエラーの耳には入っていない。
「そんなこト言ってるくらいなラお前もどうにかしようとシろよ!!!!!」
「破壊者のキミが壊せないものはボクも壊せないよ…」
インクがそれなりにごもっともなことを言っている。エラーが不満ながらもインクに向き直るとインクはルールの紙を読み上げ始めた。
「ええっと…『この部屋はキャンディキスチャレンジチョコver.をしないと出られない部屋です。ルールは至って簡単。2人のうちどちらかがこのチョコの箱に入っているチョコをどれか一粒食べます。チョコを食べない方はアイマスクがあるので目隠ししてくださいね。そして2人で深〜いキスをしてチョコを食べていない方がチョコの味を当てます。チョコの箱にはミルク、ビター、ホワイト、フランボワーズ、キャラメル、ピスタチオの8つの味のチョコが入っています。そのうち4つのチョコでチャレンジを行うとこの部屋から出られます。』だって。」
読み進めるうちに頬がみるみる染まっていくが出来るだけ落ち着き払った声で読み上げるインク。
「『だって』どころじャねえダろ!!!」
またもや真っ赤になって大声をあげているエラーにインクが声をかける。
「『部屋を出ると同時にチョコレートをプレゼントします』っていうのも書いてあるよ…!」
「ク…クソ……や、やるしかねェか……」
チョコが手に入ることを聞いたエラーはすぐさま態度を変えた。
「なんだか急に素直…?……だね…」
「素直なんかじャナい!!!ただ妥協しただけダ!」
先ほどエラーが必死に訴えている様が慌てているように見えるのは気のせいだろうか。
「なら、しよっか…?」
優しい声と表情でインクがエラーを見つめる。
「終わったラみんなniチョコ配るの手伝ってもらうからナ!!」
「はいはい、分かったよ、」
そしてインクがエラーに目隠しを渡す。
「エ?オレが当てる方ナノかよ?!?」
「やるからにはエラーにしっかり味当ててもらいたいし……ね?」
エラーは不服そうだが2人の心に芽生えた「やるからには」というこだわりによってエラーがチョコの味を当てることになった。エラー目隠しをつけ無言でインクを急かす。
「じゃあ、いただきまーす」
インクが一つチョコをつまみ、口に放り込む。
「このチョコめっちゃおいし〜!!!!」
「生殺しじゃネェか……」
エラーがチョコを食べられずがっかりしている一方、インクはチョコの味に舌鼓を打っている。
「エラー…こっち向いて…?」
「どこ向けbaいいんだよ!!!」
インクを探そうとエラーが手を伸ばす。空を切る手をインクがとり、そのままエラーにキスをした。暫しそれぞれの舌が絡み合う水音だけが響く。
「このバカインク!!!オレが目隠ししたまんまキスしてくんじャねェよ!!!」
頬が染まった顔で悪態をつくエラーがごしごしと口を拭う。グリッチが一気に増え、ブルースクリーンになる直前だったようだ。
「いやぁ……その方が効率的かなって…」
少しばつが悪そうなインクだが、口角が上がっていて反省はしていないことが見て取れる。
「ホワイトチョコっていう分かりやスい味のチョコだったかraよかったガ……」
エラーの発したホワイトチョコという言葉に正解を示す音が部屋に響く。
「お、正解らしいよ〜」
「よっシャ〜!!まあ当然だna!!」
それから2人は、着実にチャレンジを進めていった。
そして、最後の一つについて、エラーが答えを述べる。
「………ミルクチョコレート…?」
部屋に響いた音からして不正解だったようだ。
「エラーになら分かると思ったのに…ビターチョコだったよ…?」
エラーは心から驚いた。あれは、あの甘さはミルクチョコレートだったはずなのに。部屋から出れてチョコも手に入ったが、エラーのもやもやした気分は晴れなかった。その後2人はちゃんとチョコを配って帰路に着いた。
*
「あのクソインク…味わかんなくなルっつーの……」
1人で思い出して真っ赤に頬を染めたエラーの独り言が、Anti−voidで音を立てた。