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夜を描く。No.1
ガタンゴトン、ガタンゴトン
少女は……いや、年齢はわからない。とにかく、女は電車に揺られていた。
女は夜を描く者。街から街へ、国から国へ、と旅をして、人々に夜を届ける。
夜を描く者は、何人かいる。一人では、描ききれないから。毎日、毎時間、毎分、毎秒、必ず|何処《どこ》かで夜になる。それ|故《ゆえ》に夜を描く者は何人かいるのだ。
〈次は~|鈴柳《すずやぎ》~。|鈴柳《すずやぎ》~。終点です。〉
「ん。下りないと。夜を時間通りに届けないと怒られちゃう。」
そう|云《い》って女は電車を降り、歩き出した。街外れの丘に向かって。
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「うわ。ギリギリだ。急いで用意しないと。」
そう|云《い》うと女は鞄の中からイーゼル、キャンパス、絵の具、その他絵を描くのに必要な物を取り出し、今日の夜を描き始めた。美しく、細かく、誰も見ないようなところまでしっかりと描きこむと、キャンパスだけを地面に置いて、後の道具は片付けた。そうすると、辺りが段々と暗くなり、女が描いた夜が空へ映し出された。
「ふふ。……次は、|何処《どこ》の夜を描きに行こうか。」
女は満足そうに笑うと、丘を後にした。
今日も、夜は描かれる。夜を描く者の手によって。