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みなと?
ゆうせいの部屋へ向かう途中、駅前の喧騒を歩いていた二人の前に、一人の青年が立ち止まった。「……あれ? 星太郎?」声をかけられ、星太郎の身体が小さく強張る。そこにいたのは、星太郎の肩口ほどまでしか背のない、小柄な青年――みなと、だった。大学が違うため、別れてからは一度も会っていなかった星太郎の元カレだ。みなとは小柄でどこか少年のような愛らしさを残しつつも、少し気怠げな雰囲気をまとっていた。彼は上目遣いに星太郎を見上げ、親しげに微笑みながら一歩距離を詰めてくる。「みなと……っ」「やっぱり。久しぶり。元気にしてた?」その自然な態度に、星太郎は過去の記憶が蘇り、どう応じていいか分からず動揺してしまう。二人の間に流れる妙な空気を察したゆうせいが、すかさず星太郎の前に一歩出た。高身長のゆうせいが立ちはだかると、小柄なみなとの身体はすっぽりとその影に隠れてしまう。ゆうせいは周りの目も気にせず、星太郎の手をさらに強く握りしめた。「……誰、ですか」ゆうせいの声は、いつも大学で見せる明るいトーンとはまるで違い、低く冷ややかだった。みなとは、自分を見下ろすゆうせいの鋭い視線を受け止め、それから二人の繋がれた手に視線を落とした。すべてを察したように、不敵な笑みを口元に浮かべる。「あぁ、なるほどね。星太郎の、今の彼氏さん?」「……だったら、何」一触即発の空気が流れる。体格差のあるゆうせいに見下ろされても、みなとは全く物おじしていなかった。星太郎は、ゆうせいの背中越しに伝わる怒りと、みなとの挑発的な視線の間で息を呑んだ。「別に? 邪魔するつもりはないよ」みなとは、大きなゆうせいの脇からひょっこりと顔を覗かせ、星太郎を見上げた。「ただ、星太郎がそういう大柄な執着系に捕まってるのが、ちょっと新鮮でさ。小柄な俺の時とは大違い」「みなと、もうやめて……!」星太郎が遮るように声を上げる。「冗談だよ」みなとはくすっと笑うと、ゆうせいをまっすぐに見上げた。小さな身体のどこにそんな度胸があるのか、彼は堂々とした態度で言い放つ。「でもさ、彼氏さん。星太郎って、結構寂しがり屋だから。泣かせないようにね」それだけ言い残すと、みなとは小さくて軽い足取りで、人混みの向こうへと消えていった。残された二人の間に、重い沈黙が流れる。ゆうせいはみなとが去った方向を睨みつけたまま、繋いだ手を離そうとしない。その手は、悔しさと嫉妬で少しだけ震えていた。「ゆうせい……」星太郎が恐る恐る名前を呼ぶと、ゆうせいはゆっくりと振り返った。その瞳には、今まで見たこともないような、激しい独占欲と焦燥感が入り混じっていた。「……帰ろう、俺の部屋」短くそう言うと、ゆうせいは星太郎を引っ張るようにして、足早に歩き出した。