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4 一之瀬さんの気持ち
「わたしね、『さわ同盟』に入ってるの」
優恵は、そう告げた。優恵も遠慮なく「結月、」と言うのでそう呼ぶことにした。さりげなく、嬉しさが込み上げた。
「さわ、同盟?」
さわ。副島さわ。
「そう。副島さんがリーダーのグループ。副島さわだから『さわ同盟』。副リーダーが大江さん。わたしは入りたくなかったんだけど、スカウトされちゃったから」
「…みんな、スカウト?」
「ううん。大半は仲間はずれにされたくないって群れる子たち。わたしは独りが好きだし」
わたしといるより、独りが好きなのかな、と思う。
「さわのせいだよね?学校、いけなくなったの」
「えっ…」
きっぱりと、優恵は言う。
行かない、じゃない。行けない、って言ってくれた。
わたしのせいじゃないよ、って言ってるみたい。
「ち、違った?違ったら、ごめん」
「ううん。嬉しい」
一瞬、優恵は戸惑っていた。
「ありがと。__それでね、わたしは断言するよ。結月のことは嫌いじゃないから。さわがいじめたいだけだからさ。さわと芽郁に逆らえないだけだから。本当は、逆らいたい。
前、やめよって言ってみたんだ。そしたら、このざま」
優恵は哀しそうな顔を見せて、ひざを指さした。
痛々しいアザ。青黒く染っている。
「副島さんに__」
「そう。あの子、嫌い。人を傷つけて、恋愛とかしか考えない浅はかなやつだもん」
「わたしと、同じ」
そう、言葉がこぼれた。
「え、結月と、同じ?」
「わたしも、根拠ない噂で殴られた。殴られそうになった、だけど。死ぬかと思った」
「_そっか。先生も協力してもらえないみたいだしさ、かかわらないでおこ。結月が行けないのは、結月のせいじゃないから。お母さんに叱られちゃうから、またね」
「うん、また」
去っていく優恵をみて、嬉しかった。
わたしには、味方がいる。心づよい、味方が。