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飽き性、キュートアグレッション
⚠️微いじめ?一応注意
テレビをつけると、『一番忍耐力があるのは誰か!?一時間耐久ダンベル上げ対決!』という企画をやっていた。玩具や偽の本や花で飾られたスタジオの中で、芸人やアイドルが顔を真っ赤にして大きなダンベルを持ち上げている。昨日の歌番組で爽やかに歌っていたアイドルの必死な形相を見て、シロは思わずふっと鼻で笑ってしまった。運悪くそこに居合わせた姉のクロに「なに笑ってんのよ!」と怒鳴られる。それで、そういえばクロはアイドルが好きなんだった、と思い出した。
世の中の大体の人間は、自分よりも忍耐力がある。シロはそう考えている。
三日坊主なんて生易しいと思えるほど、シロは飽き性だった。我慢することこそ我慢ならないし、なんでもすぐに飽きてしまうし、打たれ弱い。そんな性質は集団生活の中で格好悪いし足並みが揃わない。だからシロは嫌なことを我慢できない自分を隠すように、好きなことだけを選びとってきた。
みんなが盛り上がっていて、かつ自分も入れそうだと思ったときにするりと紛れこめば、案外シロが多くの工程をサボっていることは周りにバレない。
クガネを除いては。
クガネはどういうわけか、早くからシロの性質を見抜いていた。まだ仲良くなる前、あの鬱陶しい長い前髪の隙間から、飄々と面倒事をかわすシロに対して、軽蔑のような、ただ個人的な不快感のような視線を浴びせていた。それでもシロはクガネに積極的に話しかけた。だってクガネはシロのタイプだったから。
そう。シロはクガネを気に入っている。クガネは学校の誰から見ても愚図で鈍間だけれど、顔はかわいいし(少なくともシロのタイプであるし)、むしろ不器用なところがいいのだ。
今日だって、クガネはシロがサボった廊下の掃除を一人で済ませたことだろう。忘れていたわけではない。覚えていたけれど面倒だったし、クガネがそのせいで不快な気分になるなら愉快だと思ったのだ。
べつに、忘れてたって言えばいいし。あたしとクガネ、友達だし。シロは自分に言う。だからこれは、ただちょっとした意地悪っていうか、戯れっていうか、クガネがかわいいからするキュートアグレッションみたいなもの。クラスで橋本さんが丁田さんに対してしてるみたいなあれじゃない。そういうのじゃない、そこまで性格悪くない。
シロは自分に言い聞かせる。だから大丈夫。