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スローライズ
iPhoneの通知音を短編小説に…という超絶面白そうな企画の参加作品です。
温かい目で見てください…🫣
暗い暗い海の底へ沈んでいく。
抵抗できないほどの水圧と、「ああ、もういいか」と何処かで感じる諦め。生きる意味を見失うには十分すぎる材料だ。
深く澱んだ、ゴボゴボとした音さえ、耳に届かなくなっていく。意識が途切れ、とうとう何も見えなくなってきた。
あぁ…私はここで死ぬんだな。
その時、小さく、とても小さく、掠れた音が聞こえた。
何処だ。何処から聞こえる?この暗い海の底で、何か音が聞こえるわけがない。
意識を繋いで何とか耐えているうちに、その音はだんだんとはっきりしてきた。
カン、コン、カカコン、コン。
音が鳴るたび、一定の間隔で身に響く。その音はまるで深海の闇を教えてくれるようだった。その証拠に、少しだけ澱んだ音が混ざる。
本当は何の音もならないはずだ。この美しい音も。本当はただの気休めにしかならない。
でも、その音は本当に、動けない体に深く染み渡った。もしここで別の音が鳴っていたら、恐らくすぐに死んでいただろう。それ程までに、この音がまさに求めていたものだったことに気付かされる。
音が彼女を地上まで連れて行ってくれる?そんなわけがない。分かっている。分かっているのだ、それでも…
彼女にとってその音は…ある種「救い」のようなものだった。
カン、コン、カカコン、コン。
カン、コン、カカコン、コン。
カン、コン、カカコン、コン…
むっず。でも楽しかったです。