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魔族メイド in 禁忌の館編!! 〜誘いの契約〜
しばらくの間、わたしは森の中の小道を歩いていた。
(この森、何か気配が異様だな…)
そう、森に入った時はまだ薄かったけれど、奥に進むにつれてその異様な気配がどんどん濃くなっていく。
何か特殊な魔術を使った跡…?
その時、「ねぇ」とどこからか声を掛けられる。
反射的に本能が声の方を見る。
「何だ!?」
そして、わたしは子供の頃に学んだであろう構えをする。
その方向には、木の上で伸びやかに寝転んだような体勢の女の子がいる。
その女の子は、人間に見える。
だが、わたしには及ばないけど強力な魔力を秘めている。
女の子は、わたしに向かって「ねぇ」と言っているようだ。
「あなた、《|宵象《よいさき》》家って興味ない?」
不敵な笑みを浮かべて、女の子は木から軽々と降りてくる。
「ごめんなさい、あなた、メイドとしてできているからね。つい声を掛けてしまって」
メイド…、ああ、そういうことか。
「ねぇ、あなた、宵象家に来てくれない?今メイド募集中なの。でも、人間界にはそういう職業の人間が少なくて。」
え?人間界ではメイドという職業が少ない?
「あなた、人間と友好的になれそうな性格してるし…、どう?私のお母様、とっても綺麗で優しくて」
まあ、メイド生活が嫌いだった訳じゃない。
契約解除呪文は自分で解けるし…。
人間は嫌いじゃない。
どうしよう。
「まあ、いいけど」
気が付いたら口が動いていた。
すると、女の子はぱぁっと笑顔になり、「ありがとう!!」と言う。
宵象家…、おそらく魔族の間で密かに噂になっている人間の血族の家だろう。
魔王には興味は無いけど、人間の世界には少し興味がある。
おっけー、また閉じこもり生活だろうけど、いいか。
「じゃあついて来て」
女の子は、先ほどまで座っていた木の裏に案内する。
そこには紫色に輝く縁陣が描いてあって、その雰囲気から《転移魔法ー》だろう。
女の子は、呪文を詠唱し始める。
結構長い文。
そして、プツンと詠唱は終わる。
その瞬間、視界がぐにゃりと歪み…。
気が付くと、暗い色の木で出来た館のような建物の一室にわたしは居た。
「ようこそ。宵象家へ!」
一緒に来た女の子は、にっこりと歓迎する。
「あ、そうか」
まず、宵象家の人の紹介や、この館の注意しなければいけない事、家事などの説明をうける。
女の子の名前は宵象 チナ。
宵象家とは、もとは大魔法使いで有名だったが、ある日、王族に失態を犯したチナの祖父が国を追放され、人間が近いにくい魔王城から転移魔法を構えて遠く離れた館(旧別荘)に行けるようにした。
なるほど…、だからチナは、強力な魔力を秘めていたのか。
あ、また千文字超えてしまいました笑
もう目安はやめます笑笑