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ep.4 運命より固い誓いを
2人の間に少しした心地よい沈黙が流れた。2人はそれぞれの思いに浸っていた。そうして、刻々と時間が過ぎていく。そんな中、静寂な空気を保ったまま、リアムはノアに話しかけた。
「もしノアさえよければ、僕と友達になってくれないかな。君みたいな心優しい人に出会ったのは生まれて初めてなんだ。ノア自身は優しくないと思っているかもしれない。けど、そういう過去を持っておきながら、悪の道に走っていないのはすごいと思うよ。しかも、反省できてる。世の中には自分のしたことに気づかなかったり、失敗を省みることができなかったりする人間が数多くいる。僕はそういう人を大勢見てきた。だから、ノア。君はとても清くて心優しい。一国の皇子が言うんだから間違いないよ。そんなノアに惹かれたんだ。僕はノアと友達になりたい。僕の心からのお願い。」
ノアはリアムの真剣な様子に心を打たれた。こんな自分を受け入れてくれる人が現れるなんてリアムは思っても見なかった。心がじんわりと温かくなっていく。氷が溶けていくような感覚で、それは、後悔と自責で塗られたノアの世界が鮮やかに色づく瞬間だった。
ノアの表情が少しずつ柔らかくなっていくのを見て、リアムは喜びと嬉しさでいっぱいになる。恩人の心を少しでも救えたことでだ。ノアは今までの暗い表情とは一変し、花が綻んでいるような明るい笑みで言った。
「もちろん。こんな俺でよければ、末長く...ってこれじゃあプロポーズみたいだな。そうだな...」
ノアはいいことを考えついた子供のような表情をする。そして、ノアはリアムの前で跪き、手の甲を額に軽く押し当てる。これはこの国での最上級の敬礼と呼ばれているものだ。それは忠誠を誓う儀式で、年頃の少女からは永遠を共にし、忠誠を誓うことを約束する、誰しもが憧れる儀式としても有名だ。それにリアムは驚く。
「私、ノア•アーベントはリアム•コーデン•フォーサイスに永遠の忠誠と友情と愛を身命を賭して捧げる。病める時も健やかなる時も永遠を共にすることをここに誓う。」
誓いの儀式のことは知っていたけれどまるで結婚式のようだとリアムは思う。
ノアは上目遣いでリアムを見つめた。そして、手の甲を口まで近づけてちゅっと軽く口付けをした。高々にリップ音が小ホールに響く。なかなか、ロマンチックなことをしてくれた。
ノアはそっとリアムの手を下ろし、にこりと微笑む。リアムは手の甲を見つめ、ノアが口付けたところにそっと唇をつけた。
リアムが不敵な笑みをノアに向けると、意外にもウブなようでノアは顔を赤く染めた。
「な、な...どうしてそんなことを...」
「なんでってノアもしたでしょ。お返しだよ。お返し。」
そうノアをからかうとますます顔を赤らめる。
その表情が愛おしく感じる。
いつしか、リアムはノアとずっと一緒にいたいと思うようになっていくのだった。