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気ままなボスと世話焼き部下。
ワイン飲むボス猫と蝶ネクタイを付けた部下猫の絵を見てなんとなくおもいついた
多分続かない
ボスと部下が話したりする話
ボス:ワインが大好きなおちゃめなマフィアのボス。それなりに危ない仕事もするけど基本部下に丸投げ。腕っぷしは強い。部下に狙われてるのを知ってるけど、面白いからほっといてる。
部下:ボスに振り回される従順な忠犬。なぜか働いてるうちに構成員からアンダーボス兼コンシリエーレにまで上り詰めた。ひそかにボスの首を狙っている。ボスのことを少し下に見ている。
名前
ソルジャー1:とら
ソルジャー2:ミケ
幹部:さび
部下部下、じゃ味気ないので部下の名前はタマ、ボスはボスです、猫っぽい名前にしたい(ねこっぽすぎる)
~なんやこれ!!おふねの語群解説!!~
・ボス(ドン、首領)ってなーに?
マフィアの中心的存在。マフィアの中(ファミリー)で絶対的な権限を持っている者。
・コンシリエーレ(相談役ってなーに?
ボス(ドン)の相談役のこと。きっと聞き上手が好まれる…(?)
・アンダーボスってなーに?
マフィア内でナンバー2のボス。いわば中ボス。ボスを殺してドンになることもあるみたい
・カポ(幹部)ってなーに?
ソルジャーの監督役。いわば幹部で、構成員の失敗は幹部の失敗とされる。
・構成員(ソルジャー)ってなーに?
スタッフ、団員、メンバー…いわばマフィアの仲間たるものです、ボスには従順に!!
・準構成員(アソシエーテ)ってなーに?
いわばソルジャーへ特訓中の「みならい」ソルジャーになるにはある程度の殺しの経験などが必要。
少し柔らかすぎるマフィアの日常とでも思って読んでね
「ボス!!」
「ワインはやらんぞ」
「いや結構でございます…」
「タマ、やっぱ飲むか?」
タマ__。最近ボスが僕につけたあだ名だ。ちゃんと本名はあるというのに、タマ、何度もそう呼ばれる。でもやっぱりこの人の人懐こい目を見ると、どうにも怒れなかった。
僕が苦い顔をすると、ボスは面白げに口の端をあげながら、中折れ帽に手をやった。上等なスーツのしわを伸ばし、ソファに深く腰掛けた。きらりと黒い目が細められる。
「何が面白…まぁ、トラが自宅で死亡していたらしく、無数の銃跡があったと、文字通り蜂の巣で。発見したのはミケと幹部のさびです」
「そうかぁ、ワイン飲むか?」
のんきなものだ。今僕という部下に首を狙われていたって、ボスはのんき。人一人死のうと、仲間が死のうと、顔色一つ変えず、生返事。
忠誠を誓った身としては少しかなしいものだが、ボスはそういう人なんだと割り切っている。
かといって特に驚きもしない僕も異常なのかもしれない、ボスのそばについて早5年。下の者が変わっていくばかりで、今回のトラも顔なじみであった。悠々とワイングラスを揺らして、香りを楽しんでいるようだった。
この人といると生と死が曖昧になる、ボスは命乞いをする相手にも容赦なく引き金を引くような残虐非道…と思えば、ふとしたときに子供のような笑顔を見せてくる。生きるか死ぬか、そんな人生を楽しんでいるらしい。まるでゲームの一つみたいに。
コンテニューはできやしないのに。
「まぁ座れ、ちょうど話し相手が欲しかったんだ。」
「ボス…」
朗らかな笑顔で隣をたたいている。でもどうも頭に「ボス」という地位が刷り込まれてるので、そこに座るのは気が引けたけれど、指示に従わないのは部下としてあるまじき実態。
初めて座った柔らかな皮のソファに深く体を沈めると、さも愉快そうにボスは笑った。
仲間が死んで、危惧すべき状態で、どうにもここまで笑えるのはボスだけ。ボスはバカなのだ。とんでもなくバカで、恐ろしい。
「飲むか~?ナパヴァなんとかとかいう変なお高い奴だ」
「結構です」
「旨いぞ~」
ボスには距離感というものがない。概念がない。だからお構いなしに近寄って、ワイングラスの淵を口に押し当てられた。もともと酒が飲めないたちなのだ、自分は。病気だとか、先天性だとかのものでもなく、ただ弱いだけ。
今日もボスは僕をからかうような、細い目で笑った。
昔仕事である場所に出向いて、抗争に巻き込まれて、まるで敵の血をシャワーのように浴びながら笑っていた姿と同じ。あの日にスカウトされたのだ。
こんな話をすると下の準構成員は苦笑い。ボスはソルジャーになる見込みのあるやつと共によく殺しの仕事に行くらしくて、自分が人を殺す様を見せつけて、にやりと笑うそうだ。赤子の手をひねるように人の首をひねるらしい。
一部の界隈では悪魔だとかうたわれているらしいが、どうにも見えない。むしろ最近は天使なところが見えるけれど、こんなんじゃボスを殺せないとつくづく思う。
僕がワインを飲まないことをやっとわかってくれたのか、つまらなそうにグラスを机において、デカい体を押し当ててくる。でっかくて強いって、自然界でも人間界でも最強の条件をしっかり満たしてるじゃないか。
「トラはどんな顔をしていた?」
ふと口を開いてそんなことを聞いてくる。変な人だ。
「目玉に杭が刺さってて、舌はのどから飛び出してたので変な顔でした、にやけてるみたいな」
「さすが私の優秀な部下、無抵抗に殺されたんだな」
皮肉なのかジョークなのか、どちらにせよ下手である。
「君は死なないよな」
「え?」
「死なないに決まっている。どうも君はずいぶん恐れしらずみたいだしな」
「…この身が尽きるまで、あなたのおそばに」
「抗争にわざわざ乱入してまでスカウトした甲斐があったな…優秀な部下だ、ボスはうれしいぞぉ」
「それほんとに喜んでるんですか…」
『君は死なないよな』きっと約束はできない。仕事の偵察不足で死ぬかもしれないし、ボスを殺そうとして返り討ちにされるかもしれない。でもやっぱり黒い目が少しゆらいだのが気がかりだった。
このひとにも悲しみっていうものがあるのだと知った。
隣でゆっくり目をつぶって、のんきにあくびをするボス。この行動のすべてに、きっと僕への信頼が詰まってる。5年もそばに居て、思い出すと救われたところばかりだ。過激派に巻き込まれた時も、アジトに仕掛けられた爆弾を解除したのも(この時は運試しだったけど。)
どうにもこののんきなボスを手にかけるのも、どうしても人情が邪魔をする。仕事に情をもちこむと引き金さえ引けなくなるのだから思い切ってやればいいのだけれど、同時にこのボスがいなくなると考えると寂しい。
こうやって今日も僕は、ボスの暗殺を失敗した。ブランケットをかけると、まるで子供のような寝顔で寝付くボスは、どこまでも無邪気で、残虐である。
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ボスはそのまま朝まで寝たようで、昼頃、アジトでサンドイッチを食べていると、ブランケットを返しに来て、サンドイッチを一つ取られた。
それから久しぶりの殺しの仕事が入ったと聞いて、ボスと一緒に向かった。向かう途中もボスはウキウキで、どうやって殺してやろうかと僕に事細かく聞いたり、話したりしてきた。
思う通りの殺し方で殺れたのが満足なのか、べっちゃりと赤い液体をつけて、がははとでかい声で笑って、アジトに戻った後は『ボスの断末魔コレクション』を見せつけられた。どれもむごいもので、この人が敵じゃなくてよかったと心の底から思う。
ボスは死体を見るのが好きなんだろうか。血を浴びるのが好きなのだろうか。やっぱりサイコパスか何かに等しいことに変わりはない
そして今はまたサンドイッチをねだられ、心を込めて作ってる時だ。既に8切れの食パンがボスの胃袋の中。あれだけでかい体を維持するとなると、食費も相当なのか?と思ったけれど、日によって食べる量は全然違う…ボスは不思議な人だ。
後ろをちらりと見やると、下手な口笛を吹きながら、ボスはにゃあとなく丸い毛玉を撫でた。先ほど殺した標的が飼っていたものらしい。あのような社会のゴミに飼われていたこの猫も気の毒なものだ。
「タマが結婚したらきっとお相手はさぞかし嬉しいだろうなぁ」
死んだおやじみたいなことを言いながら、むふふと目を細めた。そもそも僕は人殺しだ。ましてや妻を取ろうなんて、夢にも思わないし、きっとできない。
「俺はタマじゃなくてもっとかっこいい名前があるんです」
「タマはタマだ、それ以上でも以下でもない」
「…」
これじゃまるでお友達だ。ボスと部下という主従関係であるのに、スカウトされた時の風格のあるボスはめっきりご無沙汰である。
チャキチャキと銃をいじくりまわすボスの前にサンドイッチたちを置くと、掃除機も舌を巻くレベルで食べ始めた。
ボスの横でうずくまる猫には猫缶をたっぷり入れた皿を出してやった。にゃくにゃくと妙な鳴き声を出しながらがっつく姿に心がほだされる。やっぱり猫というものは癒しだ。人殺しであれ、前任であれ、どんな人にとっても癒しだ。長いマフィア生活でこうも警戒がゆるむときはなかなかない。
この猫が人だとしたら、可愛さで誘惑するってところだろうか、きっと強いに違いない、いや、何を考えてるんだろう。
「コーヒーあるか?」
「いうと思って」
「さすがタマだなぁ」
ご機嫌なランチを過ごしたボスは、殺したボスの首の写真を見せてやるとスマホを開いた。白目をむいた、首からがしたがない物体を顔の横に持ち上げて、ボスは笑顔でピースをしている。人は生きてても死んでても気持ちが悪い。
「これとかどうだ」
腹踊りをしている別のマフィアのソルジャー。真後ろに仲間と思われる死体が転がっている。その死体が言外に語る意味は『あとでぶっ殺す』
恐ろしいものだ。けれど脳はちゃんと働かなくて、動物の写真かのように、あたかも当然に処理を始めた。フクザツだ。
無心でボスのカメラロールを見つめていると、舌を出して笑う犬の写真が出てくる。ゴールデンレトリバーというやつで”正真正銘”の動物の写真に脳が喜んで、口が緩む。
「タマは犬が好きなのかぁ、犬飼うか?ボスは飼ってもいいぞ」
「いや…見るだけで」
それからそういうペット物には詳しいようで、いろんな動画を教えてもらった。マフィアっぽくない、日常の一片。
どうにも脳がバグる。血みどろのボスと、写真を見て笑うボス。どっちが本物なのか、どっちも本物なのか。
今日のボスは機嫌がよくて、いつもは歌わない歌まで歌っていた。今日ものんきなボスを殺すことはできない。また明日、サンドイッチをつくってやろう。
ぷぇーーーーーー
みたらせいだいにごじってた
しにてぇ