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#8 お風呂に行こう!
「文豪ストレイドッグスわん!」の内容です。
連載中である「英国出身の迷ヰ犬」の番外編になります。
オリキャラ注意。
英国出身の迷ヰ犬
https://tanpen.net/novel/series/dbc4b7a3-d5a6-4927-bd3f-8e75383d3519/
あらすじ
お風呂が壊れてしまった探偵社一行。
銭湯に行くことになりました。
説明が雑ッby.中島敦
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ルイスside
フラフラと横浜の街を放浪していると、見覚えのある人達がぞろぞろと歩いていた。
持ち物から銭湯に行くことが予想できる。
「あ、ルイスさんだー!」
いつも通り僕のことを見つけるのが異常に早い太宰君。
呼ばれているのを無視するわけにもいかない。
話を聞くと、どうやら探偵社のお風呂が壊れてしまったらしい。
「そういえば国木田さん、皆揃って銭湯に行って大丈夫でしょうか?」
「全員で止めないといけないことがあるからな…」
「え? まさか事件でも…?」
「わーい! 広いお風呂だー!」
そう言った敦君に被せるように、後ろから声が聞こえて来た。
振り返ると、そこには浮き輪にアヒルの玩具を持った乱歩がいた。
あ、これか止めるの。
やっぱり乱歩は、少し子供っぽいところがあるとおもう。
「賢治君、湯船でクロール競争しない?」
「いいですね〜楽しみです」
「賢治君!」
少しじゃないな、コレ。
乱歩を止めに来ているはずなのに、早速危なさそうなんだが。
敦君と国木田君が説得するよう賢治君を呼び出す。
「クロールは他のお客さんの迷惑になるからダメですよ」
「え〜」
じゃあ平泳ぎで競争、と提案する乱歩を見てため息を吐く。
もちろん、満面の笑みで賢治君が了承するところまでが一セットだった。
「困った先輩だねぇ、鏡花ちゃん」
そう、敦君が話し掛けている方へ視線を向ける。
すると乱歩と同じく、アヒルの玩具を持った鏡花ちゃんの姿があった。
まさか、と思ったが乱歩に貰ったのだと言う。
少し安心した。
「男湯と女湯で兄様と離れ離れ」
寂しいわ、とナオミちゃんが呟く。
そして何故か男湯に行きたいと言い出した。
いや、アウトだろ。
「だ、ダメだよナオミ!」
「それでしたら、兄様がナオミと一緒に女湯に来てください♡」
「も、もっとダメだ!」
この兄弟の関係は─うん、やっぱり分からない。
「湯船逆立ち健康法。お湯の中で逆立ちすると健康になるのさ」
「ウソをつけ太宰! また下らん|法螺《ホラ》話を!」
「サウナ水風呂健康法。サウナと水風呂を交互に入ると健康になるのさ」
「もう騙されんぞ! そんな健康法は断じてない!」
「あるよ」
僕がそう言うと、国木田君の眼鏡がパリンと音を立てて割れた。
「ほ、本当にあるんですか…?」
「うん。僕はサウナが苦手だから一回ぐらいしかやったことがないけど」
「私が毎回ウソをつくと思ったら大間違いだよ、国木田君」
国木田君は静かに眼鏡を取り、異能力で新しいものを出していた。
直前まで太宰君が適当なこと言っていたから、確かにウソだと思っても仕方がないか。
少しして、とても不服そうに太宰君に謝っていた。
そう言えば─。
「君、手ぶらだけど銭湯に行かないの?」
よく聞いてくれました、と太宰君はドヤ顔をする。
「全て人から借りる作戦!」
「最低だな」
「うっ、流石にストレートに言われると心にくるものが…」
僕の言葉に、太宰君は胸を押さえて蹲る。
殆どの社員が無視する中、手を差し出す影が一つ。
「僕ので良ければ貸しますよ。ただ僕、髪も体も全部石鹸一つですけど…」
「君って偶に凄くワイルドだよね」
孤児院がそうだったから、と敦君は言っていた。
確かに今までの習慣を急に変えることは出来ない。
僕も戦後は色々と大変だったな、と昔のことを思い出してしまった。
「そうだ、ルイスさんも一緒にどうですか?」
「あー、折角だけど今回は遠慮しておこうかな」
そう言って、僕は探偵社の人達と別れるのだった。
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あらすじ
アジトのお風呂が壊れてしまったポートマフィア達。
風呂に入りたければ銭湯に行くしかないのだった──。
探偵社と一緒じゃねぇか!by.立原道造
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立原side
『まぁまぁ、偶には広い湯船に浸かるのも良いものだよ』
そう、首領は言っていた。
だが俺達マフィアがのんびり風呂に入れるかっての。
共感されるかと思っていたが、反応は─。
「え? 何か云いました?」
「古い価値観は洗い落とすべきだな」
「何、銭湯でも行くの?」
うわぁ、と俺は驚いて大きな声を出してしまう。
いきなり背後に現れるとか、心臓に悪すぎるんだが。
「ルイス君ではないか。今回は誰に用かな?」
「ちょっとお風呂借りたかったんだけど、故障してる感じ?」
爺さんがルイス・キャロルに話している間、姉さんは中也さんの所にいた。
「銭湯には体重計があるんですけど、中也さんが居てくれればなぁ」
「あァ?」
「中也さんの異能で、体重も思うがままなんですが…」
その光景を想像してしまい、少し笑いそうになる。
「まー、そのためには女湯まで来てもらわないとダメですけど」
「お、おん!? おんな!?」
あれ、珍しく中也さんが慌ててる。
もしかして、姉さんの冗談を本気にしてるのか?
中也side
「銭湯ねぇ…」
青鯖野郎さえ居なければ何処でもいい。
面倒だが一寸行ってくるか。
「中也さん、お風呂用の帽子忘れてますよ」
風呂用の帽子って何のことだ?
少し考えていると、樋口がシャンプーハットを渡してきた。
後ろでルイスさんが笑いを堪えている。
「アンタの仕業かァ!?」
「あははっ、ムリ、もう我慢できない、」
ルイスside
お風呂に入れないなら此処に用はない。
でも中也にした悪戯は楽しかったな。
「思ったんだけどよぉ、芥川さんの異能って外套を変化させるんだろ? つまり入浴中って実は無防備になるのか…?」
異能力がなければ、芥川君はただの病弱な人間。
銃弾から身を守ることも、人を斬ることも何も出来ない。
太宰君の教育のせいで風呂嫌いにもなった。
少し、可哀想に思える。
僕も嫌いだけどね、お風呂。
シャワーだけで絶対充分だって。
湯船に浸かるのなんて息苦しくなるだけじゃん。
「皆さん! 何てこと話してるんですか!」
「悪ィ、ただの冗談だって」
「芥川先輩は|仮令《たとえ》全裸だって強いに決まってます! 全裸でも!」
樋口さん、凄く全裸を強調するな。
そんなことを考えていると、隣に芥川君がいた。
何とも言えない表情で、彼らの会話を眺めている。
「実際、生身での戦闘はどうなの?」
「…不可能ではありません。一発でも貰ったら駄目ですが」
「太宰君に異能発動だけじゃなく、体術まで叩き込まれたの?」
「否、あの人ではありませぬ」
じゃあ中也君かな。
そんなことを考えていると、芥川君が僕の方を見た。
「|僕《やつがれ》に体術《《も》》教えて下さったのは貴方だけです、ルイスさん」
「…再会した時(episode.4参照)にも思ったけど、僕のこと覚えてたんだね」
何年前よ、と僕は思わず笑う。
たった一週間。
本当に少しの時間だったのに、彼は覚えてくれていた。
「まぁ、色々と頑張りなよ」
「─はい」
書きたいことが多くて長くなっちゃった☆