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空色夜叉(2)
「何故そうも威厳というものがないんじゃ、先生」
「その呼び方は止めてちょうだい」
紅葉、と紅刄は微笑む。
対して溜息しか出ない様子だった。
ポートマフィア本部
幹部執務室にて
「威厳というのは、無くても良い。お姉さんには似合わないもの♪」
「まぁ、確かにそうじゃが──」
「それより、仕事の方はどうかしら? 手が止まっているよう、お姉さんには見えるのだけれど」
「……この世に男尊女卑がある限りは、私はこの部屋で事務的なことをしているのじゃろうな」
「話をすり替えないでちょうだい」
「紅刄がいるせいで、またこうも手が止まる。仕事はどうしたんじゃ、仕事は」
「そう強調しなくても仕事はたまにしているよ」
「……たまに?」
「そもそも仕事が来ないのよ。次世代の子達がポートマフィアを創っていくためにも、お姉さんが表舞台に立ちすぎるのは良くないってことよ」
「裏社会なのに、表舞台って……」
「先代のやり方でしか、お姉さんは生きられないのよ。殺し以外は向いてないの、残念ながら」
「……私を育てたのは誰じゃったかのぉ」
「お姉さんね」
「教育できてるじゃないかえ」
「あー、あー、今のはオフレコにしましょう」
「オフレコなどは存在しないぞ」
「むーッ、お姉さんであまり遊ばないでちょうだい。その資料を全て切り捨てるわよ」
「それは困るのぉ……」
女性二人の声が、広い執務室に吸い込まれて消えていく。
たまに怖い単語が出てきたりするが、基本的には平和な会話。
先代の時代とは違う、と、表しているようにも幾多の幹部を見てきた執務室自身も、きっとそう感じていることだろう。