公開中
真夜中のバックステージ
合同ライブの全体リハーサルが終わった、深夜2時のアリーナ。
スタッフも他のメンバーも引き揚げ、静まり返った楽屋前の長い廊下に、拓実は一人で座り込んでいた。
「……あー、疲れた」
普段は完璧に見せる彼も、さすがに連日のハードスケジュールが体に堪えていた。膝に顔をうずめ、ふう、と深い溜め息を吐き出す。
「そんなとこで座ってたら、風邪ひくぞ」
頭上から降ってきたのは、低くて、どこか耳に心地よく響く声。
驚いて顔を上げると、そこにはキャップを深く被ったINIの西洸人が立っていた。手にはコンビニの袋と、温かい缶コーヒーが二つ。
「あ……洸人くん。まだ残ってたんですか?」
「うん。ダンスの確認、納得いかなくてさ。はい、これ」
洸人は隣にすっと腰掛け、拓実の頬に冷えた手をわざと押し当ててから、温かい缶コーヒーを握らせた。
「つっ……冷た! 何するんですか」
「あはは、やっと笑った。ずっと顔怖かったぞ、拓実」
いつもの気さくな笑顔。だが、その瞳はまっすぐに拓実を捉えていて、拓実はなんとなく気恥ずかしくなって目を逸らした。
隠しきれない独占欲
合同ステージでは、二人がペアで踊るパートがある。
カリスマ性と圧倒的な華を持つ二人だけに、ファンからの期待値も高い。
「……洸人くんって、誰とでもすぐ仲良くなりますよね」
拓実は缶コーヒーのプルタブを開け、視線を落としたまま呟いた。
「ん? そうか? まあ、人見知りはしない方だけど」
「INIのメンバーともいつも楽しそうだし、JO1の他のメンバーともすぐ飯行くし……」
無意識のうちに声が尖っていく。自分でも驚くほど、洸人の周りにいる人たちに嫉妬しているのが分かった。
グループが違うから、毎日一緒にいられるわけじゃない。
たまに会えたと思えば、洸人はいつも誰かに囲まれている。
「……何、焼きもち?」
からかうような、でも少し期待するような声で洸人が顔を覗き込んできた。
「違います」
拓実はそっぽを向いたが、赤くなった耳たぶまでは隠せなかった。
重なる視線
不意に、拓実の顎が強い力で上を向かされた。
洸人の大きな手が、拓実の顔を自分の方へと向けさせる。
「嘘つけ。顔に出すぎ」
至近距離で見つめ合う。洸人の力強い目元が、少しだけ優しく細められた。
「俺さ、誰とでも仲良くしてるように見えるかもしれないけど。……こんな時間に、わざわざ残ってまで一緒にいたいって思うのは、拓実だけだよ」
「え……」
「お前、ステージの上ではあんなに堂々としてるくせに、俺の前だとすぐ余裕なくなるの、ずるいわ。……可愛すぎる」
そう言うと、洸人は拓実の髪を優しく撫で、そのまま親指で拓実の唇をそっとなぞった。
二人だけの約束
廊下の白い蛍光灯が、二人を静かに照らしている。
拓実の心臓は、ダンスの直後よりも激しく高鳴っていた。
「洸人くん、それ……どういう意味ですか」
「言葉にしなきゃ、分かんない?」
洸人は少しだけ意地悪に笑うと、拓実の手から缶コーヒーを取り上げて床に置いた。そして、空いた拓実の手を、自分の大きな手でぎゅっと包み込む。
「俺、本気だよ。グループが違っても、関係ない」
その言葉が、拓実の心の霧を綺麗に晴らしていく。
拓実は少しだけ視線を彷徨わせた後、洸人の手を少しだけ強く握り返した。
「……じゃあ、次のオフ、俺のために空けといてください。絶対ですよ」
少し強がった、拓実なりの精一杯のプロポーズ。
洸人は満足そうに声を上げて笑うと、誰もいない廊下で、拓実をそっと引き寄せた。
完全ではないけど、 JO1とINIのBL書きました