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あっとのお話(AMPTAK)
赤都 乃愛羽
リクエストです!
最強の兄と、内緒の特等席
AMPTAKxCOLORSのメンバーとして、画面の向こうで数万人のリスナーを沸かせているあっと。
「お前ら、もっと声出せよ」なんてドSに言い放つ彼が、家に帰って真っ先に向かうのは、リビングのソファで本を読んでいる妹・紫乃(しの)の隣だった。
「紫乃、ただいま。……おい、こっち見ろよ。兄貴が帰ってきたんだぞ」
さっきまでの鋭い声はどこへやら。あっとは紫乃の膝に頭を乗せ、甘えるように顔を覗き込む。
「おかえり、お兄ちゃん。配信、盛り上がってたね。最後、ぷりっつさんと喧嘩してたでしょ?」
紫乃が呆れたように笑うと、あっとは鼻を鳴らした。
「あいつがうるさいだけだ。それより、今日の晩飯……紫乃が作ったのか? いい匂いすんな」
そう言いながら、あっとは紫乃の手を引いて自分の方へ引き寄せた。
実は、あっとがAMPTAKの活動でどれほど忙しくても欠かさないルーティンがある。それは、寝る前に紫乃と今日あったことを話す時間だ。
「……ねえ、お兄ちゃん。最近、リスナーさんの間で『あっとくんには秘密の宝物がある』って噂になってるよ。もしかして私のこと?」
紫乃の言葉に、あっとは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに意地悪そうな笑みを浮かべた。
「は? 自惚れんな。お前は宝物じゃなくて、俺の『一部』だ。……誰にも渡すつもりねーし、誰にも見せねえよ。俺の妹は、世界で一番可愛いんだからな」
あっとは紫乃の頭を乱暴に、でも優しく撫でまわす。
ふと、彼のスマホが震えた。メンバーのグループ通話だ。
『あっとー!配信終わった後、即落ちしてどこ行ったんだよ!』
ちぐさくんの元気な声が漏れてくる。あっとは面倒くさそうにマイクをオンにした。
「……今、大事な用事があるんだよ。紫乃との時間、邪魔すんな。……じゃあな」
一方的に通話を切ったあっとに、紫乃は苦笑いする。
「あーあ、またメンバーに言われちゃうよ。『あっとくんは極度のシスコンだ』って」
「勝手に言わせとけ。俺はAMPTAKのあっとである前に、紫乃の兄貴なんだからな」
外では最強のエンターテイナー。
でも家の中では、たった一人の妹を誰よりも大切にする、少し独占欲の強い兄。
「……紫乃。明日も、俺が一番に『おはよう』って言ってやるからな。早く寝ろよ」
あっとに背中を押されながら、紫乃は心の中で思う。
画面越しのあっとくんもかっこいいけれど、自分だけが知っているこの優しい声が、世界で一番贅沢な特等席なんだと。