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生物兵器3
俺「英雄、かぁ..そんな大それたものじゃないだろう...」
俺は読み進めていた経済史を放り投げ、ソファにドサっと座り込んだ。
??「どうかされましたか、ゲンスイ様」
俺「あぁいや、なんでもない。ありがとう、アルム」
アルム「アルム、とはわたくしの事でしょうか?」
俺「ん?あぁ、"5420863番"は長い。呼びやすい方がいいかと思って下3桁をもじった。だいぶ無理のあるもじりだがな。」
アルム「..感謝いたします」
アルムと呼ばれる少女は、数ヶ月前生物兵器訓練所から逃げ出してきた所を、ゲンスイ様と呼ばれる男により保護された。
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アルム「.........」
15、16才辺りの少女だろうか。整えられた服を着て、髪を乱した状態で路地裏に座り惚けている。
俺「..大丈夫か?」
男は路地裏に居る少女に気がつき、近くにより、声をかける。
アルム「....!?」
手を差し伸べると、少し驚いた表情をしてすぐに警戒されてしまった。
男「あ〜〜...生物兵器の子か....」
生物兵器。我が国だけの、戦闘システム。ニュースなので耳にすることはあっても、街中で言うような単語ではないだろう。
もし言うことがあったとしても、こんなに残念そうには言わないだろう。
生物兵器に選ばれると言うことは、国のために戦える。当人の意思は関係なく、それは名誉のあることだ。
アルム「....貴方は」
少女が喋る。
アルム「生物兵器制度の道徳的観念による欠点を、理解しているのですか?」
ロボットのような喋り方。おそらく、訓練所で身につけた言葉遣いだろう。
男「...あぁ。あんな制度..今すぐにでも無くなるべきだ。みんな、頭がおかしくなっちまってんだよ」
男は、こう続けた。
男「政府は子供達の奇想天外な発想、想像力に目をつけた。しかし蓋を開けてみたらどうだ。想像力もクソもあったもんじゃない」
男「ただ、力と恐怖で支配しているだけだ。これでは、無機質な機械となんら変わりはないじゃないか...!」
悔しそうに歯を食いしばる男は、それと同時に苛立ちを露わにしていた。
アルム「......」
アルムは豹変した男の姿に驚き、「ぽかーん」と放心している。
アルム「貴方の名前は?」
俺「え!?え、えぇ...特に、ない。好きなように呼んでくれ」
急に名前について聞かれ、「特にない」という1番無い選択肢をしてしまった。
アルム「分かりました、では"ゲンスイ様"と呼ばせていただきます。私は5420863番と呼ばれています」
淡々と、自分の名前ですら無い番号を並べ立てる。側から見たら異常以外の言葉でしかつかないだろう。
しかし、この国ではこれが普通。
俺「クソッ...」
男は、やるせなさと後悔が入り混じった一言を発した。