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#17 2つの理由
旧型のパソコンを持ってきた理由は2つ。疎い田舎者と思わせるためと、《《感染させるため》》だ。
初期化したパソコンで、とあるメールボックスを開いた。ウィルスがかかると有名なやつだ。個人情報がだだ漏れして、しかも同期したりしたパソコンにも感染するという、まぁまぁ厄介な。バグを直すときに見つけたものを、旧型のパソコンに感染させてきた。
きっと、彼は使いやすい自分のパソコンで、試しにやってみようと言ってくる。そのときに同期させるだろう。感染して、九十九家の情報が漏れると知らずに。
そう思うと、なんだか愉快で面白おかしくなってきた。別に、特段性格が悪いわけではないけれど。
「と、取り敢えずやり方を教えてほしいんだ」
「そうか。なら僕のパソコンを貸す」
「あ、でも、今までの調べたデータとかは…」
「試しに僕のパソコンでやってみなよ。同期《《させてあげる》》から、使い心地を試してから買えばいい」
上から目線に腹が立つし、何より買わせようとする執念が鬱陶しい。ああ、やっぱりこんな奴、九十九家に似合わない。血筋や親ガチャ大成功のたぐいだ。
「ありがとうございます」
おかしなイントネーションで言った。
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『少し』『待て』
ええ、確かにインターはそう示しました。あともう少しだという開放感諸々、感情があると感じます。
さっさと廊下を掃きます。例の山積み部屋へ行って、再びパソコンを開いてみます。律はきっと、あの田舎者と《《見せかけた》》インターに食らいついているでしょう。何かいいアイディアが思いついたはずです。食らいついているということは、あの御曹司さんもお馬鹿さんなんでしょう。
『把握 開いといて』
メッセージがあらわれました。
たぶん、この計画は没になったのでしょう。リスクが高すぎる、とか。私はそう考え、そっとパソコンを閉じ、ふつうに掃除を始めます。
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「同期?なんですか?」
律は懇切丁寧に説明を始めたが、最後のあたりは面倒くさくなったのだろう。じゃあやってみて、と適当に言うだけだった。
「本当にいいんですよね?」
律にとっては、本当にこのやり方で合っているのか、と取れたことだろう。
本当にいいんですよね?
たとえ、仕返しを食らうとしても。