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硝子の屑の上で舞う。
え、これってR18?R15?アドバイスくれーーー!
彼を見た瞬間、世界がほどけた。
春の校庭。風に揺れる制服の裾。何気なく笑った横顔。
それだけで、心が奪われた。
(ああ、好きだ)
理由なんていらなかった。
ただ、彼が欲しかった。
彼の隣には、よく話している女の子がいた。
明るくて、距離が近くて、周囲も「仲いいよね」と囁く。
胸がざわついた。
けれど、調べてみて知った。
――あの子は、ただの片思い。
彼は、何とも思っていない。
その事実に、安心した。
同時に、思う。
(でも、視界に入るのが嫌)
ある放課後。人気の少ない階段。
彼女の背中が、目の前にあった。
ほんの少し、手を伸ばす。
強くはない。
本当に、軽く。
バランスを崩した彼女は、数段落ちた。
悲鳴。
騒ぎ。
結果は、軽い骨折。
事故として処理された。
私は最後に駆け寄り、涙ぐみながら名前を呼んだ。
そうだ。私の彼を奪おうとしたお前への罰だ。そう思いながら。
彼は心配そうだったけれど、特別な感情はない。
それを見て、私は確信した。
(大丈夫。これくらいなら)
罪悪感よりも、安堵が勝った。
---
本当の絶望は、そこからだった。
彼には、別に気になる人がいる。
静かな子だった。
目立たないけれど、彼といるときだけ柔らかく笑う。
放課後、図書室で二人きり。
彼の目が、違った。
優しくて、特別で、守りたいものを見る目。
あの目は、私に向けられたことがない。
胸の奥が、ぐちゃぐちゃに潰れる。
(あれは、本物だ)
私は知ってしまった。
私は“代わり”にすらなれない。
調べた。
帰り道、家、生活パターン。
知れば知るほど、腹が立った。
真面目で、優しくて、欠点がない。
そんな子が選ばれるなんて。
私は、こんなに想っているのに。
夜、何度も考えた。
――いなくなっちゃえばいいのに。
最初は願望だった。
やがて、計画になった。
雨の日。
足元は滑りやすい。
視界は悪い。
ほんの少しの誘導。
ほんの少しの運の悪さ。
私は直接手を下していない、と言い聞かせた。
けれど結果は変わらない。
彼女は、帰ってこなかった。
学校は静まり返った。
**事故**
その言葉で片付けられた。
彼は壊れた。
目の下に影を作り、何度もスマホを握りしめる。
「どうして……」
その声を聞いて、胸が痛んだ。
けれど私は、そっと隣に座る。
「つらいよね」
弱った心は、隙だらけだった。
私はそこに入り込む。
夜中の電話。沈黙。涙。
全部受け止める。
やがて彼は言った。
「君がいてくれてよかった」
心の穴を埋めるように、私を抱きしめた。
付き合うことになった。
彼の笑顔が、少しずつ戻る。
世界が、色づく。
青い空。鮮やかな花。
全部が、輝いて見えた。
その幸せは、脆い硝子の上での出来事だと、あとになって気づいた。
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その日は、何気ない休日だった。
人混みの中で、声がした。
「久しぶり」
凍りついた。
振り向くと、そこにいた。
死んだはずの、彼の“本命”。
青白い顔。
けれど、確かに生きている。
「……どうして」
かすれた声が漏れる。
「死んでないよ」
静かな声。
「助かったの。奇跡的に」
世界が歪む。
「全部、覚えてる」
スマートフォンを差し出される。
録音。
位置情報。
メッセージ。
私の囁き。
私の誘導。
証拠が、揃っていた。
「どうして……?」
彼女の目は、どこか歪んで見えた。
いや、それだけじゃない。世界がぐにゃりと歪む。気持ちが悪い。頭がガンガンする。目の前が真っ白になりかける。
そこへ、彼が現れた。
状況を見て、理解するまで時間はかからなかった。
彼は、言った。
「……何を、した?」
その目。
あの優しかった目が、恐怖と嫌悪に変わる。
「違うの、私はあなたのために――」
言い訳が、崩れる。
沈黙。
そして、彼は一歩、後ろに下がった。
「無理だ」
その距離が、すべてだった。
パリン、と世界がひび割れた。
ひびは広がる。
硝子の粉屑がまう。
彼は、もうこちらを見ない。
私を見てくれない。見てほしいのに。
私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。私を見て。
ねえ、ねえ。
私は、一人。
(あの時、やめていれば)
(ただ好きでいるだけにすればよかった)
後悔が、遅れて押し寄せる。
けれど、もう遅い。
奪ったものは戻らない。
壊したものは、元に戻らない。
色づいた世界は、最初から幻だった。
残ったのは、
色のない明日だけ。
砕けた硝子は、もう、戻らない。戻ってくれない。
どこで、間違っちゃった?
人の不幸のうえで成り立つ幸せって脆いよね。
でも、一人の人間に必死になって破滅する姿はどこか面白いと思うのは私だけだろうか…………。
読んでくれてありがとう!
Thanks for reading!