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箱入り姫と6人の騎士 ⑩
赤都 乃愛羽
命の返還計画〜
窓のない、美しい監獄。
ちぐは、ベッドの横で自分の手を握りながら眠る莉犬の寝顔を、感情の消えた瞳で見つめていた。
(……この心臓(るぅとくん)がある限り、私は彼らの『所有物』でしかない)
胸の奥で、トクン、と力強く跳ねる鼓動。
それは、るぅとの執念であり、5人を狂わせている元凶。
恋愛音痴だったちぐが、初めて導き出した「愛への答え」は、あまりにも極端なものだった。
(……だったら、私がドナーになればいいんだ)
「みんなには秘密だよ、るぅとくん」
ちぐは、自分の左胸にそっと指先を立て、なぞるように呟いた。
彼女の計画はこうだ。
自分がこの命を絶てば、この「健康で、適合性の高いるぅとの心臓」は再び取り出される。それを、病気で苦しむ誰か――あるいは、るぅとの意志を継ぐにふさわしい誰かに繋ぐ。
そうすれば、自分は自由になれる。そして、るぅとの心臓も、5人の「執着」という呪いから解放されるはずだと。
「ちぐ? 起きてたの?」
目を覚ましたななもり。が、優しく、けれど逃がさないようにちぐの肩を抱き寄せた。
「お腹空いてない? 今日はころんが、ちぐの好きなオムライスを作ってるよ。……あー、して食べさせてあげるからね」
「……うん。楽しみにしてるね」
ちぐは、初めて逆らわずに微笑んだ。
その「国宝級」の笑顔に、ななもり。は一瞬見惚れる。
だが、その微笑みの裏にある決意には気づかない。
(私が死ねば、この心臓はまた、誰かのものになる……。それでいい。それで、全部終わるんだ)
ちぐは、5人が用意した豪華な食事を、毒を喰らうような気持ちで口に運ぶ。
体力をつけ、検査の結果を「最高」の状態に保つために。
彼らが自分を「最高の宝物」として磨き上げれば上げるほど、皮肉にもドナーとしての価値も上がっていく。
「ちぐ、最近すごく聞き分けがいいね。やっと、俺たちの愛が伝わったかな?」
さとみが、ちぐの首筋に顔を埋め、独占欲を確かめるように深く吸い込む。
「……そうかもね」
ちぐは、さとみの背中に手を回しながら、心の中でカウントダウンを始めた。
5人の騎士たちが、自分たちの「お姫様」が「自分たちを捨てるための準備」をしているとは夢にも思わずに、狂おしいほどの寵愛を注ぎ続けている。