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君 が 恋 だ と 気 づ く ま で # 1
「3年後、君がおとなになっても、私と仲良くするって約束して」
放課後の僕ら以外誰もいない教室で、前に座っている自分よりも少し背の低い彼女が放った一言に、僕が何も返せないでいると、彼女は僕の顔を覗き込んできた。慌てて彼女から目を逸らす。が、逸らしたのに彼女はこれでもかと僕の視界に入ってくる。
「聞こえないのー? 私と仲良くしてねって言ってるの」
頬杖をつきながら、彼女は言う。
「いや、聞こえてはいるよ、聞こえては。」
「じゃあなんで無視するの? ひどーい」
「別に無視したわけじゃないよ。君が言った言葉にどんな意味があるのか考えてただけ」
本当のことを言ったのに、彼女は僕を疑うような目を向けてくる。子犬みたいな丸い目で。
「…なんで突然そんなことを言うわけ?」
僕が机の上の書類を意味もなく持ち上げながら吐き捨てるように問うと、彼女はにやっと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「そうだなー。正直に言えば、最近観た恋愛映画のヒロインが言ってたセリフを真似してみただけ。その映画のタイトル忘れちゃったんだよねー。知ってたりする?」
「正直に言わなければ?」
「君が本心で私と仲良くしてくれてるのか知りたかったから、かなー」
「…で、どっちが君の本音なの?」
「んー、どっちも!」
「よくばりで嘘つきな君にはどっちも答えてあげません」
ちぇー、と口を尖らせた彼女は、すぐにいつもの笑顔に戻って僕の顔を見る。
僕の顔を見ても、何も出てこないのに。
「ほら、早く仕事を終わらせて帰ろう。大体君はなんで僕がこの時間まで君と一緒に残ってるかわかってる?」
僕と彼女は、委員会が同じ。ただ誤解しないでほしいのは、これは僕の意思ではなく、くじによって同じ委員会に選ばれたということ。それで今日は、本来なら彼女が今日中に提出しなければいけない書類を、案の定やってこなかったので仕方なく僕が手伝ってあげているのだ。もしかすると、というかやはり、彼女に仕事を頼むのは僕が働けなくなった危機的状況の時だけで良いのかもしれない。
彼女は興味をなくしたように椅子から立ち上がり、窓の方に駆け寄って行った。
「お、隼斗じゃん!おーーい!」
窓の外に向かって手を振る彼女には、「明るい」という言葉が1番似合っていると思う。まるで僕とは真反対の言葉。隼斗、という人はおそらく僕と同じクラスでサッカー部の人だったはずだ。
「こんな暑いのに大変そうだねー、運動部の子たち。私もさっさと辞めちゃおうかなー」
「…副キャプテンなのに部活に何ヶ月も顔を出さないなんて、いいの?」
「うん、まあたぶん?ほら、この前バスケ部、地区大会優勝してたでしょ?私がいなくても大丈夫ってことだよ」
彼女の事情は何も知らないけれど、あまり触れて良い話題ではないなと思ったので僕は口を噤んだ。
僕の心情を悟ったのか、彼女が先ほどまでよりも少し明るい声で話し出す。
「そーれーにー、こうやって君と一緒に過ごす時間の方が楽しいから。私、まさか君と仲良くする日が来るなんて思ってもいなかったもん。ほんと、人生何があるかわからないもんだよ。」
いかがだったでしょうか…笑
初めての小説で拙いところもあるかと思いますが、温かく見守ってくださると嬉しいです^^
次回、“僕”と“君”のはじまりが明らかになります❕お楽しみに🤭
それでは❕おやすみなさい😴