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東方凶事裏 二。
〈〈side 博麗霊夢
「___で、私達が来たってわけ」
私達がここに来た経緯を説明すると、|洩矢 諏訪子《もりや すわこ》と|八坂 神奈子《やさか かなこ》は特に動揺する気配もなかった。
諏訪子と神奈子は正真正銘の神であり、それぞれ諏訪子、神奈子両者とも山の神であり、この神社と湖、早苗も含めて外の世界から来た者達だ。
色々あり、神社で3人で暮らしているというわけだ。
「ありゃりゃ早苗は負けちゃったってわけか」
目がつけられた奇妙な帽子をかぶり、薄い茶色の瞳と金髪の髪を持った子供のような姿をした諏訪子が私達と、神奈子に向けて話し始めた。
「あの子もまだまだ未熟なところはあるからな」
冠のようにした|注連縄《しめなわ》、楓と銀杏の葉の飾りを頭に着けた青紫の髪と|赤眼《あかめ》を持った神奈子も続いて話した。
「あの子の能力おかげでうちはその不幸の被害を受けずに済んだのにねぇ…」
「参拝客が減ったら責任取ってくれるわけ?」
諏訪子がわざとらしく睨むように私の瞳を見つめた。神の遊びって奴だろう。
「無理ね、うちに分けてほしいから」
私はスペルカードを取り出し、そう笑いかけながら言葉を返した。
そのスペルカードを見た神奈子が口を開いた。
「悪いが、本当にうちではないぞ」
組んでいた腕を解き、やれやれと言わんばかりにこちらの方を見る神奈子に対して私も口を開いた。
「犯人は全員そう言うの。それに、確かめてみないと」
「まぁそれはそうかもねー」
と言いながらも、諏訪子も神奈子も既に私達が|ここ《守矢神社》に訪れた時からスペルカードを出していた。
「はははっ随分と好戦的だな」
「神々に歯向かうのはあまり良くないことだと思いますが」
暦は置いておいたとしても、妹紅も好戦的な方であるのによく言ったものだ。
「じゃ、失礼しちゃうねー」
「開宴・二拝二拍一拝!」
そこに現れたのは色とりどりのレーザーと弾幕達だった。それに、相当の物量を持ったもの。
「神穀・ディバイニングクロップ」
2人の弾幕が重なって、更に避けにくく見にくくなっていく。
「夢符・二重結界!」
「時効・月のいはかさの呪い!!」
2人に向かって弾幕が広がっていったと思えば、2人の弾幕のせいで殆ど相殺となり殆ど攻撃が通らない。
「時符・未来視!」
そうスペルカードを宣言して、暦はぴたりと立ち止まってしまった。
このタイミングでの発動とか…と思いながらも、暦の前に立ち、また弾幕を放った。
「神技・八方鬼縛陣!」
私が新しくスペルカードを放つと、また神奈子人諏訪子がタイミングを合わせ相殺してくる。
「神秘・ヤマトトーラス」
「土着神・手長足長さま!」
私達を分断するようなスペルカードが多く、なんとか共に行動するのも中々厳しい。
「散霊・夢想封印 寂!!」
「虚人・ウー!!!」
私達2人の弾幕が放たれては相殺されて、このまま何もせず投降してくれたらいいのにと思ってしまう。
「見えました!2人とも、このまま続けてください!」
後ろから暦の声が聞こえ、そう指示を出された。
「夢境・二重大結界!」
「貴人・サンジェルマンの忠告!!!」
その言葉とともに、私達は更にスペルカードを宣言した。状況が変わっていないような気がしなくもないが。
「土着神・ケロちゃん風雨に負けず!」
「天竜・雨の源泉」
「風神様の神徳」
急にこちらに向かってくる弾幕の数が増えて、弾幕同士がぶつかり相殺されることが減った。
すなわち、被弾して負けるリスクが増えたということだ。
「藤原・滅罪寺院傷!!」
「神技・八方龍殺陣!」
私達も暦も、勿論スペルカードの発言や弾幕を放っているが状況はあまり変化していないように思う。
「いっくよー神奈子!」
「風神符・ミシャバシラ!」
諏訪子と神奈子は距離を縮め、今まで放っていたスペルカードを放つのを一斉にやめ、2人で一斉に弾幕を放ってきた。所謂、連携スペルカードというやつだろう。
「どちらか1人に集中砲火してください!」
また後ろから暦に指示を出され攻撃を開始した。
「霊符・夢想封印!!」
そう指示を出され、私は諏訪子の前に立つ神奈子を標的に向けて、更にスペルカードを放った。
「蓬莱・凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-!!」
妹紅もそれを見て、神奈子に向かってスペルカードを宣言した。
すると突然、神奈子の放っていたレーザーが消え、レーザーが体を貫通しても攻撃を受けることがなくなった。
「これも不幸ってやつじゃないかい?神奈子」
放っていた弾幕を止め、神奈子の方に駆けつける諏訪子。それを見て私達も弾幕を止め、その場に立ったままで居た。
「嗚呼、そうだな」
「これでお前らも分かったことだろう。私達が白であると、自分に不幸を仕掛ける馬鹿はいないさ」
神奈子は腕を組んだ。そして、ゆっくりと勇ましく余裕すら感じる笑顔を作った。
「私達、守矢神社は降参する」
そして、そう宣言した。
「………誤解だったってわけですか?」
暦が前に出てきて、神奈子と諏訪子にそう尋ねた。それも、困り顔をしながら。
「うん、本当にうちは何もしてないよ」
諏訪子がひょこっと出てきて、暦にそう言葉を返した。
「あら、悪かったわ」
「謝る気ないですよね!霊夢さん!!」
後ろから声がして振り返ると、そこには早苗と|東風谷 塚沙《こちや つかさ》さんが立っていた。早苗が肩に持たれかかって、塚沙さんが重そうで大変そうに見える。
「元気そうで何よりだな」
「そう見えますかぁ!!ほんとにぃ!!!」
妹紅も振り返り、そう早苗に声をかけたら早苗がまた大声をあげた。
「早苗ちゃん、落ち着いて」
隣に早苗を支えて立つ、塚沙さんが早苗さんに向かってそう優しく声をかけていた。
「感謝する、塚沙」
神奈子がそう言葉を発したあと、組んでいた腕を解いた。
「私の目からすると、あの神霊の狐と三つの身体を持つ神が何か情報を握っているように見える。風の噂で聞いたのだが、彼女らは不幸の影響を受けてないみたいだからな」
おそらく|純狐《じゅんこ》とヘカーティア・ラピスラズリの事だろう。
彼女らは何を考えているか分からないし、過去に異変を起こしたこともあるから、怪しい。
だが、戦力的に不安が残る。
「何か聞いてみるといい」
続けて、神奈子は私達にそう助言をくれた。
「……誤解なのにスペルカードを使ってしまい、申し訳ございませんでした」
暦が頭を深く下げて、腰を曲げた。その様子を見た諏訪子が口を開いた。
「なーに、気にする必要ないよ」
「ささっ、早く行きなー」
少し笑いながら、そう言葉を発した諏訪子。その神奈子と諏訪子の言葉通り、私達はヘカーティア・ラピスラズリと純狐を探すため、妖怪の山を降りた。