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心音(こころね)は、君だけに甘く響く ④
赤都 乃愛羽
空っぽの器と、奪われた愛
「返してよ……私の体から、るぅとくんの心臓を、出して……!!」
ちぐは自分の胸を爪が食い込むほどかきむしり、病室の床に崩れ落ちた。
国宝級と讃えられた美貌は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになり、その姿はあまりにも無惨で、あまりにも美しい。
目の前には、表情を失った5人の男たちが立っていた。
「……無理だよ、ちぐ。それはもう、君の命なんだから」
ななもり。くんの声は、凍りつくほど冷たく響く。彼の瞳には、かつての優しさは微塵もない。
莉犬くんが君の震える手を床に押さえつけ、狂気を含んだ瞳で覗き込む。
「るぅちゃんは死んだんだよ! 君を助けるために、自分を切り刻んで君に捧げたんだ! 今さら返せなんて、彼への冒涜だよ……っ!」
さとみくんは君の顎を強引に持ち上げ、無理やり目を合わせさせた。
「いいか、ちぐ。お前はもう、ただの女の子じゃない。るぅとの『形見』なんだよ。お前が死ぬことは、るぅとを二度殺すことと同じだ」
「嫌だ……そんなの、生きてるって言わない……っ!」
泣き叫ぶ君を、ジェルくんが後ろから逃げられないほど強く抱きしめる。
「そうやな。地獄かもしれん。でもな、ちぐ。俺たちはあいつの心臓を守る義務があるんや。お前を一生この部屋から出さず、傷一つつけず、死ぬまで『飼い殺す』。それが俺たちの愛や」
ころんくんが、るぅとくんの愛用していたギターの弦を指で弾きながら、虚ろに笑う。
「ねえ、聴こえる? 君の胸の音。るぅとくんが泣いてるみたいだね……『僕を捨てないで』って。君は、一生この罪を抱えて、僕たちに溺愛され続けるんだよ」
恋愛音痴だった君が初めて知った「愛」の正体は、逃げ場のない監獄だった。
君が生きている限り、るぅとくんは君の中で拍動し続ける。
そして5人は、君を愛しているのではない。君の中の「るぅと」を繋ぎ止めるために、君を寵愛し、執着し、壊さないように愛で続けるのだ。
「……るぅとくん、助けて……」
君の呟きに答えるように、ドクン、と胸が跳ねる。
それは救いではなく、一生解けない呪いの音だった。