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もう1人の自分〜第1話〜
誰もいなくなった教室でただ1人、残されていた時だった。
誰かの気配に気づいて顔を上げるともう1人の自分がいた。
「もう、今日は帰りなよ。ここにいたって誰が来るっていうんだ。」
不思議と不安や怖さはない。ただ目の前の自分と会話していることを受け入れている。
「君が来た。」
もう1人の自分ははっとした表情を見せた。
「ここで1人で考え事をしていたらいつのまにか君がいた。」
「何を言っているんだ、君は私、私は…」
「わかってる。だけど本当にいえるかな…」
「今だって、考え方が違うじゃないか。」
もう1人の自分は納得いっていなさそうな表情を浮かべた。
「確かにな。今はそうかもしれないな」
「何にそんなに納得いってないの?」
「まあいい。もう帰ろう。」
「うん。一個聞いていい?」
「なに」
「なんであなたは声が男なの?」
もう1人の自分は私を静かに見つめた。
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あいつ、なんだか最近、おかしい。
誰かと話しているような挙動をしている時がある。
あいつの目の先には誰もいないというのに。
「赤木、一体誰と話しているんだ。」
「え?誰とも話してないよ」
「本当に?」
「うん。」
本当かな。あいつは絶対誰かと話していた。おかしい。
それとも俺がおかしいのか・・・
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バレてる気がする。クラスメイトの男子・横峰に。
彼は私がもう1人の自分と話しているところを見たというのか?そもそももう1人の自分を横峰は見た?まさかね。
そう考えているとまたもう1人の自分がいた。
「お前、そんな考えなくていいじゃん。」
「え?」
「だって横峰には俺の姿は見えてない。」
「そうなの?」
「ああ。大丈夫だ。」
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また、あいつは誰かと話している。でも相手は見えない。いるかも変わらないが。あいつの性格上、独り言をぶつぶつ呟く人でもないし、歌う人でもない。ただあいつは体が弱い。それで部活も辞めたのだから。そして、大体1人行動を好む。
「なあ」
「何?」
もう1人の自分はふとした時に突然出てくる。
「横峰が勘づいていること、気にしてるのか?」
「まあ。そう。」
「もし、気づかれてもいいじゃないか。だってあいつ、そんなやばいやつじゃないだろ。第一、なんでバレたくないんだ。」
確かに。でも、なぜかバレたくない自分がいる。
もう1人の自分がいう通りだ。
「そういえば、私はあなたのことをなんて呼んだらいいの?」
「なんでもいいさ。お前は俺、俺はお前なんだから。なんて呼びたいかじゃない?」
「じゃあ、Sって呼ぶわ」
「それは、すみれのS?」
「そう。ダメ?」
「いいや。それでいいよ」
それから数日間、毎日Sは現れた。