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あの日に消えた彼
グラムの003の夢小説です。監獄内での話ではない、いわゆるシャバパロとなっております。
いつも、通学の時に出会う彼。毎日スマホをいじっていて、同じ大学の生徒なのは分かる。そんな彼。
「誰なんだろ……」
彼について、私は何も知らない。けれど、毎日ずっと同じ道を歩いていると、なんだかそこには、淡い感情が芽生えてくる。誰なのか知りたいけど、声をかける程でもない。そんな、風船のように軽い関係性。
だけど、そんな軽い風船だって、いつかは空気が抜けるか破れてしまうんだ。
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都内の大学に通っている私には、気になる人が居る。恋愛的な意味ではなく、文字通りに気になる人だ。
その人とは、大学の通学路でいつも会う。通学途中の信号から鉢合わせる彼は、気の強そうなツリ目の男の子で、黒い布マスクと常に触っているスマホが特徴だ。
私達は、日にちと時間が合えば、いつも同じ道を歩く事になる。無言で、互いに互いの人生を演じながら、同じ道を進む。
相手の何を知っている訳でも無いけど、相手の人生に入り込んでいる訳でも無いけど、いつからか無意識的に、私は彼の事が、ほんのちょっぴり気になるようになっていた。
「うーん……。誰なんだろうなぁ……」
大学内では、学部だったり学年だったりが違うのか、彼と全く会った事がない。彼の事が、なんにも分からないのだ。
しかし、だからと言って通学途中の彼に話しかける程、私には勇気が無かった。彼はなんだか雰囲気が怖いし、いつもスマホを触っていて、話しかけやすそうな人ではない。話しかけるのは怖かった。
毎日、毎日、夏も冬も出会うのに、私は彼の何についても知らなかった。知ろうと頑張る事もしなかった。
今となっては、少し手遅れだ。
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ある日を境にして、彼は居なくなってしまった。どれだけあの日と同じ道を歩いても、彼が来る事は無くなってしまったのだ。
「どうしてだろう……?」
病気にでもなってしまったか、大学をやめてしまったか、はたまた、別の理由で来れなくなってしまったのだろうか。最後まで他人である事を貫いてしまった私には、何も分からない。
女子学生がネットの誹謗中傷により自殺したというニュースが世間で報道される中で、私はただ、他人だった彼の事を気にして、自分の心を揺るがせていた。
「どうして、居ないんだろう……」
せめて名前だけでも、聞いておけば良かったと思う。過去を思い出せば、聞ける機会なんていくらでもあったはずなのに。後の祭りも甚だしい後悔は、風船のように空へと浮かんでいった。
最後に居なくなった理由は、フータがミルグラムに収監されたからです。
ちゃんとした物を書く予定だったのですが、なんだかんだでいつもよりクオリティ低めかもです。