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第9話:熱に浮かされた夜、命がけの「あまえ」
湯上がりの火照りと、直毘人様から渡された「少し強いお酒」のせいで、私の視界はすっかり桃色に染まっていた。
畳の上に座り、とろんとした瞳で直哉様を見上げると、彼が慌ててグラスを奪い取った。
「おい、紬! 自分、またそんな勢いで飲んで……。顔真っ赤やぞ、こっち来い」
「……いや、です。直哉様が、遠いです……」
私はふらつく足取りでにじり寄り、直哉様の胸元に飛び込んだ。
驚いて私を支える直哉様の腕。その首筋に顔を埋め、私はお酒の勢いに任せて、とんでもないことを口走ってしまう。
「直哉様……。……一緒に寝てくれないと、私、腹を割って死にます……!」
「……はぁ!? 自分、何ちゅう物騒なこと言うとんねん! 切腹か!? それとも|腹《本音》を割るんかどっちやねん!」
「どっちでもいいです……! 直哉様が、一緒にいてくれないなら……うぅ、もう死んじゃいます……」
私は目に涙を浮かべ、直哉様の着物の襟をギュッとしがみつくように握りしめた。
普段のお淑やかな私はどこへやら。黄金色の髪を振り乱して甘える姿に、直哉様は「あー、もう……!」と頭を抱えた。
「……分かった、分かったから! 死ぬなや、縁起でもない! ……横におったらええんやろ!」
「……本当、ですか?」
上目遣いで見つめると、直哉様の顔がみるみるうちに耳まで真っ赤になっていく。
彼はため息をつきながらも、私の腰に腕を回し、優しく布団へと誘った。
「……自分、自覚してへんやろ。……その顔、反則やぞ」
布団に入ると、直哉様は「離れろ」と言うどころか、私を壊れ物を扱うように強く抱き寄せた。
彼の大きな手のひらが、私の背中を優しく、リズムよく叩いてくれる。
「……直哉様。……大好き、です。……直哉様との子供、きっと可愛いですよ……えへへ……」
「……っ、自分、寝言まで……! 待て、そんな先の話……」
直哉様の心臓の音が、私の耳にドクドクと伝わってくる。
彼は困惑しながらも、私の額にそっと唇を寄せ、消え入るような声で囁いた。
「……あー、もう、降参や。……自分がおらんと、俺の方が死ぬかもしれんわ」
その夜、直哉様は一睡もせず、私の黄金色の髪を朝まで愛おしげに撫で続けていた。
彼の瞳に宿っていたのは、支配欲ではなく、とろけるような深い慈愛だった。
🔚