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いや、莫迦じゃねぇの!?
特務課新人の職場体験、最終話。
ガブside
目が覚めると、そこは見慣れない天井が広がっていた。
起き上がって辺りを見渡すと、隣の寝台にルイスが寝ている
ガブ「……医務室か」
はぁ、とため息をついてまた横になる。
アジトに入るなり鉄パイプか何かで殴られて、ボスとビルゴが助けに来た。
眼鏡曰く、太宰治が仕組んだと云う。
怪我は多分女医が治した。
ガブ「別に分身だから放置で良かったんだが」
#アリス#『そんなこと云わないの』
ガブ「……#アリス#」
目の前に鏡が浮いている。
ガブ「俺が気絶してからどうなった」
#アリス#『貴方はネモの異能で外に出て、探偵社にて治療。双黒は花袋君のハッキングによって無事に逃げれたわ』
太宰「残念ながら、別の出入り口があったらしくて狂信者達には逃げられてしまったけどね」
ガブ「……まぁ、ルイスを助けられたから十分だろ」
太宰「それもそうだね」
太宰治は近くの椅子に腰掛け、林檎を剥き始めた。
何か鶴にしてるし……暇人かよ……。
太宰「良い知らせと悪い知らせ。どっちから聞きたい?」
ガブ「……良い知らせ……」
太宰「あの女性は捕まえたから君も、ルイスも追われる必要はない。作戦通り君の姿は何処にも残っていないよ」
確かに、良い知らせだろう。
作戦通りコトが進むよう手を回していたし。
でも、問題は──。
ガブ「悪い知らせは、何だ」
太宰「……ジュール・ガブリエル・ヴェルヌの存在を探偵社、そしてマフィアが知った」
そして、と太宰は林檎も刃も置いた。
太宰「ルイスさんが起きない」
ガブ「……女が毒を盛ったと云っていた。医者には診せたのか?」
太宰「診せた。でも治せないそうだ」
まだ完全に終わったとは云えない、と。
ゆっくりするにはまだ早いか。
ガブ「一つ目はどうしようもない。でも、二つ目は対応可能だ」
太宰「……本当かい?」
ガブ「こんなとこで嘘をつく理由がないだろ」
太宰「それはそうだね。で、どうする?」
ガブ「ルイスには悪いが、少し血を貰いたい」
与謝野さーん、と太宰治は色々と手を回してくれた。
女医が血を取るところまでやってくれたし。
後することは簡単だ。
太宰「え?」
与謝野「何してるんだい!?」
カラン、と注射器が床に転がる。
俺はルイスから取った血液を、自分の腕に入れていた。
説明しようにも、視界が歪み始めた。
おぇ、と口元を抑えたら吐血していた。
与謝野「莫迦! 太宰じゃないんだから毒を取り込むんじゃないよ!」
太宰「あれ、地味に貶されてるというか……」
#アリス#『ガブ、必要なものは?』
ガブ「自分でやる。思ったより強くて、分身が持たない」
次の瞬間、視界が暗転した。
目を開くと|異能空間《ワンダーランド》にいる。
本体に戻ったか。
ガブ「……今度は俺が助ける番だ」
待ってろ、ルイス。
それから俺は『どんな薬でも失敗せずに調合することが出来る』異能で、解毒剤を作った。
自分に入れたことで『毒を判別する』異能が発動して、作ることができた。
分身を作る余裕はなかったから、#アリス#に届けてもらった。
起きてすぐに異能を使うのは中々ツラい。
少し休憩をした俺は、現実世界へと戻ってきた。
姿は、太宰治に云われて分身にした。
ガブ「……そういうことかよ」
ため息をつくのは、二回目だろうか。
ガブ「どこまで話した?」
太宰「全部☆」
イラッ、としてしまった。
此奴殺して良いかな。
駄目だよな、知ってる。
ガブ「改めて、スタンダード島の守護神。そして“七人の裏切り者”が一人、ジュール・ガブリエル・ヴェルヌだ」
敦「……何で探偵社に? やっぱり僕のことを憎んで?」
乱歩「否、違うね。ルイスの差し金ってところかな」
ガブ「大正解。流石は世界一の名探偵だ」
俺は、スタンダード島事件から今日まで。
約一ヶ月のことを全て話した。
初めは半信半疑だった社員達だったが、話を聞くにつれ信じてくれた。
ま、太宰治が説明してくれていたからな。
ガブ「ここは良いな、又三郎。俺もお前みたいに、仲間との絆を深めたかった」
福沢「ユイハ……いや、ガブと呼んだ方がいいか?」
ガブ「どっちでも良いぜ」
ではユイハ、と社長さんは言葉を続ける。
福沢「職場体験は本日で終わるが、どうする」
ガブ「どうするって?」
福沢「元の予定通り特務課新人として働くのでも良いと私は思う。だが、貴君さえ良いのなら社は歓迎する」
ガブ「いや、莫迦じゃねぇの!?」
本心だった。
俺みたいな奴を探偵社員にしようとか、馬鹿げてる。
ガブ「そもそも、社長さんが良くたって他の奴らが嫌だろ!」
ナオミ「別に構いませんわ」
谷崎「そうだね。ユイハ君は仕事も、頭の回転も早いから」
賢治「はい! 僕も良いと思います!」
国木田「こういうのは本人の意思を尊重するものだ」
乱歩「僕は何でも良いよ」
与謝野「入ってくれたら外傷だけじゃなくて、毒にも対応できるようになるねぇ」
鏡花「私は、後輩が出来たら嬉しい」
判らない。
太宰「敦君はどう思う?」
敦「……僕は」
人間じゃない俺には、此奴らのことが判らない。
敦「一緒に働けたら嬉しい、です」
何で、俺を受け入れられるんだよ。
俺のせいで探偵社は死にかけた。
太宰治を、一度殺したんだぞ。
気付けばポロポロと、涙が溢れていた。
拭っても拭っても止まることはない。
敦「ねぇ、ユイハは──ガブはどうしたい?」
ガブ「……俺は」
???「探偵社員、神宮寺ユイハか……」
太宰「あ、ルイスさん。体調は如何ですか?」
問題ない、とルイスは欠伸をした。
ルイス「良いじゃん、ガブ。神宮寺ユイハという戸籍は特務課に入るときように作ってあるし、僕のコトは気にしなくて良いから」
ガブ「……でも」
ルイス「結局、僕と#アリス#が君にしてあげれることは少ない。そして正体もバレてる」
これも一つの運命だ。
そう笑ったルイスはとても楽しそうだった。
---
--- 数日後 ---
---
探偵社の事務室。
窓から、昼間の温かい日が差し込む。
国木田「……誰か手の空いてる奴はいないか?」
固定電話を片手に、国木田さんはため息をついた。
敦「どうかされたんですか?」
国木田「ネモとビルゴが脱獄した」
鏡花「……また?」
ホント相変わらずだな、ボスとビルゴは。
つまり、依頼は二人の捕縛か。
乱歩「僕は焼きたてのたい焼き食べてるから無理」
賢治「むにゃむにゃ……もう食べれないです……」
ナオミ「お兄様、鯛焼きの餡がついてますよ」
谷崎「ちょっとナオミ!?」
与謝野「うーん……やっぱりこの写真も貼ろうかねぇ……」
敦「……僕達が行くしかないね」
鏡花「うん。ユイハも行く?」
俺は少し考えて、立ち上がる。
ボスとビルゴは何度も見ているし、敦みたいに扱いは心得ている。
まぁ、すぐ戻ってくれるだろ。
太宰「行ってらっしゃい、ユイハ君」
社長「心配不要だとは思うが、気を付けてな」
俺は扉の前で足を止めた。
ユイハ「──行ってきます!」
ガブ改めユイハです。
はい、てことで完結…なのか?
疑問系だねぇ。
あ、ルイスだよ。
だって総集編でオマケあるでしょ?
つまりまだ撮影は残ってるわけだ。
あまり遅くなると良くないからって省いた部分あるからね。
それが総集編になんじゃないかな。
知らんけど。
そういえば、太宰が切ってた林檎ってどうなったんだ?
スタッフが美味しくいただきました。
あ、なるほど。
ほら、一応次回の話をしよう。
次回は総集編。
いつも通りオマケがつくから、最後だけでも是非見てくれよな。
このシリーズは暫く完結しないらしい。
省いた部分を少しずつ書いていく、って海嘯が。
なるほど。
まぁ、気長に待っていてくれ。
どうせ亀更新なんだから。
それじゃ、また会おうな!
以上、ジュール・ガブリエル・ヴェルヌ/神宮寺ユイハと──!
──ルイス・キャロルでした!